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検索エンジンスパムとOOP

2007年06月08日 09時00分更新

文●権 成俊/株式会社ゴンウェブコンサルティング 代表取締役

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 Yahoo!向けのSEOと、アクセスログ解析による対策効果の検証を繰り返し行うことで、ECサイトの売上を、着実に伸ばしていくことができるようになります。しかし、以前のコラムでもお話したとおり、SEOに完璧というものはありません。我々はどこまで行っても検索エンジンのアルゴリズムを正確に把握することは出来ませんし、またそのアルゴリズム自体も順位付けのポリシーを100%の精度で実現できるわけではありません。日本語の解析の問題などによって、意図とことなる順位付けがされることもあります。このため、対策キーワードで狙った順位での表示が達成できないこともあります。

 しかし、それらの可能性を前提としながらも、明らかに不自然な順位変動を繰り返す場合があります。そのような場合は検索エンジンスパムOOP(Over Optimization Penalty)としてペナルティを受けて順位が下降している可能性が考えられます。ペナルティを受けてしまうと、いくら対策を強化しても、一定以上の上位表示は達成できません。

検索エンジンスパムによるペナルティ

 “検索エンジンスパム”とは、検索エンジンが不当だと考えている方法を使って、自社サイトを上位に表示させようとする行為のことを指します。インターネットユーザーの中では、スパムという概念も広く浸透してきていますので、ご存知の方も数多くいらっしゃるかと思います。

 本来検索エンジンは、検索を行うユーザーにとって、最適なウェブページの情報を提供することを、その使命としています。その一方で検索エンジンは、サイト運営者が自らのサイトが検索結果の上位に表示されるように対策を行うことを、否定してはいません。その証拠に、Yahoo!のヘルプページには、上位表示のためのアドバイスが掲載されています。
http://help.yahoo.co.jp/help/jp/search/indexing/indexing-23.html

 検索エンジンは、検索キーワードと同じ内容をテーマとして扱っているページを上位に表示することを上位表示のルールとしています。SEOの一つの側面は、サイト運営者が自身のサイトを紹介したい検索エンジンユーザーが検索するキーワードと、ウェブページの内容を一致させることであり、その行為は検索エンジンユーザーにとっても有益なものであるからです。

 しかし、この検索エンジンの趣旨に反する上位表示の手法があります。それが“検索エンジンスパム”です。たとえば、ソース上では確認できるテキストを目視では確認できないようにすることで検索エンジンと目視するユーザーとで異なる内容を見せるなど、検索エンジンの上位表示のポリシーに反する方法で順位を上昇させようという行為です。厳密に何がスパムで何がスパムで無いということは明確にはなっておりませんが、サイトを訪問する検索エンジンユーザーを対象とせず、検索エンジン上位表示のために検索エンジンに見せる事だけを目的とした対策がスパム行為であると考えられています。そのため、検索エンジンはこのようなウェブページにペナルティを科し、検索結果に表示されないようにしたり、本来表示されるべき順位よりも低い順位に表示したりします。代表的なスパム行為と言われている手法の例を下記に挙げました。万一セオリーに反する順位変動が続く場合は自社サイトが下記の例に該当していないか確認してみてください。

 【検索エンジンスパムの例】
 ●検索する利用者を、他のページに転送するためだけの自動転送ページを作ること
 ●他ページと全く同じ内容のページを作ること
 ●情報をほとんど公開していないにも関わらず、自動的かつ大量にページを作ること
 ●検索エンジンだけのために、ユーザーには利用できないリンクリストを作ること
 ●ユーザーに見えないテキストを記載することなど、検索エンジンが認識する内容と、
  ユーザーが認識する内容が異なるページを作ること

 しかし、実際にスパム行為と認定されて順位が不自然に降下する例は非常に少なく、当社の経験上でも疑われた例は0.1%未満しかありません。ほとんどの場合、不自然に低い順位に思えてもそれが正しい順位であるか、もしくは下記のOOPに当てはまる例の方がずっと多いようです。

OOP(Over Optimization Penalty)

 前述のように、意図的に不正行為を働き、サイトの順位を上昇させようとする行為はスパムであり、検索順位の下落を招く場合があります。しかし、スパム行為を行った自覚がないのに検索順位が下落してしまうこともあります。実は検索エンジンは、不当な手法であることが明らかなスパム行為とは別に、過度に対策を施したページに対してもペナルティを与えることがあります。この過剰SEOの状態は、“OOP”(Over Optimization Penalty)と呼ばれています。検索順位が上昇しない場合は、こちらの可能性も疑ってください。

 具体的に、何をどこまで対策を行えば“OOP”になるのかという基準は、その検索キーワードごとに異なってきます。例として、SEOを点数化して捉えてみましょう。自社サイトに対策を施し、あるキーワードでのSEO上の点数が、100点になったとします。このとき、競合サイトのSEO上の点数が90点や80点だとすると、自社サイトが1位、90点の競合サイトが2位と順番に表示されます。
 しかし、自社サイトが100点の評価を得ていても、競合サイトの点数は、どのサイトも10点以下だったとします。すると自社サイトだけ、他と比較して異様に点数が突出してしまいます。この状況を検索エンジンが見たとき、過剰に対策を行い、本来の順位以上に上位に表示されている、と判断されてしまう可能性があります。不当な手段を使っているわけではなくても、あまりに検索エンジン寄りに作られたページは、検索を行うユーザーにそのページに対する不自然な高評価を与えていると考えられるのです。そのため、検索エンジンは過剰にSEOを施したページにペナルティを与え、正しい表示順位になるよう、自然な採点結果から判断される表示順位よりも下落させていると考えられます。

 競合サイトが全く対策を行っていないキーワードの場合、本コラムで紹介したタイトルやh1タグ等の最適化を行っただけでも、OOPになる場合もあります。その場合は、h1タグを外してみたり、タイトルを少し長くしてみたりして、少しずつSEOを弱めていってください。OOPに陥っていたのであれば、SEOを弱めていく過程で順位が上がります。難しい作業になりますが、キーワードごとに適切なSEOの度合いを見極めていってください。

 SEOは本に書いてあるようなセオリーを覚えれば、誰にでもできると思う方もいらっしゃるかと思いますが、実際にはスパム行為はもちろん、OOPにもならないように、キーワードごとに微妙なさじ加減が必要になってきます。SEOのチューニングというのはこのような他のサイトとの比較による個別の調査と改善のことです。1つの成功例は新たに対策を行う時に非常に参考になりますが、そのまま別のケースで使えるわけではなく、キーワードごとの試行錯誤が必要です。キーワードごとに最適な対策の度合いが違うことを知っていれば、成功例にとらわれず、対策キーワードごとに各要素の最適状態を調査し、精度の高いチューニングが可能となるでしょう。

著者プロフィール

権 成俊
名前 権 成俊(ごん なるとし) info[アットマーク]gonweb.co.jp
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 株式会社ゴンウェブコンサルティング
サイト http://www.gonweb.co.jp/

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