カラオケ業界「三度目の節目」への挑戦
また現在、同社ではカラオケをキーにしたアプリやサービスを次々に発表している。
今年3月にはiPhone/iPod touch上でJOYSOUND配信のカラオケ楽曲を再生できるアプリ「JOYSOUND Karaoke Organizer」を発売(関連記事)。さらに同月、MySpaceで、ウェブカメラを通じてカラオケ楽曲を歌った動画を録音・録画できるサービス「MySpaceカラオケ」を開始している。
個人的な楽しみとしてのカラオケをアプリで実現したり、SNSを通じて音楽体験を共有すること。それは一見すると個人に集約されるだけのサービスに思えるが、その根本には「もう一度カラオケボックスを楽しんでもらうため」という発想があるという。
「一人で歌っているだけでは味わえない満足感のため、発表の場としてのカラオケボックスは必ず残っていきます。業界そのものに過渡期が訪れている中、カラオケボックスそのものから離れてしまった人をどうやって呼び戻すか。そのときに新たなサービスを通じて、カラオケの新しい面白さや便利さを提供する必要があるという考えなんですよ」
たとえばSNSのうたスキには、実際のカラオケボックスと連動してカラオケの採点結果をSNS上に反映できる機能があるため、オンラインゲームのようにユーザー同士で得点を競うことができる。また「指定された楽曲を全曲歌う」などの目標を「課題」としてコミュニティ内で共有したりと、カラオケの新たな楽しみ方が生まれている。
カラオケ業界そのものは今、三度目の大きな節目にある。一度目はレーザーディスクから通信カラオケに移り替わったとき。どれだけ曲数を入れられるかという曲数戦争の時代が訪れ、楽曲の「量」が求められた。
二度目はブロードバンドが普及しはじめたときで、何万曲もの楽曲があふれる中で差別化をねらってコンテンツの「質」を向上させた。広帯域を生かしたアーティスト本人たちのPVや、原音を再現した高音質の楽曲などが盛んに配信された。
その「質」のバリエーションも飽和しつつある現在、ケータイやゲーム機といった様々な舞台で「カラオケ」が展開されるようになってきた。
そこにネットという要素が入ることで、ただ曲数だけが増えていくということでは再び飽和状態を招いてしまう。そうではなく、SNSやアプリを通じてカラオケボックスという場所を再利用することで、新たな価値を生み出していくという考え方がそこにはある。