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アクセス解析の基本「トラフィック分析」 (1/4)

2009年06月23日 14時00分更新

文●中野克平/デジタルコンテンツ部編成課

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 Google Analyticsには44種類の指標(メトリクス)と56種類の区分(ディメンション)がありますが、アクセス解析を職業にする人でも、すべての指標をつねに把握しているわけではありません。Google Analyticsの専門家は、全体の傾向の変化に気づくための指標と、傾向の変化を説明するための指標を使い分け、すべての指標を毎日観察しなくても、Webサイトの問題やチャンスをいち早く発見できるようにしています。

 そもそも「分析(Analytics)」とは、人間を器官に、器官をタンパク質に、タンパク質をアミノ酸に、アミノ酸を分子に、分子を原子に、原子を原子核と電子に、原子核を量子に、というふうにものごとを細かく分解して考えていく、近代科学のもっとも基本的な方法論のことです。Analyticsにも、Webサイト全体の傾向をとらえるための指標から、個々のコンテンツの傾向をとらえるための指標があり、たとえば同じ「直帰率」という指標でも、解釈できることがまるで異なります。

Google Analyticsは、44の指標と56の区分からなる元データを加工し、レポートを生成している(Google Analytics Developer Docsより)

Google Analyticsは、44の指標と56の区分からなる元データを加工し、レポートを生成している(Google Analytics)


「Analyticsの使い方が知りたいだけなのに、わざわざ難しい話にしている気がしますよ。それぞれの指標はレポートにまとまっているんだから、後は指標の見方さえ教えてくれれば自分で何とかできるのに」――その考え方は甘すぎます。Google Analyticsのメニューは、原因-結果の順で並んでいますので、ある結果が指標の変化として現れたとき、その原因となる指標は必ず別のメニューにあります(関連記事)。Google Analyticsの設計者もこの問題には気づいているようで、各メニューの概要レポートを見ると、趣旨の異なる指標がさりげなく配置されており、配慮を感じますが、完全ではありません※1。結局、指標をさっと見て問題やチャンスに気づくには、Webトラフィック全体をモデルとして理解し、細かな事象にとらわれず、全体の傾向を見逃さないようにしておく必要があるのです。

「でも、Webトラフィック全体のモデルなんて話、Google Analyticsのヘルプをどんなに探してもありませんよ。そんなに大事な話なら、書いてあってもいい気がしますが」――確かに、Google AnalyticsのヘルプにはWebトラフィック全体のモデルについて何の説明もありません。しかし、卓上計算機のマニュアルに簿記の説明が書かれていないように、ツールにツールを使う前提知識が書かれていないのは当然です。個々の指標の説明はあっても、どうすればビジネスを改善できるのかの説明がないのは、Google Analyticsがプロ向けのアクセス解析ツールであり、Webトラフィック全体のモデルなど、ユーザーには、プロなら知っていて当たり前の知識が前提として求められているからなのです。


※1  「コンテンツ」メニューは個々のページのパフォーマンスを調べるためのレポートが並んでいるが、「コンテンツ サマリー」レポートには、「ユーザー」メニューにあるサイト全体のページビュー数や直帰率が記載されており、全体の傾向と部分的傾向が併記されている。

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