5月19日、NTTドコモから国内初のAndroid(アンドロイド)携帯電話「HT-03A」が発表された。Googleが提供する、オープンソースの携帯電話プラットフォームであるこのAndroidは、日本の携帯電話メーカーと携帯電話キャリアにどんな影響を及ぼすのか? そして、端末は今後どう変わっていくのか? Androidの開発者グループである「日本Androidの会」の幹事で、同会Market Placeワーキンググループのリーダーである平出 心 氏(株式会社キーテル代表取締役)にうかがった。聞き手はアスキー総合研究所所長の遠藤 諭と、週刊アスキーで携帯端末を担当する矢崎飛鳥。
ベンチャーからも
携帯電話が登場するかもしれない
遠藤 そもそも、Androidというのは携帯電話用のOSやモジュールが全部入っていて、入れたらすぐに動くというものなのでしょうか?
平出 これまでとは比較にならないくらいの難易度で、携帯電話を動かせるようになります。ですので、過去に携帯電話を作ったことのないメーカーが、参入してくる可能性もあります。現在の端末メーカー以外の、例えば家電メーカーや部品メーカー、ベンチャー企業からもAndroid端末が登場するでしょう。そういった意味では、既存の端末メーカーやキャリアは、あまりAndroidをやりたくないのかもしれません。
矢崎 もっとも、端末の販売奨励金の廃止やSIMロックのフリー化などで、現在の携帯電話のビジネスモデルが崩れるのは、ある程度、既定路線ですからね。
平出 なので、今後SIMロックフリーの端末が1万円台でどんどん売られるようになるかもしれず、既存のメーカーの端末ではなく、そっちを使う人が出てくるでしょう。そうなると、ケータイがネットブックのようになるかもしれません。
遠藤 Netbookの場合、ASUSTeKは半分は製造子会社から買っていますが、残りは他社から買っているんですよ。つまり、必ずしも台湾メーカーが製造直販だから安くできるというわけではなくて、海外で大量に売る根性があるかどうかなんです。だから、日本メーカーにもむしろチャンスなんじゃないでしょうか。船井電機みたいに、海外のセンスを持っている会社はやるかもしれない。
平出 日本の端末メーカーにとって、Androidは世界を相手にできるチャンスですし、ソフトもそうです。「Androidマーケット」では、アップルの「App Store」と同様に、個人でも大手コンテンツプロバイダーと同じ土俵に立って、世界にアプリケーションを配信できるようになります。
遠藤 大手コンテンツプロバイダーにとっては、大変なことになりそうですね。
平出 Androidマーケットにアプリケーションの課金を持っていかれると、キャリアの公式サイトはどうするのかという議論になります。オープン化が進むと、携帯キャリアはインフラのみになってしまうという危惧を抱いていますからね。
矢崎 オープン化が進むと、帯域も厳しくなります。現状でも、イー・モバイルは帯域制限を発表しましたし、ソフトバンクも結構厳しいと言われています。キャリアにとって、これからはネットワークの帯域をいかに確保するかが課題になるんじゃないでしょうか。