ケータイが楽器となり
コミュニケーションを取り持つ未来
ヤマハではY2プロジェクトで公開されているそのほかの技術についても、さまざまなサービスプロバイダーと連携してサービス化していきたいとしている。
たとえば「Auto Vocoder Box」は、これまでスタジオでサウンドエンジニアが調整していたボーカルの音程や残響などを手軽に活用できるエンジンである。「実はNetVOCALOIDよりもすごい技術」(木村氏)で、オンラインでミキシングが楽しめるようになるかもしれない。
そんなヤマハのY2プロジェクトは、我々の生活と音楽の関係をどうデザインしていくのだろうか。
「音楽には作り出すプロから聞くだけの人までいます。それでも、ただ聞くだけでなく自分の好きな曲を選ぶというところから、みんながDJになっていく感覚があります。iPod shuffleは現在最も手軽なDJ機器と言えます」(大島氏)
選曲については、多くの人がケータイやiPodなどで自由さを手に入れている。ただ、音楽と“手軽でクリエイティブ”なつきあい方はその先のこととなる。Y2プロジェクトの取り組みは、音楽と生活との新しい関係性を構築しようとしている。
「楽器は音楽を演奏するのと同時に、コミュニケーションをするための道具でもあります。その点でケータイと楽器は一致しています。(ケータイが)奏でる音は楽器には追いつきませんが、新しい演奏やコミュニケーションのスタイルはどうなるのか? そのためにはどんな音が鳴るといいのか、考えていきたい」(大島氏)
「現在の中高生の多くは楽器を演奏していませんが、ケータイは使っています。またケータイ小説の文化もあります。音楽でもケータイからヒット作が生み出せるかもしれません。何かツールを提供すれば、それを使いこなす世代が必ず出てきます。その場所がストリートでも、こたつでもいいと思うんです」(木村氏)
今後も活発なコラボレーションを進めていくヤマハ。ケータイの役割が、単なる通信サービスだけではない、クリエイティブなツールになる日は、すぐそこまで来ている。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
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