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基礎から学ぶネットワーク構築 第2回

社内ネットワーク構築の基礎を知ろう

実績がモノをいう!Ethernetとスイッチの仕組み

2009年05月07日 06時00分更新

文● 伊藤玄蕃、ネットワークマガジン編集部

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ネットワークのデファクトスタンダードEthernet

 現在、LANとほぼ同じ意味で使われているEthernetは、ネットワークを介した通信のおもに物理的な部分を定めた規格である。Ethernetに関する最初の特許は1973年に登録されており、そこから数えて35年という長い歴史を持つ規格だ。

 管理者でないユーザーがLANやEthernetという単語から連想するハードウェアは、多数のモジュラーポートを備えた「スイッチ」だろう。ネットワークの中心に相当するスイッチに対して、PCなどの端末が接続されており、ネットワークの物理的な形態としては「スター型」に相当する。だが歴史的な経緯により、Ethernetの論理的な形態は「バス型」だ。

写真1 アライドテレシスのL3スイッチAT-x900-24XT。外観上は、L2/L3スイッチに大きな差異はない

 初期のEthernetは1本の同軸ケーブルに分岐装置を取り付けて通信を行なっており、物理的にもバス型の形態を採っていた。伝送路はすべての端末で共有されており、独占して利用することはできなかった。これに対応するための仕組みである「CSMA/CD」(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detect)が、Ethernetを特徴付けるものである。

 Ethernetの端末は伝送路を監視(Carrier Sense)し、使われていなければ送信を開始する。ここで複数の端末がほぼ同時に送信を始めると「衝突(コリジョン)」が起き、データは失われてしまう。送信した端末は衝突を検知(Collision Detect)すると、ランダムな待ち時間ののちデータを再送する。このようなシンプルな仕組みで1つのバスを複数の端末で共有しているわけだが、端末の数が増えてくると、衝突の発生が増えるため、ネットワークの利用効率が低下してくる。

 この問題を解決するための装置がスイッチである。スイッチは各ポートに接続されている端末のMACアドレスを記憶し、受信したデータの宛先と照合して、宛先の端末と接続されているポートのみにデータを送信する。このため、スイッチでは衝突の頻度を減らすことができる

スイッチの性能を表わす指標

 Ethernetには多くの規格が存在している。前述のように現在主流なのは、銅線のケーブルを使用し1Gbpsの転送速度を実現する1000BASE-Tだ。他に光ケーブルを利用する規格もあるが、扱いやすさではツイストペアの銅線が優れている。

 新しくケーブルを敷設する際には、1000BASE-Tに対応しているカテゴリ6のケーブルを利用すればよい。しかしカテゴリ5のケーブルがすでに敷かれている場合、接続して通信はできるものの十分に性能が出ないこともある。

 ひと口に「1000BASE-T対応スイッチ」といっても、ローエンドからハイエンドまで非常に多くの製品がある。ポート数や後述するVLANやQoSといった機能以外の性能は、データの転送能力によって決まる。

 1つめの尺度は「スイッチング容量」や「スイッチングファブリック」と呼ばれ、単位はbps(bit per second)、すなわち1秒間に処理できるビット数を表わす。もう1つが「スイッチング能力」や「最大パケット転送能力」と呼ばれる値で、単位はpps(packet per second)、1秒間に処理できるパケットの数を表わす。どちらも数字が大きいほど高性能だが、当然数字が大きいほど高価になっていく。

 そして、どの程度の値があれば十分なのかを示す目安として、「ワイヤスピード」がある。これは通信規格の理論上の最高の転送速度で通信する際の最大のパケット数を表わしている。Ethernetのパケットの最小サイズは64バイトだが、その前後に同期を取るためのデータが合計20バイト必要になり、1パケットあたり84バイト(672ビット)となる。よってギガビットEthernetのワイヤスピードは、1,000,000,000÷672≒1,488,095(pps)となる。これは1ポートあたりの最大パケット処理速度だ。スイッチのすべてのポートにワイヤスピードでパケットが送られて来ても処理できることを「ノンブロッキング」と称する。ノンブロッキングとなるためには、ワイヤスピードにポート数を掛けた結果よりもスイッチング能力が大きければよい。たとえば、ギガビットEthernetの8ポートスイッチでは、1,488,095×8≒11.9Mpps以上であれば、ノンブロッキングであり、理論上の最大負荷を処理できることが保証される。

 ただ、実際にはワイヤスピードのパケットが全ポートに送られ続けるような事態は稀なケースであり、必ずしもノンブロッキングにこだわりすぎる必要はない。また、現在のスイッチはほぼノンブロッキングであり、それほど差はつかないと思われる。

(次ページ、「L3スイッチ」に続く)


 

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