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社名NG、広告もナシ:常識破りのWebキャンペーン (2/2)

2009年09月02日 08時00分更新

文●ビルコム株式会社

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相模ゴムがWebを選んだワケ

 そもそも相模ゴム工業というコンドームメーカーが、なぜこのようなプロジェクトを実施するに至ったのか。LOVE DISTANCEの責任者でもある相模ゴム工業の樋沢洋さんの話から、コンドーム業界特有の課題が明らかになった。

 コンドームはその特質上、店頭で消費者が購入を判断するまでの時間がわずか数十秒間と言われている。購入の判断材料としているのは商品名や店頭のPOPなどであり、商品自体の認知度を高めることが、購買に大きな影響を及ぼすと考えられている。

 一方でコンドームは、日用品でありながらも、歯磨きやバンソウコウなどとは違って、愛の行為に使用される特殊な商品であり、広告上の規制があった。つまり、マス広告を活用したプロモーション展開に不向きであり、PRやクチコミなどの手法を活用したWeb上での認知拡大が最適だった。それが、LOVE DISTANCEというWebキャンペーンを実施した大きな理由である。

 このWebキャンペーンの認知拡大の役割を担ったのが、WebPRだった。LOVE DISTANCEのプロモーション展開にあたり、相模ゴム工業は、マス広告や屋外広告などはもちろん、バナー広告などのインターネット広告も一切使用していない。PRという自然発生型にクチコミを誘発するコミュニケーション施策により、LOVE DISTANCEの認知拡大を実現したのだ。


WebPRの成功を阻む3つの壁

 LOVE DISTANCEのWebPRを展開にするにあたり、ビルコムはプレスリリースの配信やメディア向けの企画提案などの手法を通じて、Webニュースサイトへの掲載を計画した。ニュースサイトに掲載された記事が、mixiやブログなどに波及するシナリオを狙ったのだ。しかし、実際にLOVE DISTANCEのWebPRを実施する段階では、次の3つの課題が存在した。

1.ニュース性が不足していた

 キャンペーンのストーリーは「遠距離恋愛中のカップルがマラソンをする」というものだったが、「遠距離恋愛」「マラソン」はいずれもありふれたキーワードであり、ニュース性が不足していた。そのため、そのまま情報を発信しても、メディアには取り上げてもらえない可能性があった。

2.ローンチ後も注目を維持しなくてはならない

 12月1日のキャンペーンスタートから、12月24日までの間は商品名が明かされることはないため、商品の認知度向上という目的を果たすためには、ローンチ後のゴールのタイミングまでサイトへの注目を維持しなくてはならない。しかし、Webキャンペーンでは通常、ローンチ直後に注目が偏る傾向があり、話題を継続させるための仕掛けが必要だった。

3.広告主の「社名」を露出してはいけない

 「ブラインド・ブランデッド・エンターテインメント」と位置づけられたこのキャンペーンでは、カップルが出会うゴールの瞬間まで、広告主の「社名」を明かさない。それがメディアへのアプローチに際しては、障害になる可能性があった。公共性を重んじるメディアにとって、正体の分からない企業の活動をニュースとして取り上げることには大きなリスクがある。この課題を解決する必要があった。


 次回は、これら3つの課題をどのような戦略・戦術でクリアしたのかを紹介しよう。

著者:ビルコム株式会社

ビルコム

2003年設立のPR会社。戦略構築から企画実行までを手がけるPR会社として急成長。2008年に提供を開始したWebPRでは相模ゴム工業のLOVEDISTANCEをはじめ、話題のWebキャンペーンのPRを手がける。URL=http://www.bil.jp/

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