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編集者の眼第5回

LPOで売上激減!「半年後の悪夢」はなぜ起きる?

2009年09月18日 10時00分更新

文●中野克平/Web Professional編集部

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LPO導入の効果は半年間?

 LPOの人気が続いている。検索エンジンでLPOを調べると、「LPO導入でコンバージョン率が20%UP!」「着地ページの最適化でコンバージョン率が4.6倍に!」といった広告ページに行き着くし、Webマーケティング関連の展示会に行くと、各社のLPOツールが勢揃いの状況だ。

 LPO(Landing Page Optimization:着地ページ最適化)とは、リファラーに含まれる検索語や、IPアドレスで分かるアクセス元の地域、時間帯などの特徴から、ユーザーがWebサイトを訪れるきっかけや動機を推定し、最初に見るWebページをユーザーのニーズに合わせて最適化する手法のこと。Web Professionalの読者であれば、LPOが何なのか、どんな効果があるのかは承知のことだろう。では、「LPOを導入したネットショップでは、導入半年後に売上が激減する現象が相次いでいる」と聞いたらどうだろうか。

 先日、匿名希望のWebコンサルタント氏と書籍の打ち合わせをしていたときのこと。「LPOを導入すると、確かに導入から半年くらいは宣伝どおりの効果が出る。ところがその後、売上がガクンと落ちることがある。どうしてか分かりますか?」という話になった。

 LPOとは、要は「おもてなし」。現実世界でいえば、猛暑の夕刻、居酒屋に大汗をかいた客が入ってきたとき、「キンキンに冷えた生ビールいかがっすか?」がLPOだ。お客様が何を望んでいるか、さまざまなパラメーターから推定し、「ご提案」する。気の利くホールスタッフがやっていることを、システムとして実現するわけだ。

 LPOの効果がなくなるのは、どういうときだろうか。「我が社のエース」と社長に言われるスタッフの真似をして、夏の間「生ビールいかがっすか?」と他のスタッフが言っているうちは、「この店のスタッフはみんな気が利く」ということになる。しかし、シンシンと雪が降る日の晩に「キンキンに冷えた生ビールいかがっすか?」では馬鹿の一つ覚え。「マニュアルどおりの対応しかできないなんて、ひどい店だ」という評判にもなりかねない。LPOで売上が激減する「半年後の悪夢」は、お客様が着地ページに慣れてしまったときに起きるのだ。

 商品にもよるが、ユーザーがネットショップを訪れるときのキーワードや訪問時間は、毎回同じことがある。たとえば、数か月に引っ越す新居の家具を探しているユーザーは、毎週末のほぼ同じ時間帯に、ほぼ同じキーワードでWeb検索を利用し、ほぼ同じWebサイトに到達するだろう。LPOを導入していたとしても、これでは毎回同じ着地ページが表示され、「更新頻度の低いWebサイト=商売する気がないサイト」と思われる。Webコンサルタント氏は、LPO導入後半年で売上が激減するのは、ユーザーの「飽き」が原因だという。

 では、ユーザーの飽きはどうすれば防げるのだろうか? トップページの賑わいは商品を入れ替えれば演出できるが、あるキーワードに対して表示する商品は、簡単には入れ替えられない。画像やキャッチコピーを頻繁に作り替えるのも、商品点数が多いと大変な手間になる。


ユーザーに飽きられない「おもてなし」

 「手間をかけずに、ユーザーに飽きられないページを作るにはどうすればいいか?」を考えていたときに出会ったのがGMOソリューションパートナーのEFOサービス「コンバージョンVF」に8月26日に追加された「かんたん方言設定機能」だ。

 EFO(Entry Form Optimization:入力フォーム最適化)とは、発送先やアンケートの入力をサポートして、途中途中での離脱を防ぐ仕組みのこと。LPOが店の入り口でユーザーをもてなすのに対し、EFOは店の出口でユーザーをもてなす。正直言って「エントリーフォームのナビゲートに地域性のある方言を使用することで、WEBサイト訪問者への安心感愛着面白みを感じていただくことができます」という説明には、大きな脱力感を味わったが、考えてみるといろいろ応用できる発想だ。

「かんたん方言設定機能」

コンバージョンVFに追加された「かんたん方言設定機能」


 たとえば、クッキーを使えば初めての訪問なのかリピーターなのか分かるから、着地ページのメッセージは簡単に変えられる。「ようこそ、いらっしゃいませ」と「毎度ありがとうございます」ではいかにも機械的で面白みがないが、「よぅおこしやす~」「まいど、おぉきに」であれば、画面の向う側に人がいることを感じられるのではないだろうか。

グーグル

Googleのホリデーロゴ

 また、ツールチップのように入力欄に小さなメッセージ枠が表示されるコンバージョンVFの「ガイド機能」の発想は、入力フォーム以外にも応用できるだろう。季節や時間帯によって、イラストを切り替えれば、表示される商品は同じでもリピーターはお店の「おもてなし」を感じ取るはずだ。

 「えー、そんなことで」と思うかも知れないが、Googleのロゴマークが記念日などに合わせて変わるだけで、多くの人はWebブラウザー越しにグーグルという企業の姿勢を感じ取っている。お客様とのコミュニケーションは商売の基本なのだ。

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