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80年代とネットが生んだ「護法少女ソワカちゃん」

2009年09月18日 18時00分更新

文● ノトフ

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「偽アニソン」みたいなものをやってみよう

―― もともと初音ミクに興味を持たれたのはいつごろだったんですか?

kihirohito ネットで初音ミクが流行っているのを知る前に、DTMをやっていたことがあったんですよ。「偽ミュージカル」みたいな芝居の脚本と演出をやっていて、そこで使う楽曲をDTMで作っていたんです。なんというか、ミュージカルを駄目にした感じの芝居で。会場は(客数が)100人もいかない小さなところだったんですけど。

kihirohitoさん。取材は新宿の喫茶店で行なった


―― そこからすぐにソワカちゃんを作られたんですか?

kihirohito 芝居をやったのは10年以上前なので、すぐではないんですが……まずは(初音ミクが)面白そうだなと思い、やってみようということになったんです。で、まずは昔作った曲に歌を入れてみたんですけど、調教※1のテクニックもないので、機械的な歌になってしまって。どうも上手くいかないと。

 それで「(声色を聞いて)アニメソングみたいなものなら上手くいくのかな」と思ったんです。ただ、私はカバーとかコピーってやらないんですね。なぜならコピー出来るだけの技術がないから。全部自分の解釈にしちゃうんです。それで、アニソンはアニソンだけど「偽アニソン」みたいなものをやってみよう、みたいな感じですね。

※1調教: 初音ミクなどのDTMソフトの発声を、人間の自然な音声に近付けることをあらわすネットジャーゴン


―― どうしてそこから「仏教」という発想に行ったんですか?

kihirohito 初めに思いついたのが「魔法少女」だったので、密教魔術とか使ったらちょっと格好いいかなって思っただけです。80年代にオカルト系の神秘学とかそっちの方をちょっとかじってたんですよ。勉強というか関心があって。当時はみんな関心があったんじゃないかな。

 オカルトといっても愛読していた雑誌は「ムー」や「トワイライトゾーン」ではなく、「遊」なんかでした。あと当時読んでいた雑誌は「宝島」や「ビックリハウス」などです。

オカルトというかサブカル的な独特の世界観を持つ「ソワカちゃん」ワールド。ファン層は幅広く、20代の女性もいれば同年代の男性もいるのだとか


―― なるほど(笑)。それでも仏教用語にかなり詳しいですよね。あれは毎回調べられているんですか?

kihirohito 最初のころは調べなかったんですよ。でも、ソワカちゃんのまとめサイトが出来てから、そこで間違いが指摘されてはじめたんですよ。これはちゃんと調べないとまずいなと思いまして。その頃から調べて裏をとるようにしています。

 たとえば、一般的に真言宗は木魚を使わないですけど、ソワカちゃんの中には木魚を使うシーンがあって。そんな場合、真言宗の中でも木魚を使う宗派はいるんだっていうのは裏を取ったりしましたね。そんな誰も喜ばないことをしてます(笑)。

ソワカちゃんのまとめWiki「ソワカちゃん疏鈔(しょしょう)」。疏鈔とは経典の注釈書の意。ニコニコ動画に投稿された膨大な数のシリーズ動画を順番ごとにまとめている


―― ソワカちゃんは「オープニング」「エンディング」の次が「第7話」で、その次が「第3話」とバラバラになっていますが、これはなぜなんですか?

kihirohito そもそも、最初はソワカちゃんをシリーズ化しようなんて気持ちはさらさらなかったんですよ。たまにふざけた曲を作ってニコニコ動画にアップしてみようかな、くらいの気持ちだったんです。でも、「オープニング」をアップしたら「続きを!」っていう声がニコニコ動画のコメントにあったんです。

 そこでエンディングをアップしたらさらに「続き続き!」みたいな声があったので、じゃあ次は劇場版の主題歌みたいにすればいいかな、と思って作っていたんです。それが出来上がった後にちょっと考えて、「これは第何話とかにしちゃえばいいじゃん」って思ったんですね。でも、「いきなり1話から(設定が)荒野っていうのはありえない、荒野にいるなら7話くらいからじゃないか」ということになったんです。

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