成功するARX導入のお作法を聞いてみた
ARXを最大限に使いこなすノウハウってどういうもの?
2009年11月16日 12時55分更新
前回は設定画面を見ながらARXの導入について説明しつつ、実際のマイグレーションや階層化ストレージの動きを見てきた。今回は信頼性や既存環境との親和性、モデルの選び方、導入までの流れや準備など、気になることを片っ端からF5ネットワークスのエンジニアの牧田延大氏と竹森慎悟氏に聞いてみた。
導入前に知っておきたい素朴な疑問
Q.1 ユーザー環境を変えないで導入することは可能か?
A.1 既存の環境を変えないで導入できる。ファイルサーバー・NASとユーザーのあいだのゲートウェイとして設置するのではなく、既存のスイッチからバイパスさせる形で導入すればよいので、ネットワーク構成は変更しないで済む。導入時に全通信がARX経由で行なわれるようにするが、これはアクセス先の名前やアドレスをARX側に移行するだけなので、最小限の変更で導入することが可能。そうすることで、導入後もアクセスパスを変更せずに仮想環境に移行できる。
ARXの導入にまつわる疑問をQ&A形式で説明するので、しっかり理解しておこう |
また、Active Directoryでユーザー管理をしている環境であれば、セキュリティ設定やファイル属性情報は完全に引き継がれる。クライアントとサーバー間のプロキシとして動作するので、既存のセキュリティ設定やファイル属性情報は維持されるわけだ。そのため、ユーザーごとにセキュリティを設定してあっても、複数のストレージにまたがっても、問題なく利用できる。外づけのアプライアンスだからこそ実現する芸当だ。
Q.2 ARXを導入することで、既存のストレージの機能は使えなくなる?
A.2 本来のストレージの機能も使える。「たとえば、ある時点のデータをコピーするストレージのスナップショットなどはそのまま使えます。それどころか異機種のベンダーの混在環境で使えます」(竹森氏)ということなので、ネットアップやEMCなどのNASや、Windowsファイルサーバーなどを共通のグローバルネームスペースで上手に利用できる。
スナップショットなどもマルチベンダー環境で利用できる |
Q.3 ARXが故障したら、ファイルはなくなってしまう?
A.3 もちろん、そんなことはない。「他社の仮想化製品では、障害を起こすとファイル自体が消されてしまったり、位置がバラバラになってしまうこともありますが、そもそもARXにはファイルが保存されないので、保全性は高いです」(シニアプリセールスコンサルタント 竹森慎悟氏)。ARXはあくまでファイルサーバーやNASなどに格納されているファイルの物理的な位置情報を管理し、ユーザーに統合して見せかけているだけ。そのため、万が一ARXのHDDが故障しても、ファイル自体は失われない構造となっている。
Q.4 ファイルサーバーやNASにつながらなくなるととても困るので、ARXの信頼性が気になる
A.4 ARXの信頼性は非常に高い。ARXはHDDだけではなく、CPUも二重化されており、転送用のバスに関しても、データプレーンとコントロールプレーンが冗長化されている。そもそも導入は2台でのクラスター構成がふつう。メイン機が故障しても、予備機がトランザクションやデータの整合性を保ちつつ、処理を引き継ぐことができる。ネットワークの物理リンクに関しても、広帯域化と冗長性の確保を兼ねて、たとえばARX1000の場合、1Gbit/s×4本といった形で束ねるのが一般的だ。さらにARX4000/6000は電源も冗長化されており、いわゆるシングルポイントオブフェイラーのできにくい構造になっている。
部品の冗長化、クラスタ対応、信頼性の高いARXの構造 |
(次ページ、製品選びとサイジング、導入までの道のり)
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