外務省で始まった「記者クラブの開放」
9月29日、外務省は大臣会見を初めて記者クラブ以外にも開放し、「ニコニコ生放送」で中継されるなどネットメディアも取材した。これはすでに岡田外相が明らかにしていた方針だが、日本の官庁で大臣会見に記者クラブ以外の取材が許可されたのは、これが初めてだ。
鳩山首相も、野党党首のときに「首相会見をすべてのジャーナリストに開放する」と約束していたが、16日の就任会見は雑誌記者などをオブザーバーとして入れただけだった。これに対して、ネットメディアからは「約束違反だ」「マスコミとの癒着だ」といった強い批判が出て、鳩山首相も軌道修正をはかっているといわれるが、今のところ首相会見については開放の見通しは立っていない。
一般の読者は、なぜこんな簡単なことができないのかと思うだろう。経費がかかるわけでもなく、法律を改正する必要もない。記者クラブなんて、役所に家賃も払わないで居候している親睦団体にすぎない。その「許可」を得ないと記者会見ができないという奇妙な状況が、日本の政治とジャーナリズムのゆがんだ関係を象徴している。
よく第四権力と言われるように、メディアは立法・行政・司法にも劣らない事実上の権力を持っている。しかも小選挙区制によって政治が「劇場化」し、メディアの作り出す「風」の影響が強くなった現状では、政治家はメディアの機嫌をそこねるわけにはいかないのだ。今年の総選挙でもよく言われたように、民主党が圧勝した原因は政策がすぐれていたからではなく、「もう自民党は嫌だ」という気分をメディアが作り出したからだ。この点で民主党は、メディアに大きな借りをつくっている。
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