7万円で購入できる「MN128-SOHO」登場
そして、MN128登場から2年後、NTTのインターネット接続サービス「OCN」の登場。限定的な条件ながら通話料金の定額制を実現した「テレホーダイ」のISDN対応や低価格化したTAの登場により、ISDNによるインターネット接続はますます身近なものになっていくのだった。
こうした中、NTT-TE 東京とBUGが進めていたのが、ISDN TAにルータを内蔵した新製品の開発だ。当時、開発を担当していた有田浩之氏は「その頃は、複数のPCを持つユーザーも増えてきましたが、インターネットにつなぐときは、いちいち回線をつなぎ換えるというユーザーが多かったようです。こうした中、BUGさんが開発した「ROUTE 101」という製品では、NATを搭載したことで、複数のユーザーが同時にインターネットに接続することができたのです」と当時の様子を語った。
このROUTER101とMN128を合体させ、ISDNの回線用のTAとDSU、LAN 内の複数のPCで利用するルータとハブを1台の筐体で実現したのがMN128-SOHOである。とはいえ、単に機能的に合体させただけではなく、売れること、メジャーになることを意識して作られたのがMN128-SOHOの開発コンセプトといえる。
その1つが設定の容易さである。「とにかく徹底的にこだわりました。基本的にはアクセスポイントの電話番号、IDとパスワードなど3箇所入力すれば、インターネットにつなげるようにしました」(有田氏)というものだ。当時はPCが普及の途上にあり、それこそ「ダブルクリックの仕方がわからない」ようなユーザーが数多くいた時代である。まして、ルータの操作といえば、当時はターミナルソフトによるコマンド操作しかなかった。
こうした中、WebブラウザによるGUI操作や自動設定はきわめて先進的な取り組みといえよう。もちろん、ここらへんは開発担当のBUGとも相当なギャップがあったようだが、密なコミュニケーションでこれを解消していった。
そしてもう1つの優れたポイントとしては、TAやアナログ機能の充実が挙げられる。サポートを担当していた菊地竹人氏は「ナンバーディスプレイも当たり前のように対応しましたし、海外製の製品ではサポートしていない機能もかなりありました」と話している。
とはいえ、既存のTAを安価に提供したMN128に対して、MN128-SOHOはまったく新しいジャンルの製品である。確かに20 万円が普通のルータ市場において、MN128-SOHOの6万9800円という価格は魅力的であった。だが、市場に受け入れられるかは未知数というのが正直なところだ。
しかし、いざフタを開けてみると、その反応は劇的と呼べるモノだった。記者発表会には100人の記者が詰めかけ、5000台の在庫に対して、3万台のオーダーが来た。当時、営業担当だった下村泰三氏は「約半年間は品切れ状態が続き、お得意さんからは、来たら全部うちに回せといわれました。最初の3カ月は納期すら応えられなかったので、つらかった。営業でありながら、外回りはいやになりましたよ」とその熱狂ぶりを語ってくれた。
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