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Google検索に「ワンダーホイール」など、新機能 (3/3)

2009年05月13日 06時01分更新

文●中野克平/デジタルコンテンツ部編成課

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検索ツールはGoogleの技術復興だ!

 検索エンジン業界がYahoo!対Alta Vista対infoseek(対goo)の混戦状態にあった2000年前後、圧倒的な検索精度でハイエンドユーザーから徐々に支持を伸ばしていったのがGoogleだった。近年ではYouTubeの買収やGoogleブック検索への懸念など、大がかりな技術、大企業的な振る舞いに注目が集まり、エンジニアのリストラ(配置転換)さえニュースになるグーグル。今回の「検索ツール」は、最新の技術力で他社を圧倒するグーグルの創業精神が健在であることの宣言にも思える。


相次ぐ機能追加は世界各国でシェア1位獲得の意気込み?

 Googleは日本を始め、ロシアや中国、韓国では2番手以下の地位に甘んじており、決して安泰な地位にあるわけではない。機能が拡張されたスニペットの表示も、商用サイトではGoogleが最初に導入しており、Googleが検索エンジンの筆頭であり続けるには、創業時と同様、「情報検索の最新技術をいち早く取り込む商用検索サイト」という位置付けを確保するのが手っ取り早い。

 その意味で「検索ツール」は、情報検索の最新技術で、現在の検索エンジンがかかえる2つの問題を解決している。

ロシアの検索エンジン「ヤンデクス」は楽天とYahoo!を組み合わせたような事業モデルで、ロシア全土に展開している

ロシアの検索エンジン「ヤンデクス」は楽天とYahoo!を組み合わせたような事業モデルで、ロシア全土に展開している


情報ソースそのものが持つ属性でノイズを除去

 第1の問題は検索結果に含まれるノイズの除去だ。グーグルの使命は、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」だが、世界中の情報は玉石混淆の状態で、悪質なSEO業者とのイタチごっこが続き、Googleの検索結果にも、「?」なWebページが多く混じっている。

 「動画」「掲示板」という情報ソース別や、「最近の結果」「24時間以内」「1週間以内」「1年以内」というページ更新日別のフィルタリング機能は、「世界中の情報を整理」する手段として、TF-IDFやページランクなどのスコアリング技術だけでなく、情報ソースそのものが持つ属性も利用し、ユーザーの利便性を高めようという姿勢の現れだろう。

 ただし、英語版にはある「Reviews」が見あたらない。英語版の公開テストでは、商品などのレビューのみを抽出するフィルタリング機能「Reviews」があったが、どのページがどの商品のレビューなのかを情報検索の技術で判別するのは言語に依存するのだろう。メディアサイトとしては、日本語版でもぜひ実装して欲しい機能だ。


「問い返し」でユーザーの検索語の意味を明確に

 第2の問題はユーザーが入力する検索語の曖昧さだ。たとえばユーザーが「F-1」というキーワードを入力したとき、Googleには「F-1」が何を意味するのか判断しにくい。支援戦闘機の「F-1」なのか、自転車の「F-1」なのか、キヤノンのフイルムカメラの「F-1」なのか。あるいはFormula 1の「F1」なのか、ファンクションキーの「F1」なのか、20-34歳の女性を意味する「F1」なのか。ユーザー本人にとって意味が明確でも、「世界中の情報を整理」する側のグーグルには意味が曖昧すぎるのだ。

「F-1」から「F-1 戦闘機」を選ぶと、検索結果も「F-1 戦闘機」に切り替わり、Formula 1関連のページが消える

「F-1」から「F-1 戦闘機」を選ぶと、検索結果も「F-1 戦闘機」に切り替わり、Formula 1関連のページが消える

 ワンダーホイールは、情報検索の分野で研究が進んでいる「問い返し(Asking Back)」のGoogle的応用といえる。たとえばワンダーホイールを表示しながら「F-1」を検索すると、「F-1 戦闘機」や「BOMA F-1」、「Canon F-1」などの候補が表示される。Googleが「F-1では意味がわからないので、どのF-1なのか教えて!」と問い返してきているのだ。ここで「F-1 戦闘機」をクリックすると、検索結果が切り替わり、ワンダーホイールには「F2戦闘機」や「ステルス戦闘機」などの関連語が表示される。「問い返し」を繰り返しながら、ユーザーが望む検索結果に近づけるわけだ。

 最新の情報検索技術を取り込みながら、他社を圧倒しようとするグーグル。日本国内には巨大なライバルYahoo! がいる。検索ツールが最初に導入されるのが日米のみなのは、日本で何とか勝ちたいという意気込みの表れか。マーケティング戦術ではなく、情報検索の最新技術を使って必死に追い上げようとする姿勢からは、グーグルらしいベンチャー精神が感じられる。

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