ガラパゴス化したBS放送
そもそもBS放送などというものを続けているのは日本だけだ。同じ衛星でCS放送なら300チャンネルぐらい取れるのに、BSでは(技術が進んで少し増えたが)約30チャンネルしか取れない。技術的にはほとんど同じなのだが、放送電波の出力が違うからだ。もともとCSはケーブルテレビの中継局に配信するもので出力が小さかったが、受信技術の発達で家庭で直接受信できるようになった。
このため世界の衛星放送は、日本以外はすべてCSである。BSは技術的にはCSとほとんど同じなのだが、中継器のコストがCSの10倍かかるため、採算がとれなくなってしまう。放送規格も周波数も世界標準のCSと違うため、ガラパゴス化してしまった。日本もどこかでCSに切り替えるべきだったのだが、NHKのBSの視聴者が1000万人を超えたため、切り替えるタイミングを逃してしまった。
世界的には衛星ビジネスは成長産業である。コンテンツ産業がグローバル化する中で、ディズニーのように映像コンテンツを全世界の視聴者に配信するビジネスには、インターネットよりもはるかにコストが安く効率的だ。欧州ではほとんどの家庭がCSによって数百チャンネルを受信し、国境を超えて多様な番組が飛び交っている。CSによるIP放送も始まり、有線・無線のインターネットが融合し始めている。
ところが日本は、BSというガラパゴス技術にこだわったため、こうした世界の流れに取り残され、BSもCSもほとんどの局が赤字だ。せめてディズニーのような魅力的なチャンネルが参入すれば、衛星ビジネスの展望も開けたかもしれないが、そのチャンスも総務省がつぶしてしまった。衛星ビジネスは、競争を恐れる既存業者を役所が守る結果、業界全体が沈没する日本経済の縮図である。
筆者紹介──池田信夫
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1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。
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