NHK解説委員で「デジタルスタジアム」(デジスタ)を主催する中谷日出委員は今回の計画があまりにも急すぎるという点を指摘。委員会では現在、企画をわずか3ヵ月後の10月にも決定し、そこから建設業者の公募・着工に移る予定としている。
自身がデジスタでの展示準備にも相当な時間と労力を費やしたという経験を語り、「(映画やマンガなど)6ジャンルの課題はバラバラ。それぞれの課題を少ない時間で詰めていくのは困難」であると述べた。
「委員会は必要だが、順番に委員が発言していくような形式では準備を進めるのは難しい」として委員会そのものの緩慢さにも苦言を呈した。
疑問はまだある。運営はあくまで民間に委託することになるが、そこでの収益は本当に確保できるのか。筑波大学教授の植松貞夫委員も「施設管理の面でも自己収入での運営は到底できない」と漏らした。
これでは「予算ありきの肉抜き計画」と思われかねず、「ハコだけ作って民間に丸投げするのでは」という懸念も拭えない。そもそもどこが名乗りを挙げるのかという疑問もつきまとう。
作品の作り手としても鑑賞側としても、しっかりと完成すれば理想的な施設だけに、それが計画倒れになってしまうのは避けてほしい。
予算面の懸念について、文化庁の高塩至次長は今回の補正予算とは別に予算を取る予定と話し、「今年度にメディア芸術進行総合プログラムとして確保している5億4200万円の予算を大幅に拡大していきたい」と述べた。またセンター完成後の運営に関しても言及し、「国が施設を作って何もしないというわけではない」とした。
確かに施設としては有用かもしれないが、「なぜそれが今でなければならないのか」という疑問に対する答えは出ないまま会合は終わった。