このページの本文へ

火力演習近し!作って食べたいミリごはん

2009年07月28日 23時25分更新

文● 吉田重戦車

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 出版不況のさなか、世間では『作ってあげたい彼ごはん』(宝島社)シリーズが累計で130万部突破だという。一方、広大な富士のふもとで大勢の隊員や車両が1週間にわたって演習を披露する8月末の富士総合火力演習まで1か月。早朝から深夜まで長時間にわたって屋外で行動する。そんな彼らの体力維持、栄養補給を支えるのが「ミリメシ」である。


ミリメシって何?

 ミリメシとは、ミリタリーの飯、つまり兵士が食べるゴハンのことだ。米軍だとMRE(Meal, Ready-to-Eat)や「レーション」などと呼ばれており、通常は、1食分、あるいは1日分がパッケージングされている。もちろん、米軍も自衛隊も普段からミリメシばかり食べているわけではない。基地や駐屯地、自衛艦艦内にいるときは、食堂で海軍カレーなどの温かいご飯を食べていたりする。

 しかし、数日間以上にも渡る野外での長期作戦行動などの場合は、全行程で弁当持参という訳にもいかず、どのような状況でも持ち運びやすく簡便かつ衛生的に、しかも温かく飽きの来ない多様性のある食事を取ることのできるシステムが必要となる。長期作戦行動中で娯楽と言えば食べることだけ、そんな状況でも兵士を満足させるような食事を提供するのが、ミリメシというシステムなのだ。


ミリメシが旨い軍は弱い?

 ちなみに以前に世界各国のミリメシを食べる機会があったが、旨い国、マズイ国がはっきり分かれていて面白かった。イギリスやカナダのミリメシには、びっくりするほどマズイものがある。逆にフランスや米軍のミリメシはかなり旨い。昔は「メシのマズイ軍隊は強い、メシの旨い軍隊は弱い」と言うこともあった。しかし最近は米軍のミリメシが旨いなど、一概にそうは言えないなあというのが正直なところだ。

まずいミリメシ

1位:イギリス軍水溶きオートミール 2位:イギリス軍チャーメン 3位:カナダ軍プリン
1位:イギリス軍水溶きオートミール。まったく味がしないという脅威の食べ物。冷めたおかゆ風の味にげんなり。この味、星一徹なら間違いなくちゃぶ台をひっくり返すだろう2位:イギリス軍チャーメン。ラーメンスープにウスターソースを適当に入れ、そこに水で戻したラーメンを入れたような味と食感。イギリス人はこんなものを出されても文句を言わないのだろうか3位:カナダ軍プリン。見た目があまりにも酷すぎるが、味はキャンディーのチェルシー風

うまいミリメシ

1位:フランス軍田舎風シチュー缶 2位:フランス軍マグロとジャガイモの煮込み缶 3位:アメリカ軍ビーフシチュー(寒冷地仕様)
1位:フランス軍田舎風シチュー缶。美食大国フランスらしいイケてるミリメシ。野菜たっぷりでクラッカーに良く合う。冷めていても美味しいが暖めればなお旨い2位:フランス軍マグロとジャガイモの煮込み缶。マグロとジャガイモをほどよい酸味のトマトスープで煮込んだもの。ワインに合いそうな上級の味3位:アメリカ軍ビーフシチュー(寒冷地仕様)。じっくりと野菜に火を通した家庭の味風シチュー。民生用シチュー(ハウス食品のシチューのような)と遜色のない味だった。寒冷地仕様ということで、パッケージは冬期迷彩仕様

 これら海外のミリメシは通販などで入手できる。また、ミリメシについて書かれた本も何冊か刊行されている。「世界のミリメシを実食する―兵士の給食・レーション」では、各国のミリメシについてオールカラーで詳しく解説している。「実食」と謳っているだけあって、ちゃんと開封し、味見している。ミリメシについて知りたい人、実際に購入したい人の入門書としては最適だろう。

■Amazon.co.jpで「世界のミリメシを実食する―兵士の給食・レーション」を見る

 おもしろいのは第二次世界大戦以前のミリメシを取り上げていること。南北戦争のミリメシはとてもまずそう。日本陸軍のミリメシもレシピが再現されていて興味深い。


自衛隊でも採用しているミリメシのお味は?

 ちなみに自衛隊のミリメシはどんな感じなのだろうか。かつては入手が難しく、自衛隊取材の時にご馳走になるか、賞味期限切れで廃棄されたものを隊員が持ち帰ったもののお裾分けくらいでしか食べることができなかった。ところが最近は、自衛隊に納品しているミリメシと同等品が一般にも販売されるようになった。一般に手に入り安いのは童友社の製品だ。

■Amazon.co.jpでミリメシを見る

 今回は「サバイバル弁当・すき焼きハンバーグ」を食べてみた。緑色の外装パッケージを開けると、中にはライスパックとすき焼きハンバーグのレトルト、そして割り箸が入っている。開封して電子レンジで加熱するか、熱湯で20分ほどレトルトごとボイルする簡単調理だ。

 自衛隊員が野外演習でミリメシを食べる際は、電子レンジなど利用できないので大鍋のお湯でボイルするのが一般的だ。さっそく自宅の大鍋にお湯を沸かし、そこにレトルトを放り込んでみた。グラグラと煮立つお湯に放り込み、心を静めて待つこと20分。なお、今回はお湯でボイルしたので20分もかかっているが、電子レンジで加熱すれば2分だ。

ボイル中 盛りつけてみた
ボイル中盛りつけてみた

 時間だ。さっそく鍋から取り出す。冷房の効いた自室の中で食べるのだが、ちょっとだけでも野戦演習の雰囲気を味わおうと山道具のコッヘル(金属製の調理器具兼用食器)に盛りつけた。さっそくスプーンでひとくち目を口に入れる。

「う、旨い!」

 イラクPKOでも自衛隊のミリメシが人気だ、と宮嶋茂樹が著書で書いていたが、これなら信じられる。歯ごたえも普通のレトルトのすき焼きやハンバーグと変わらない。肉が煮込みすぎて味が抜けているということもなく、肉汁もジューシーで塩加減もちょうど良い。過去に自衛隊のミリメシや海外の軍隊のミリメシを食べたが遜色ない。というか日本食に慣れた体には、フランス軍のミリメシよりこちらの方が旨く感じられる。さきほどの旨いミリメシのランキング1位に入れてもOKだ。

 ちなみに製造元の武蔵富装の担当者に確認したが、カロリーは800kcalくらいとのこと。成人男子の一食分としてはほどよいカロリーだ。一緒にボイルしたご飯もちゃんと粒が立っていて普通のご飯の味がする。「サバイバル弁当・すき焼きハンバーグ」にサラダを添えれば、普通の1食分の食事としても通用する。熱々の味噌汁があればなおよい。

 今回、自衛隊が実際にミリメシとして使用している食品の民生版製品を食べてみた。実は購入してから1年半くらい経過していたが、何の問題もなかった。ミリメシということで何となく遠慮していた人も、防災時の非常用食品として家族人数×3日分くらい備蓄しておくのはどうだろうか。例えば東京都では、災害発生後3日間は公的な救援が間に合わない場合も想定し、非常用に3日分の各世帯人数分で備蓄することを推奨している。9月1日の防災の日も近い。常備しておく非常食にミリメシを加えておけば、何かとあった際に心強い。

■Amazon.co.jpで「作ってあげたい彼ごはん」を見る

カテゴリートップへ

特設サイト

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ピックアップ