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入門Ethernet 第5回

いよいよ登場した10GbEの銅線規格を理解する

銅線の限界に挑む10GBASE-Tの仕組みとは?

2009年07月09日 09時00分更新

文● 遠藤哲

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より対線で10Gbpsを

 10GBASE-Tでは、1000BASE-Tと同じ考え方で4つのより対線ペアを利用する。1ペアあたりの伝送速度は2500Mbps(2.5Gbps)で、合計10Gbpsを実現する仕組みだ。

 より対線ペアに流れる電流の周波数は400MHzに達する。この1000BASE-Tの6倍以上の周波数に耐えられるケーブルは、カテゴリ6e/6a/7となる。ただし、10GBASE-Tのケーブル選択では、「エイリアンクロストーク」の影響を抑止することを考えなければならない。エイリアンクロストークとは、ケーブル内のペア間で発生する漏話ではなく、並べて敷設される別のケーブルから混入する外来の漏話である。

図4 ケーブルのエイリアンクロストーク対策

 エイリアンクロストークを防止するためには、より線ペアを金属箔などのシールドで保護しなければならない(図4)。この基準に当てはめると、カテゴリ6eはシールドされておらず好ましくない(図4の(1))。カテゴリ6aはより対線4ペア全体をシールドで保護しているのでエイリアンクロストークを防止できる(図4の(2))。さらにカテゴリ7ではより対線ペアごとに金属箔でシールドし、ケーブル全体もメッシュでシールドする二重シールド構造になっている(図4の(3)、写真1)。10GBASE-Tに、もっとも安心して利用できるケーブルである。

写真1 サンワサプライのカテゴリ7対応のケーブル「KB-T7シリーズ」。シールドコネクタ部に金メッキを採用している。実売価格は50mで約2万5000円

10GBASE-Tの符号化方式

 1000BASE-Tにおいても特殊な符号化方式が考えられていたが、その10倍の伝送速度を実現するために、新たな符号化方式が採用されている。まず、図5と図6を見てほしい。符号化の処理単位は64ビットで、32ビットの固まりとなっているデータを2つ受けてから符号化処理が始まる。受信した64ビットは、データか制御情報かを識別する「Data/Ctrl Header」という1ビットを付与し、65ビットで1ブロックとする(図5の(1))。続いて、65ビットを50ブロック集め、CRC8のチェックコード(8ビット)と「Auxiliary channel bit(補助チャネルビット)」を1ビット追加した3259ビットにされる(図5の(2))。

図5 10GBASE-Tの64B/65B

 次に「LDPC(Low Density Parity Check)」を使って、データにエラー訂正を施す(図6の(1))。10Gbpsという超高速通信では、ケーブルを流れる電気信号は外部からのノイズの影響を大きく受ける。そのため、電気信号にエラーが生じた場合に、それを検出し訂正する「誤り訂正機能」にも高い性能が求められる。この要求をクリアする符号化技術として、10GBASE-Tに採用された規格がLDPCなのである。最後に図6の(2)のような処理を行ない、4本のより対線ペアに16段階の電圧として流す。

図6 10GBASE-TのLDPC処理

 Ethernetでは超高速伝送をより対線を使って実現してきたが、さすがにUTPでは対応できなくなってきている。今後10Gbpsを超える伝送速度をより対線で実現するとなれば、「STP(Shielded Twist Pare)」が標準となる。ケーブルの品質が伝送速度に直接影響するだけに、ケーブルを自作した場合は、専用の測定器で確認しないとトラブルの原因となる可能性が高くなる。

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