なぜ、あのネットショップは今日も繁盛しているのか? なぜ、自分のショップでは商品が売れないのか?
他にはない強い商品開発力、他店を引き離す圧倒的な集客手法、一度捕まえたお客を逃がさない囲い込み術……と、成功したネットショップには現場で蓄積されたノウハウがある。本連載では、全国の優れたネットショップの事例からそのノウハウを公開。あなたのショップの“勝ちパターン”を見つけるヒントにしよう。
■今回の成功ネットショップ:
ベビー用スリング専門店『Happy!hughug』(はぴはぐ!)
2003年開業。年商非公開。育児経験を生かしたオリジナルスリングの製造販売を開始。スリングアドバイザーとして各地のスリング講座などの講師としても活躍。日本ベビースリング協会会員。
- URL:http://www.happyhughug.com/
- 店主:藤原真希枝さん
主力商品がいつまでも売れるとは限らない!
前回お伝えした通り、「商品力」は“ネットショップの要”とも言うべきものですが、どんなにその商品に対して自信があり、かつ、売れた実績があっても、いつ廃れないとも限りません。収益を上げ続けるネットショップは、適宜新商品を投入する、商品の見直し・改良を図るうえで、時流を見極める目を持ち、上手に商品の仕入れや開発に取り入れています。スリングと呼ばれる赤ちゃんの子守帯を販売する『Happy!hughug』(はぴはぐ!)の例では、その点でもさまざまな工夫が見受けられます。
赤ちゃんグッズにドクロ柄を取り入れる
『Happy!hughug』で、いま人気のある柄は、スカル柄――いわゆる、ドクロ(頭骸骨)マークのスリングです。スカルといえば、海賊やパンクファッションをイメージさせる柄。決して一般受けするものではありませんでしたが、海外の有名ブランドがスカル柄のファッションを提案したのをきっかけにじわじわと人気が出始め、2008年頃からは、子供服のデザインにもちらほら見かけるようになりました。
「スカルといっても、それまで主流のハードなイラストではなくポップな雰囲気のものが増えたため、流行に敏感なお母さん達も抵抗なく受け入れることができたのだと思います」(店主・藤原真希枝さん)
とはいえ、こうした個性的な柄は、市場投入のタイミングが早すぎれば「趣味が悪い」と一蹴される危険をはらんでいますし、遅すぎれば二番煎じとなって購入者は減ってしまいます。「私の場合、生地メーカーが主催する2008年の春夏向けの展示会で、スカル柄の生地が新商品として登場しているのを発見したんです。スカルのファッション動向は把握していたので、スリングの生地として扱っても絶対イケる!と感じました」
自店以外の販路にも積極的にアタック
このとき同店では、自店で商品を販売するだけでなく、スカル柄の魅力をより多くの人に知ってもらうため、従来から取引のある通販カタログの会社にも打診し、スカル柄のスリングを取り扱ってもらえないか交渉します。 「ちょうど次号の誌面で、お父さんも使える、ややハードなテイストの子供関連グッズという企画が進行中だったため、即、採用してもらえました。今、振り返っても、スカル柄のスリングは、最適な時期に、最適な舞台に上がったのではないかなと思っています」
実は、同店は開業当初、無地でシンプルなもの、伝統織物を使ったものなど、優しい風合いの素材や柄を選んでスリングを制作していました。また、ナノテクノロジーを応用した撥水性に優れた素材など、どちらかといえば機能を重視し生地を選定していたのです。
「でも、『赤すぐ』などの人気の育児雑誌を研究すると、スリングもベビー服と同じぐらい“ファッション性”が求められると痛感したんですよね。私が講師を務めるスリング教室でも、スリングをファッションのアクセントにしたいと考え、派手なデザインのものを欲しがるお母さんがたくさんいました。スカル柄をはじめ、ファッション性の高い生地は流行り廃りのサイクルが早いという“弱点”はありますが、それでも、定番商品以外に、季節ごとに流行に合わせた素材や柄も積極的に取り入れるべきだと思いました」
さらに同店は、絶妙なタイミングで新商品を投入し、さらなるお店の活性化に結びつけています。次ページではその秘密を探ります。
――ネットショップのエキスパートが斬る!――
「想定顧客」を把握する
“時流をつかむ”とは、顧客の求めるものを反映させることに他なりません。そのためにもまずやっておきたいのは、「想定顧客」を明確に把握すること。たとえば、お店のターゲット層が30代の主婦であっても、ギフト需要が多いのであれば、祖父母の年代も顧客になる可能性を秘めています。想定顧客を明確にしたうえで、彼らがよく読む雑誌をリサーチするなどして情報を収集し、アピール方法を探っていきます。
また、“今を知る”という意味では、ベビー服なら『赤ちゃん本舗』などの実店舗に出向くなど、その業界大手が販売している商品などから動向を知ることも大切です。大型書店に出かけ、今、平積みされている本をチェックするのも、動向を知るうえではおおいに参考になるでしょう。
山田雅彦:有限会社サーブ代表。IT&インターネット活用のコンサルティングサービスを提供。