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仕入資金がない――主婦の店を救ったドロップシッピング (1/3)

2009年08月05日 15時43分更新

文●三浦たまみ

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なぜ、あのネットショップは今日も繁盛しているのか? なぜ、自分のショップでは商品が売れないのか?
他にはない強い商品開発力、他店を引き離す圧倒的な集客手法、一度捕まえたお客を逃がさない囲い込み術……と、成功したネットショップには現場で蓄積されたノウハウがある。本連載では、全国の優れたネットショップの事例からそのノウハウを公開。あなたのショップの“勝ちパターン”を見つけるヒントにしよう。⇒連載インデックス

■今回の成功ネットショップ:
益子焼販売『和食器販売~樂raku~』


2004年、益子焼の食器販売のネットショップを開店。当初は栃木県芳賀郡益子町で開催される陶器市で商品を仕入れたり、益子焼を制作する作家と直接提携して販売していたが、2005年10月より益子焼大手専門店「やまに大塚」1社と提携。ドロップシッピング形態のネットショップに切り替える。月商非公開。


無在庫・直送のドロップシッピングで1人でも対応可能に

 「月商100万円を超えたあたりから、商品を梱包するだけで半日以上も時間を費やすことがありました。母の日などのイベントシーズンは、発送業務や顧客対応が精一杯でサイト更新なんて全然できませんでしたね」と話すのは、益子焼の食器販売の『和食器販売~樂 raku~』の関口むつみさん。関口さんに限らず、1人ですべての業務をこなすオーナーにとって、売上が伸びたときに最初に立ち塞がる壁が発送業務などの人手を必要とする作業です。

 この時点でスタッフを雇う店主もいますが、新たに事務所を構えたり、人材を確保するほどの余裕はないショップが多いのも現状です。さらに、売上げが上がるにつれ発送業務で手一杯になり、在庫調整に支障が出るケースも多く見受けられます。

「私の場合、キャッシュフローの認識が浅いばかりに、商品は売り切れが続出したのに仕入れるお金がない状態が3ケ月近く続き、ネットショップ運営そのものが窮地に陥りました」

 ここで初めて関口さんの頭をよぎったのが、「ドロップシッピング」という販売スタイルでした。


発想作業にも慣れている企業と直接契約へ

 通常のネットショップの販売スタイルとドロップシッピングを比べると、以下のような違いがあります。


 要するにドロップシッピングは、メーカーや卸業者などが、商品を直送してくれる販売形態のこと。ネットショップにとっては、在庫を抱えずに商品を送ってもらえるメリットがあります。「もしもドロップシッピング」「リアルドロップシッピング」など、ドロップシッピングを提供する専門のネットサービス業者を介する方法が一般的です。

 関口さんの場合、「やまに大塚」という益子焼の販売店に営業に出向き、直接契約を結びました。開業当初は、益子焼の作家数名それぞれと直接契約したり、陶器市で仕入れた商品を販売していた関口さんですが、なぜ、「やまに大塚」1社と提携しようと思ったのでしょうか。

やまに大塚

「やまに大塚」の店舗

「益子市に直営店があり発送業務などに慣れている会社だったので、ドロップシッピングの形態にしても安心してお任せできると思いました。また、さまざまな作家の陶器を多数揃えているので、商品ラインアップのバリエーションが充実することも決め手になりました。それまで契約していた作家さんには、事情を説明して取引を中止させていただきました」

 関口さんはこれまでに掲載された雑誌をはじめ、サイトのコピーなどのショップの資料、名刺などを持参して、「やまに大塚」へ直談判しに向かいます。

「私のネットショップの存在を知っている社員がいたため、親身に話を聞いてもらえました。ドロップシッピングという形態にも前向きだったので契約しました」

 メリットがあったのは、関口さんだけではありません。「やまに大塚」にとっても、ネット販売のノウハウに興味を持っていた矢先に、ネットでの販売実績のある関口さんが現れたのです。ドロップシッピングは、両者にとって好都合だったというわけです。

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