著作権法を改正して「仮想コミケ」を
問題はこれが税金の無駄使いだということではない。無駄のスケールでいえば1兆円以上の予算がつく農業土木事業に比べればかわいいものである。最大の懸念は、日本から生まれたオリジナルな文化であるマンガやゲームが官製芸術になることによって殺されてしまうことだ。
今では国立劇場で上演されている歌舞伎も、かつては幕府に弾圧され、女性による演技は禁止された。浮世絵も弾圧され、春画は最近まで印刷できなかった。多くの大衆芸術は、国家の弾圧から逃れ、大衆の支持によって生き残ってきたのである。もし徳川幕府が「国立浮世絵芸術総合センター」をつくって浮世絵に補助金を出していたら、浮世絵師たちは将軍の肖像画などを描いて金持ちになったかもしれないが、自由な作品は生まれなかっただろう。
マンガやアニメを生み出しているのは、コミケ(世界最大のマンガ即売会)に代表されるようなマニアたちの自発的なコミュニケーションである。著作権法違反すれすれのようなきわどい状況で、警察の手入れを警戒しながらもマンガは生まれている。最近話題になった「地デジカ」に対する「アナロ熊」のように、パロディを作ることによってアニメは生まれてくるのだ。
マンガやアニメのアーカイブをつくるなら、コンテンツをデジタル化して集める仮想コミケをウェブ上に作ってはどうだろうか。これには政府が予算を出す必要はなく、グーグルに依頼すれば無料でやってくれるだろう。このアーカイブについては著作権法の適用除外にするという特別立法をすれば、たちまち何百万ものコンテンツが仮想コミケに集まり、世界中に日本の誇るべきマンガ文化を発信できるのではないか。
筆者紹介──池田信夫
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1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。














