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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第2回

Dixie Flatline×キャプテンミライ対談【後編】

プロが見る、ニコニコ動画と初音ミクの可能性

2009年09月20日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ボーカロイドに下駄を履かせてもらっている

―― 『白いクスリ』の件で分かったように、ボーカロイドは私企業が権利を持つプラットフォームなわけです。ただ、現在の状況はそのキャラクターで成り立っている部分が大きい。そこはどう考えますか?

初音ミクのキャラクターという「下駄」を、今はプラスに考えるべきという

Dixie キャラクター先行で入ってくる人たちが大勢いて、それで支持してもらえる。そういう下駄を履かせてもらった上での評価なわけですよね。そこに甘んじてしまうと、音を作る態度を見誤ってしまう恐れはあります。そうじゃない場所でもやれないとダメなんじゃないかと。

 でないと箱庭の中の出来事でしかない。ここはキャプミラさんと意見が違うかも知れないんですが。

キャプミラ いや、意味は分かります。聴いている人は「初音ミクの歌」として聴いていて、キャプテンミライやDixie Flatlineを意識していない人が大半かもしれない。ならばその下駄を壊してみたいと、多分10年前の僕だったら考えたと思うんです。でも今はむしろ下駄があることをプラスだと考えています。

白いクスリ: 初音ミクを使った酒井法子『碧いうさぎ』の替え歌。初音ミクのメーカーであるクリプトン・フューチャー・メディアの要求によりニコニコ動画から削除された。この件に関するメーカーの公式見解はこちら

―― 積極的にチャンスとして割り切ろうということですね?

キャプミラ 下駄を履かせてもらって、聴いてもらえれば勝ちだと思うんですよ。メジャーのヒットソングばかり聴いている人が、インディーズを聴くチャンスはほとんどない。それは単に知らないだけなんです。

―― プロモーション予算がないのでメディアの露出も限られていますからね。

キャプミラ でもVOCALOIDランキングのような動画を見ると、上から下まであらゆるジャンルの音楽が入っている。だからボーカロイドに興味を持って入ってきた人は、それをいっしょくたに聴くことになるわけです。そこで音楽やアーティスト自身に興味を持ってもらえたら、いつか下駄から降りても活動できるんじゃないかと。



VOCALOIDランキング: ニコニコ動画にはボーカロイド楽曲の再生数等をベースにしたランキング動画が多数ある。タグ「VOCALOIDランキング」を参照

―― ボーカロイドはメディアであると。Dixieさんは創作活動との折り合いはどう付けていますか?

Dixie 僕は自分の音楽を高いところに持っていくための習作を、毎回アップしている感じなんです。目指しているところへ行くための石を、ひとつづつ置いている最中なのかと思いますね。ただ、どうしてもキャラクターに注目が集まるので、オタク文化の中のひとつという扱いになる。それで未だに軽蔑している視線もあると思うんですよ。

ネットで音楽を発表するのは自分の音楽を高めるためというDixieさん

―― 音楽マニアを自認する人ほど、そういう傾向はありますね。

Dixie それを見返してやりたい。そのためには、もっと音楽的なクオリティを上げなきゃいけないと思うんです。

―― キャラクターありきと見られているところが、逆にモチベーションにもなるわけですね。面白いなあ。

Dixie でもメジャーでCDを出したいとか、今更そういうモチベーションはないわけです。音源を売ったりして、それを音楽を創る機材なんかに回せれば、それでいいんですけど。

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