歴史を変えたネットワーク機器として今回紹介するのが、ADSLのリンクを局舎側で終端するレッドバックネットワークスの「SMS 1800」である。ADSLの普及とともにうなぎ登りに導入を増やし、キャリアに重宝がられた装置である。
ATMを終端するSMSの役割
今から約10年前の1999年の12月、東京めたりっく通信がADSLの商用サービスを開始した。電話回線を利用し、メガビットクラスの高速なインターネット接続を実現するADSLは、ダイヤルアップ接続の既存のインターネットとはまったく異なる次元のスピードを実現した。
こうしたADSLの黎明期を影で支えたのが、レッドバックネットワークス(以下、レッドバック)の「SMS1800」である。SMS(Subscriber Management System:加入者管理システム)といってもピンと来ないかもしれないが、ADSLサービスを提供する側には必須の装置だったのだ。
SMSの役割を見ていこう(図1)。ユーザー宅のADSL回線を局舎で終端するのがDSLAM(Digital Subscriber Line Access Multiplexer)という集合型モデムである。集約されたリンクをDSLAMがまとめられるので、トラフィックは背後にあるSMSに流される。これを受けたSMSはADSLのデータリンク層プロトコルとして使われているATM(Asynchronous Transfer Mode)を終端し、IPネットワークにトラフィックを流すという役割を果たす。
ATMは通信業者のバックボーンで利用される高信頼の通信技術で、専用線やリレー型のサービスでも採用されている。つまり、SMSとは物理層のADSLをDSLAMが束ね、ADSLの上位で使われているATMとIPとの橋渡しを行なうアクセスルータというのが正体である。
当時レッドバックの日本法人で社長を務めていた中野功一氏は「当時、各キャリアはシスコのルータを使って、ATMを終端しようとしていたのですが、高価で遅くて、ブロードバンドを収容できるような能力ではありませんでした。そこで、元ベイ・ネットワークスのエンジニアたちで構成されたレッドバックの創業者が、ATMとIPをつなぐために開発したアイデア商品がSMSだったのです」と製品の誕生についてこう語る。
次ページ、「ユーザーを識別するPPPoEの誕生」へ続く
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