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Twitterとイラン騒動、ネットとメディアに何が起きたのか

2009年07月03日 12時00分更新

文● 山崎富美

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「メンテナンス延期」に見る、Twitterの与えたインパクト

 現在のイランでのTwitterの情報流通の重要性を鑑みて、Twitterユーザーたちは #nomaintenance というハッシュタグで、Twitterにメンテナンスをしないようにアピール活動を行ないました。

米政府がTwitter社にメンテナンスの延期を求めたとCNNなどメディアが報じた

 その結果、Twitter社はホスティングを行なっているNTT America(Verio)の協力のもと、予定していたメンテナンスの時間をイラン時間で午前1時半と情報流通に影響が少ない時間帯に変更することを決定しました。

 なお、米国務省もTwitter社に対してイランでの情報流通が得られるよう、メンテナンス中止を要請したと伝えられています。米国はイランとの国交がないため大使館が存在せず情報を直接得ることができないため、国務省ではインターネット特にTwitterやFacebookのようなサイトで情報収集をしているとのことです。

 なおTwitter社は国務省の介入によりメンテナンスを延期したわけではなくあくまで自社の判断で決定したと伝えています。


メディアは誤情報やデマから真実を「確認」する立場に

 海外メディアの報道規制が行われたため、既存メディアも多くの情報をTwitterから得ているといわれています。CNNなどでは市民が撮影した現場の写真や動画にモザイクをかけるなどの処理を施した上で報道に使う例もありました。

 ただし、Twitterで流通する情報は全てが事実であるとは限りません。実際、真実とデマと誤情報が渦巻いています。例えば空から何か液体が撒かれたという情報に対して「熱湯だ」「サリンだ」「酸だ」などたくさんの憶測が飛び交います。

 ある国の大使館が救済受け入れを始めたという情報が流れた途端、住所電話番号入りで「受け入れ大使館リスト」が飛び交うという支援情報が流れます。ですが、それと同時に「××国の大使館も受け入れ始めた」「大使館に急げ」「大使館前は待ち伏せされているので行ってはいけない」といった情報が飛び交い始め、混乱をきたしました。さらにそれらのtweetはどんどんretweetされていき、雪だるま方式でふくらんでいきます。

熱湯がまかれたときのTweet(左)、大使館情報が飛び交っているときのTweet(右)

 ABCNewsのJim Sciuttoさん(記者)が、ABCの記事でこのように述べたこともあります。「イラン政府側はTwitterを使ってプロパガンダを始め、デマ情報を流し始めている。例えば、僕のTwitterは彼らにジャックされ、僕が発言してない内容のtweetをretweetしてみせている。例えば下記のPersian_guyというアカウントは僕のtweetをretweetしているように見えるが、僕はそのようなtweetはしていない」

ABCNews所属の記者、Jim Sciutto氏のtweetとして捏造された発言。本人はそのような発言はしていない

 イラン報道に関しては、メディアは報道のあり方の変化を余儀なくされています。報道規制をしかれ、VISAが切れてしまうと記者たちは帰国せざるを得ず、ニュースソースを市民に頼るしかありません。

 Twitterの1つの特徴は、情報が非常にスピーディに回ることです。市民が投稿するtweetや写真、動画等を組み込みながら分刻みでブログ記事を更新していく手法は NewYorkTimes、Guardian、Huffington Post 等で取られています。

 そんな中、「ソースをチェックせよというのはジャーナリズムにおいては鉄則ですが、今月のイラン報道ではまず発信してから質問をし、それでもわからなければ読者に聞くという方法をとっているメディアがある」と指摘する記事がNew York Timesに掲載されました。

New York Timesの記事。「Check The Source」(情報源を確かめよ)というジャーナリズムの原則がイランでは通用しなかった

 CNNではiReport.comというサイトに市民たちからの写真を募っており、イラン関連の写真は5200件あったものの、チェックを経てテレビ放送で使用できるファクトチェック(事実確認)ができたものはたった180枚だったといいます。

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