これまでにキーワードの競合度と人気度の考え方についてお話して参りました。特に前回のお話では単に検索回数が多いキーワードを選ぶのではなく、ユーザーが満足してくれる検索結果ページ(SERP)を返してくれるようなキーワードを選ぶことでサイト訪問率が高くなる、という考え方をご説明しました。これをもう少しデータから検証してみようと思います。
たとえば、KAT(キーワードアドバイスツール)で月間1万回検索されるキーワードがあるとします。このキーワードがYahoo!に一位表示された場合、一体何件くらいのサイト訪問があるのでしょうか?
KATの値はYahoo!だけの検索に限ったものではないため、Yahoo!での検索数は検索エンジンシェアから逆算すると大まかに7~9割程度だと思われます。実際に、1位に表示されて7000回~9000回検索されるうち、実際の訪問者数はどのくらいなのでしょうか?これをアクセスログから検証してみました。
図1
図1をご覧ください。これは、いろいろなキーワードで検索した場合の任意のページの検索表示順位と、そのキーワードについての訪問率(任意のキーワードからの訪問件数(アクセスログより算出)÷KAT検索数)をグラフにまとめたものです。
たとえば、赤枠で囲った黄色▲は“新宿+ビジネスホテル”というキーワードセットで、4位に表示されたサイトについてのデータですが、KATで2615回検索されている期間に訪問回数が69回でした。
このとき縦軸の訪問率は以下のようになります。
訪問率=69÷2615×100=2.6%
これを見るといくつか気付くことがあります。
まず、検索数は10位から20位にかけてほぼゼロになるということ。一般的に言われている“検索エンジンユーザーは2ページ目までしか閲覧しない”ということと一致する結果が得られています。
さらに気付くのは“検索結果の1位に表示されるキーワードでも訪問率は最大25%程度である”ということです。もちろん、これは統計データに過ぎないため、個別に見てみればそれ以上の数値が得られているものもあります。ただ、統計的な数値を見る限り、皆さんの予想以上に訪問率は低いと考えられるのではないでしょうか。さらに、各ドットの色が3色(◆・■・▲)に塗り分けられております。この色は、それぞれのキーワードのKATから得られる一ヶ月間の検索回数で塗り分けております。
これを見ると、同じ順位であれば検索回数の多いキーワードよりも検索回数の少ないキーワードの方が訪問率は高いことが分かります。
このような結果が得られるのにいはいくつかの理由が考えられます。
一つは、前回お話したように
検索結果に満足しない場合、ユーザーはどのサイトも訪問せずに検索をやり直すということ。
もう一つは
検索結果を訪問する場合でも必ずしも1位のサイトを訪問するわけではなく、また2位以下のサイトについてはそれ以上にクリックされる確率が低いということ。
検索エンジンユーザーが何度も同じキーワードで検索を行うこともありますが、何度も検索を行っている場合、一度訪問したページは再度訪問しないことが考えられます。これらの仮説から、訪問率の高いキーワードを選ぶためには次の3つの要素を検討する必要があります。
1) SERP満足度(Search Engine Result Page Satisfication)SERP_S
検索結果として紹介されるサイトに想定しているユーザーニーズに合致したものが多ければ、サイト訪問率は高くなる
2)検索結果表示一致度(Snippet Agreement)Snip_A
検索結果として表示されるタイトル、紹介文がユーザーニーズに合致しているほうが、サイト訪問率が高まる
3)訪問率(Visit Rate) VR
これらの概念を整理すると、定性的には下記のように表現できます。
訪問率(Visit Rate) : VR
訪問数(Visit) : V
KAT検索数 : KAT
検索エンジンシェア(Search Engine Share): SES
SERP満足度(Search Engine Result Page Satisfication):SERP_S
検索結果表示(タイトルと紹介文)一致度(Snippet Agreement):Snip_A
VR=V÷(KAT×SES)=SERP_S×Snip_A
つまり、訪問率を検索回数に対するアクセス数の比率とすると、これはSERPに対する満足度とタイトル、紹介文など、検索結果の紹介内容に依存するということです。
これまで“検索回数の多いキーワードで上位表示したのにサイト訪問者が少ない”ということで悩まれている方は多かったのではないでしょうか。これまでお話したことを総合的に考慮して、SEOのためのキーワードを選ぶことによって、仮説と検証のつじつまが合った検索エンジンマーケティングを行っていくことが出来るのです。
著者プロフィール
名前 | 権 成俊(ごん なるとし) | info[アットマーク]gonweb.co.jp |
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