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ネットワークの常識・非常識 ― 第6回

プロトコルと遅延の関係を調べてみよう

WAN経由だとファイル共有が遅くなるって本当?

2009年10月05日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Q. WAN経由だとファイル共有が遅くなるって本当?

A. 本当です。LANに比べて、何十倍もファイル転送に時間がかかります。

WAN経由でのファイル共有を阻害する要因

 ファイルやプリンタ共有は、ネットワーク構築の最大の目的ともいえる代表的なサービスだ。ファイルサーバに業務に必要なファイルを集めて、複数のユーザーで共有すれば、クライアントPCで個別にファイルを持つよりも断然管理が楽である。

 今までファイルサーバといえば、LAN内で構築するものと相場が決まっていた。部署やあるいは拠点単位で1台のファイルサーバを構築し、高速なEthernetの環境下で利用するというパターンである。というのも、今までは拠点間を結ぶWANの回線が細く、しかも高価だったからだ。そのため、おのずと拠点内でのみ利用するファイルサーバを構築し、どうしても必要なファイルのみ、メールやFTP等で送受信する。まさに島とそれを結ぶ橋という状態だったのだ。

 しかし、2000年以降のブロードバンド化で、安価で定額のWANサービスが次々と現われた。インターネットを経由してLAN同士を接続するインターネットVPNも普及した。こうした状況から、昨今ファイルサーバを全社で統合し、データセンター等に集中化させる需要が高まっている。各拠点に分散しているファイルサーバを統合すれば、データ保護やセキュリティの観点でも好ましいし、なにより管理が容易だ。構築に関しても、基本的にはファイルサーバをデータセンターなどに置き、IPネットワーク経由で接続できれば利用可能になるはずだ。

 だが、WAN経由でファイル共有を利用すると、実際はファイル転送がとてつもなく遅くなる。同じファイルサイズなら、おそらくLANとWANで10倍以上の開きは出るだろう。もちろん、ギガビット化しつつあるLANに比べれば帯域は細いが、従来のようにWANが格段に遅いというわけではない。ではなぜ遅くなるのだろうか?

TCPのオーバーヘッドが大きいWANの遅延

 この最大の原因は、TCPのオーバーヘッドが引き起こす、WANの遅延である。

 インターネットの代表的なプロトコルであるTCPは、信頼性のないIPを用いながら、データを確実に相手に届けられるようにするという役割を果たしている。こうした役割を果たすため、TCPはデータの到達性を確認する再送制御の機能を持つ。TCPでは3ウェイハンドシェイクという手順でコネクションを確立し、以降のデータ転送でもデータが到着した旨を伝える相手からの確認応答をもらって、次のデータを送信する。もし、相手先に届いてないと認識すると、同じデータを再送するため、確実なデータ伝送が行なえる。また、TCPには経路の混雑(ふくそう)を検知し、1度に送れるデータ送信量(ウィンドウサイズ)を調整するふくそう制御という機能もある。

図1 TCPの確認応答の仕組みと遅延の発生

 しかし、TCPは信頼性を重んじるあまり、通信効率を犠牲にする部分がある。たとえば、確認応答を待っている時間はデータが送れないので、その分の時間がそのまま遅延となる。この遅延は、端末同士が物理的に近いLANであれば問題ないのだが、遠距離のWANであれば、かなり大きな遅延となる。特に低速で通信品質の悪い国際回線では致命的といえる。

 また、ふくそう制御においては、たった1つのパケット消失でパフォーマンスが格段に落ちるという弱点が存在する。TCPのふくそう制御では、パケットが1つ落ちると経路上でふくそうが発生したとみなし、ウィンドウサイズを一気に減らしてしまう。そこから徐々に送信量を増やすスロースタートという方式を採るので、最大のウィンドウサイズに戻るまで時間がかかってしまう。これもレスポンスを悪くする原因の1つとなる。

(次ページ、「やりとりの多いCIFS」に続く)


 

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