キヤノンは13日、オフィス向けカラー複合機の新ブランド「imageRUNNER ADVANCE」を発表した。大量出力が求められるプロダクションニーズ対応の「imageRUNNER C9000 PRO」(380万円~)、オフィスのセンターマシンとして最適な「同C7000」(300万円~)、「同C5000」(170万円~)の合計3シリーズを9月上旬から順次発売していく。
トップエンドのC9075 PROはカラー毎分70枚、モノクロ毎分75枚(A4ヨコ)の出力が可能。1TBの大容量HDDを標準搭載するほか、オプションの追加で、最大10460枚の大容量給紙にも対応する。以下、ファクスの有無や印刷速度、給紙可能枚数の違いなどで12モデルが用意されている。
「継続的な進化」への思いを名前に
「次のMFPとはどういうものかを考え、すべてを作り変えた」と、キヤノン常務取締役 映像事務機事業本部長の中岡正喜氏は話す。
新シリーズでは、コントローラーやソフトウェア、トナーなどが内部はもちろんのこと、ブランドやロゴを含めた外観も大きく刷新された。ブランド名を選定する際には、ADVANCEDにするかADVANCEにするかで議論があったそうだが、「継続的に進化する」という意図をこめてADVANCEを選んだという。
「技術、機能、ワークフロー、ビジネスのすべてをAdvance化させたい」(中岡氏)
新開発の「アドバンスドiRコントローラー」は、二基のCPUにイメージ処理と高速データ処理を担当する2つのコントローラーを搭載。並列処理により、プリント速度やアプリケーション処理速度の向上を図った。また、トナーに関してもimageEXPRESSシリーズのトナー技術を応用した「pQトナー」を採用。高い色再現性を持ち、くっきりとした文字表現が可能だ。
ネットワーク連携機能も魅力のひとつだ。このために従来から同社が提供している「MEAP」(Multifunctuinal Embedded Application Platform)に加え、パソコンを介さずファイルサーバーやMicrosoft Office SharePoint Serverなどにアクセスできる「MEAP Connector」ウェブアプリケーションから本体の操作や機能制御が行える「MEAP Web」といったプラットフォームを順次導入していく。
また、imageRUNNER自体がファイルサーバーとして機能する。HDD内の「アドバンスドボックス」にはスキャナーで取り込んだ紙文書や、PCなどで作成した文書を保存可能。別の場所にある複合機同士を接続し、離れた場所にあるファイルを手近な複合機でPCを介さず印刷する、といった使い方も可能だ。
また、ファクス機能を持たない子機からでも、親機の機能を利用してファクスを送受信したりと様々な連携が可能。こういった一連の操作を、サーバーを別途立てることなく利用できる点も特徴である。
ユーザー視点で操作感も改善
本体操作にはカラータッチパネルを利用する。この際、メニューを必要な機能だけに絞り込むなどカスタマイズ性も重視している。また、PDFファイルの作成(Adobe LiveCycle Rights Management ESによるアクセス権限管理にも対応)やスキャンしたデータの検索共有機能、携帯電話のメールやUSBメモリー内のデータのダイレクトプリントなども各種ソフトウェア/オプションの追加で対応する。
セキュリティー面では、本体にTPMを標準搭載。別売の「ジョブロック拡張キット」を追加することで、コピーや印刷時に肉眼では分かりにくいドットパターンを埋め込める。再度コピーしようとした際にジョブ実行を制限し、情報漏洩を防止/抑止できる仕組みだ。
中小企業向けのSaaS「HOME」の提供も
また、新製品の発表に合わせて、キヤノンMJから月額課金で利用できる、中小企業向けのSaaS型サービス「HOME」も発表された。社員のスケジュール管理や社内掲示板、会議室予約といったサービスを提供する社内情報共有のためのサービスだが、2010年4月以降、imageRUNNER ADVANCEのタッチパネルからポータルサイトを閲覧したり、スキャンした紙文書を直接ポータルサイトにアップロードすることが可能になる。HOMEは月額1万2000円で、12月からサービスを開始する予定だ(別途6万円のStarting PACKが必要)。
本日、東京品川のキヤノンMJで開催された新製品発表会には、キヤノン代表取締役社長の内田恒二氏も出席。景気が厳しく、設備投資が抑えられる中、複合機事業は辛い状況にあるとした。その上で「じっと我慢しながら、先をにらんだ展開を考えなければならない」とした。
「景気が回復しなければ、(複合機事業は)厳しい面があり、これがどこまで続くかを危惧している。しかし、キヤノンとして一番重要な事業であり、新機種を投入しながら新しい使い方、ユーザーのニーズにこたえられる機能を提供するために、全社をあげた開発体制を作った」(内田氏)
厳しい時期だからこそ、サービスの質で勝負する。そんな意気込みを表現した形だ。同社ではグローバル市場で約1万2000台。そのうち3割を国内で売る考え。来年登場する低価格モデルでラインアップを強化し、国内では20%を超すシェアの確保を目指すとのこと。