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自作erがレビューする「Mac Proってどうよ?」

2009年06月17日 23時30分更新

文● Jo_Kubota

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Windows PCとして見たMac Proのスペック

 評価機として借用したMac Proのスペックをここで簡単におさらいしておこう。


CPU

 CPUには、「Xeon E5520 2.26GHz」が2基搭載されている。E5520は、一般的な自作PCで言うところのIntel Core i7ベースで、L2キャッシュ容量が256KB×4、L3キャッシュ容量が8MBとなっているが、クロックはやや低めの2.26GHzだ。

 Core i7で最も低いCore i7-920でも2.66GHzのクロックとなっていることを考えるとやや見劣りするが、Mac ProはE5520×2基の構成で、Hyper-Threadingを有効にすると論理CPU数が16に達する。このため並列処理にチューニングされたアプリケーションでは動作クロックで劣る分をコアの数で上回れる可能性が高い。

 なおApple StoreのBTOにて、2.66GHz(Core i7-920相当)、2.93GHz(Core i7-940相当)のCPUも選択可能だが、前者が約15万円、後者が約27万円の追加料金が必要となる。

Mac Pro上でCPUやチップセットなどの情報を表示する「CPU-Z」を実行したところ。EIST(インテルの省電力技術)が効いているため、アイドル時にクロックは1.6GHzまでダウンする


グラフィックスカード

GeForce GT 120

GeForce GT 120。写真でインターフェース面の右側にある小さな端子がMini DisplayPortだ

 CPUが高性能な一方で、グラフィックスカードは「GeForce GT 120」という、GeForce 9500 GT相当の製品だ。自作PCで言うところのエントリークラスの製品が採用されている。

 オフィス用途的なところでは全く不満はないものの、ゲームなどを考えるとかなり分が悪い。またCUDAを積極的に使うようなアプリケーションでも、その性能を発揮するのは難しいだろう。

 ちなみに標準で付属するGeForce GT 120には自作PC用パーツでは見られない特徴がある。それはディスプレイ出力が、DVI-Iに加えて、Mini DisplayPortを備えている点だ。もっとも、DisplayPort自体、まだまだ普及していないので、現時点であまり意味はないのだが……。

GeForce GT 120

GPU-Zで見たGeForce GT 120。スペック的にはGeForce 9500 GT相当だ

 Apple StoreのBTOでは、GeForce GT 120の複数装着(最大4枚)が選べるほか、より高性能なグラフィックスとして「ATI Radeon HD 4870」(グラフィックスメモリーは512MB)が用意されている。

 なお、複数装着してもSLIやCrossFireXなどには対応しないため、マルチGPUによるグラフィックスパワー向上は狙えない。さらにPCI Expressの補助電源コネクタが用意されていないため、GeForce GTX 295やATI Radeon HD 4890といった自作用の市販製品は基本的に使えない。

 Apple StoreのATI Radeon HD 4870も補助コネクタのない、Mac Pro専用モデルだ。つまりWindowsを入れて本気でゲームを遊ぼうと思ったら、ATI Radeon HD 4870を購入時にBTOで選ぶか(Apple Store価格で2万2000円)、追加購入する(同3万8400円)必要があるわけだ。


メモリー

上位モデルの評価機では、メモリーが8スロットぶん用意されている。下位モデルは4スロットだ

 標準で搭載されているメモリーは1GB×6の6GBだ。これは1CPUあたり1GB×3が接続され、これが2基あるため6GBとなっている。大抵の場合6GBあれば十分だが、より快適な作業環境を求めるなら購入時に2GB×6の12GBくらいに増設(Apple Storeにて約3万円)してしまった方がよいだろう。

 なおMac ProではECC付きのPC3-8500(DDR3-1066MHz)のメモリーが必要となるため、一般的に入手可能な安価なDDR3モジュールは使えない。


拡張スロット

拡張スロット

中央右側の囲み部分が拡張スロットだ

 拡張スロットは、PCI Express 2.0 x16スロットが4基用意されており、2スロットはx16モード、残り2スロットはx4モードとして動作する。4スロットのうち必ず1つはグラフィックスカードを装着することになるため、実質空いているのは3スロットぶんだ。

マザーボードを取り外した状態での拡張スロット部分


ドライブ

 ドライブの拡張性については、光学ドライブが最大2台、HDDは最大4台まで搭載できる。標準では光学ドライブ/HDDともに1台ずつ装着されている。

光学ドライブ

HDD

光学ドライブマウンター

HDDマウンター

 HDDマウンターは標準で4台分付属しているので、HDDさえ買ってくればあとから自分で装着することも可能だ。マウンターで使用できるHDDはSerial ATA接続で3.5インチサイズに限られる。自作で流行の2.5インチSSDを装着しようとした場合、ちょっとした工夫が必要になりそうだ。

 というのも、Mac Proの場合、マザーボード(メインボード)にダイレクトにHDDを挿す仕様となっているため、コネクター位置が合わない2.5インチSSDはそのままでは装着できないのである。接続するとなれば延長コードを用意するなど工夫が必要だ(もちろん自己責任で)。

 標準では640GBの7200rpmな3.5inch HDDが1つ搭載されている。これで不足すると思うなら、自分で好きな容量のHDDを追加すればよいだろう。


筐体

上段/中段/下段と筐体を3層に区切り、本体前面から吸気して背面に流すというエアフローを実現している

 Mac Proが一般的なWindows PCと大きく異なるのは、エアフローが徹底して計算された筐体にある。まず非常に静かであり、「本当に2つのCPUが載っているの?」と疑うくらい音がしない。この秘密は筐体内を3つの層に分け、それぞれ個別に冷却するシステムを採用している点にある。

 この概念は、「SSI EEB」(ATXのサーバー・ワークステーション版)で規定されている、PCケースの設計思想を忠実に再現したものだ。皮肉なことに自作向けのPCケースでこれを完璧に実現している製品はほとんどない(過去にはあったが……)。

 またMac Proが自作系製品と大きく異なっている点は、CPUやメモリーがドーターカードでマザーボードに接続されていることだ。

 この思想は初期のMacintoshから「CPUはカードで交換できる」という概念を引き継いでいるようで、ハードウェアデザインに拘った同社ならではの設計方法だろう。

 過去に自作PCでも、SSI EEB規格のTyanの「Thunder i860」やIWillの「DX400-SN」など、メモリーをライザーカードで装着する製品はあった。しかし現行製品において、CPUまでもドーターカードに載せて、かつ40万円以下で購入可能な製品としては、Mac Proが唯一と言ってもいいだろう。

ドーターカードを引き出したところ

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