このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

塩田紳二の3年戦える「ビジネスPC」選び 第2回

ソニー「VAIO type Z」に見る「ビジネスPC」の真髄

2009年09月03日 06時00分更新

文● 塩田紳二

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

モバイルノートの宿命――放熱の課題をどうクリアするか?

―――type Zでは、放熱などはどうなのでしょうか?

 今回のセットでは、ファンで排熱することをメインとして、一部を筐体で放熱させています。ただ、我々の品質基準として、筐体が一定以上の温度になることは許されないので、基本的にはファンによる放熱が中心で、筐体側は二次的なものになっています。
 また、ファンの音についても、音量(音圧)だけでなく音質にも注意を払っています。設計段階でファンの音について分析を行ない、人間にとって耳障りになる周波数帯の音を出さないような構造を採用しているのです。

type Zの底面にある吸気口

type Zの底面にある吸気口

 これは簡単なことではありません。まず、どの部分からそういう音が出ているのかを突き止め、その上でどうしたらその周波数の音がでなくなるのかを考えなければなりません。これは、計算すればできるというものでないので、さまざまなもの(プロトタイプ)を作って、実際に音を測定して構造を決めていくのです。もちろん、構造には部品の配置やデザインといった要素もあり、単に音だけで決めるわけにもいきません。音の出るところに何かを貼り付けると音は変わるのですが、空気を取り込む開口部の形を変えても(音は)変わってくるのです。なので、実物を作っていろいろとやってみないとわからないことが多いのです。それで我々は、音圧や音の出ている場所を「視覚化」する装置を利用して、実験を行ないました。
 「快適に使える」ということを考えると、先ほどの話に出たようにキーボードの剛性感なども必要になります。この点を考慮して用意したのがSSD RAIDのストレージです。これも動作のレスポンスを考えてのオプションなのです。「資料がサッ開く」、という心地よさを実現するためのもので、レスポンスがよければ快適に仕事できるよね、といった欲求を満たすための機能で、単にピーク性能(ベンチマークテストの結果)が上がるというよりは、そういう点を考えて採用したのです。


コストの理由は見えにくいが
高いノートPCには相応の価値がある

 「堅牢性」や使用時の「心地よさ」のようなものはカタログスペックには出ないため、実際に使ってみないとわかりにくいのが実体だ。そして、これらを実現するには、それなりのコストもかかってしまう。逆に、カタログ上では同じようなスペックのPCをコスト重視で作ることもできるわけで、店頭や価格比較サイトなどで見比べると、スペックが似ているのに価格がずいぶん違うといったことが起こりうるわけだ。

 しかし、きちんと作られた「ビジネスPC」であれば、今回のtype Zのように細かい配慮がなされており、価格に見合う使用感を得ることができるわけだ。これは実機を使ってみないとわからないし、カタログなどから読み取ることも難しい。市場にはいろいろな価格、スペックの製品がある。また最近では、非常に安価でありながら、それなりの性能を持つ製品も出てきている。しかし、ビジネスPCという点で見ると、その選択は以前よりも難しくなっているといえるかもしれない。


筆者紹介:塩田紳二(Shioda Shinji)

フリーランスのテクニカルライター。コンピュータ雑誌編集者、家電メーカー勤務を経て、現職に。ハードウェア、ソフトウェアなどについて雑誌、Webサイトなどで執筆。戸籍上の出生地は福岡県だが、生後すぐに都内に引っ越したため、同県の記憶はない。出身地を聞かれ正直に答えて福岡の話をされても困るし、かといって東京とウソをつくのも後ろ めたいし、いちいち説明するのも煩わしい。それから「しおた」ではなくて「しおだ」です。

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ