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売上を伸ばしながら、定時で帰る日を会社でつくろう

2006年09月15日 09時00分更新

文●とこ みゆき/サポタント株式会社

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こんにちは!とこです。
皆さんは1週間に何日残業していますか?

繁忙期だけでなく、日常的に残業が多いと考えられているインターネットショップ業界。

 そんな中、社員は残業ばかり続くと将来に対して不安を感じ、プライベートで長時間労働ができない状況になると「会社を去るという選択肢しかない」という悲しい状況に追い込まれることもあります。

 新人スタッフを雇用する
  ↓
 雇用する
  ↓
 辞められる(涙)
  ↓
 新人スタッフを雇用する(以降、繰り返し)

という状況が続くと、会社としては少し体制やルールなどを見直す時期が来ているのかもしれません。
今回は  【3年前】 インターネットショップ運営のため夜23:00以降に夕食を食べていた
    【今】  売上が「約2倍」になったのに、社員数を変えず、17:00(定時)で退社している
TLCドックフードさんの例をご紹介します。http://www.tlcdogfood.com/dog/index.php

3年前も今も同じ5人体制。ただし売上&注文件数は2倍になりました

 TLCドックフードは社長の皆川さんやパートさんを含めて総勢5名で運営しているインターネットショップさん。人数が少ないネットショップは最近、梱包などの物流業務を外部に委託される場合もありますが、TLCドックフードさんは内部でされています。ドックフードの輸入も検品(カケがないかどうか)も、袋詰めも社内で丁寧にして、品質そのもの以外の手のかけかたでリピーターの心をつかんでいます。

 現在の役割分担とお仕事をされる時間を聞いてみました。

担当者 担当業務
皆川さん 受注業務、事務教務、輸入業務(9:00-17:00)
奥様  受注 (13:00-17:00)
Aさん 検品(目視) & 梱包 & 発送
Bさん 検品(目視) & 梱包 & 発送
Cさん 検品(目視) & 梱包 & 発送

 つまり、実際に受注対応などのお客様対応をしているのは皆川社長と奥様だけです。

こうしたお話を聞いている最中にも、どんどんご注文のお電話が入り、対応されるのは皆川社長みずから。


「いつもご注文有難うございます!」と慣れた様子でPCのご注文入力画面にデータを入力していきます。

 1日の発送件数は平均100件。週明けの多いときは250件を超えることもあるそうですがほぼAMでおもな受注業務は終了してしまうっていうのだから驚きなのです。やること、やらないことを決めた!

 TLCドックフードは、「やらないこと」をしっかりと決めているインターネットショップです。 

■メールマガジンはかかない
■ PPC広告もやらない
■卸売も1社だけ(創業当時からの取引だけ)
■ 3商品しか売らない

 など。 商品に関しては、色々な会社から卸の商材の売り込みや紹介も沢山いただくそうですが、やらないと決めているそうです。現在の経営資源(人、モノ、カネ、情報)で、できる範囲を決めているからすべてにおいて明確ですね!

ルールをつくり、改善する!

 「3商品だけを販売しているのだから少人数で余裕で運営できるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、3商品だからこそ、売り方で色々と工夫しているのです。

 リピートオーダーをいただくため、きめこまやかな価格政策をとり、かなり複雑な価格体系になっています。(詳細は購入するとわかります!)複雑な価格体系で、運営はかなり複雑なのですが、会社として「ルール」を作成したのです。
対応法のマニュアル化、お客様に説明資料を作成し、同梱するなどの工夫をし、手動でも間違えにくい、しかもお客様が利用しやすくリピートしたくなるサービスにと改善されていったのです。

売上が数百万円のときに決心した1000万円の投資の目的は?

 ルールを決めて運営し、ご好評をいただいたおかげで売上が伸びてきた3年前。ただし、手動でやっていると注意していてもミスも増えます。みるみる内に夜中まで帰宅することが出来ない毎日となりました。

 これではいけない!と考えた皆川さんはシステム導入を検討しはじめました。TLC独自のノウハウをためてきたため、運営ルールは他のネットショップとずいぶん違います。現存するASPサービスを利用したのでは今の状態が打破できないことも判明。

カスタマイズされたオリジナルのシステムを開発するしかない分かったとき
どうせなら10倍、20倍の注文がくるようになっても、今のメンバーで定時で帰れるようなものをつくろう!と考えた皆川さん。

システム会社を紹介された仲介者にきちんとTLCの運営の流れを説明していただき、コミュニケーションはうまくいったそうです。

 ただし、出てきた見積もりは当時の売上が月商1000万円に満たないラインだったにも関わらず、なんと1000万円!簡単な投資額ではありません。

 しかし、長期的に今のメンバーで何倍もの注文数をこなせる体制にしたいという強い思いがあり、そのままGO。そして、なんと開発期間を1年半+その後の初期導入で慣れるまでの期間、2ヶ月、合計1年8ヶ月をかけ、システム導入に成功。今では定時に帰り、プライベートも充実した生活を送ることができるようになったそうです。

今日からはじめられる「To do」

(1)少人数でやっていきたいと考える場合、「やらないこと」を決めることがとても大切

 あれもこれもと全部に手を出すと手付かずになってどれも成果を得られないという悲しい結果になってしまいます。今、中途半端になっていることがあって、増員予定がないならやらないことを決めてみましょう。
*経費がかからない項目に関しては、ダラダラと続けてしまう傾向が出やすいので、経費ゼロでも工数がかかることをピックアップしてみましょう。

(2)お客様にも喜ばれる会社のルールを決め、全員に徹底する

運営のルールは通常店舗の立場だけで考えてしまいがちですが、TLCドックフードはお客様にもメリットのあるルールの決め方をしています。また、お客様とのコミュニケーションの実績から一番両者がハッピーなラインをみつけ、うまく運営のルールにしています。

ルールを決めれば、全員が同じ運営が出来るよう説明資料を作成したり、徹底するようにしましょう。

(3)将来を見越したシステムを検討する

 皆川さんが手にいれたかった生活のためにかけた日数は1年8ヶ月。

 システムを導入すれば、短期間で効果があると考えがちですが、今回のようにカスタマイズする場合や、会社としての運営ルールが決まっていない場合にはかえって時間をとり、業務効率が下がる場合があります。導入を決めたのなら長期的なメリットを意識して会社にとりいれるようにしましょう。そのためには長期的にどんな体制、事業を展開していきたいのか再度考えてみることが大切です。 

 また投資額と作りたいシステムのバランスを考え、独自開発するのか、ASPのような汎用的なものをうまく利用するのかなど、システムに詳しい人(出来ればシステム会社との通訳になってくれるような人)を見つけて相談するようにしましょう。

著者プロフィール

名前 とこ みゆき happy[アットマーク]supotant.com
※著者に直接問い合わせをする際は、お名前、会社名、サイトURLなどを明記してください。
会社 サポタント株式会社
サイト http://www.supotant.com/

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