24日(現地時間)まで開かれていた、インテルの開発者向け国際会議「Intel Developer Forum San Francisco 2009」(以下IDF2009)では、「Atomプロセッサー」の後継品についての発表もあった。低価格なネットブック向けとモバイルインターネット機器(MID)向けの2ラインナップ構成で進化を続ける、今後のAtomについてまとめてみよう。
ネットブックには浸透するも、MIDは成功せず
2008年に登場したコード名「Menlow」ことAtomは、主にネットブックに利用され、低価格パソコンの流れを作ったという意味では成功したといえる。しかし、インテルがAtomで切り開きたかったMIDや携帯電話といった市場の開拓はうまくいってない。
インテルはこの理由として、Atomの性能の低さもあるが、それよりもOSの問題が大きいと考えているようだ。そのため、次世代のMID向けAtomプラットフォームであるコード名「Moorestown」では、Windows OSよりも、Linuxベースの「Moblin」へのシフトを始めている。OSの話の前に、Moorestownのおさらいをしておこう。
MoorestownとPine Trailの違いは
次世代Atomプラットフォームは、MID向けのMoorestownと、ネットブック/ネットトップ向けの「Pine Trail」の2つのプラットフォームが用意される。両方とも、メモリーコントローラーとグラフィックス機能(GPU)がCPU側に内蔵される。そして、CPUと対になるI/Oチップ(IOH)の2チップ構成になっている。そのほかに、無線LAN機能など複数の周辺チップが必要になる。
Moorestownプラットフォームは、CPUの「Lincroft」、IOHの「Langwell」で構成される。一方Pine Trailプラットフォームは、CPUの「Pineview」、IOHの「TigerPoint」で構成される。現在のネットブック/ネットトップでは3チップ構成だったのが、Pine Trail世代からは2チップ構成になる。ちなみにMoorestownプラットフォームは、クレジットカード大の面積で主要コンポーネントを収めたマザーボードが構成できる。
MID向けのMoorestownプラットフォームのLincroftとネットブック/ネットトップ向けのPineviewでは、消費電力とGPUコア、対応するメモリーが異なる。そのためMID向けとネットブック/ネットトップ向けプラットフォームは、まったく違ったハードウェアになる。この点は、現在の「Menlow」(Atom Z系プラットフォーム)とAtom N系プラットフォームの違いと同じだ。
LincroftとPineviewで内蔵GPUは異なる
Lincroftに内蔵されるGPUは、前世代のIntel US15W(Poulsbo)に搭載されていた英Imagination Technologies社の「PowerVR SGX、VXD」の発展系ではないか、と言われている。またメモリーは、低消費電力インタフェースの「LPDDR2」が使用される。LPDDR2は動作周波数こそ最大533MHzだが、動作電圧は1.35Vもしくは1.2Vと低消費電力化される。
Moorestownプラットフォームは、ハードウェアの改良により、現在のAtomよりも性能をアップしつつも、プラットフォーム全体での電力消費量を最大1/50にしている。特にスタンバイ時の電力は、まったくないと言っていいほどだ。
一方のPineviewに内蔵されるGPUは、現在のIntel 945GCチップセットの発展系といわれている。ただ、Intel G45チップセットなどに使われている「GMA4500」系ではないようだ。メモリーは通常のDDR2を使用する。PineviewもMoorestownに使われているのと同じCPUコアが使用されるため、消費電力は非常に小さくなっている。またPineviewは、ネットトップ向けにデュアルコアCPUにした製品も用意される。