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モバイル、ブランチ、そしてデータセンターまで

リバーベッドが目指す3つの高速化領域

2009年04月17日 04時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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次世代のWAN高速化装置はWANだけじゃない

 リバーベッドが次に狙うのは、WAN高速化の技術をより活用するための新しいフィールドである。具体的にはモバイル環境、仮想エッジサービス、そしてNAS適用の3つの分野だ。

リバーベッドが目指す3つの新分野

 まずモバイル環境への対応とは、クライアントPCでのアプリケーション高速化を指す。具体的にはクライアントPCに専用の高速化用ソフトウェアをインストールし、WAN高速化装置との通信で高速化を実現するというものだ。

 リモートアクセスした場合、アプリケーションを高いレスポンスで利用できる。リバーベッドでは、クライアントPC用に高速化ソフトウェアが提供されるほか、専用のSteelhead Mobile Controllerというコントローラを配置する。これはライセンスやソフトウェアのバージョン管理を行なうために必要になる。これにより、リモートアクセスするクライアントPCではきわめて高いレスポンスでアプリケーションを利用できる。

 モバイル環境での高速化は非常に有用なソリューションだ。現在、企業でもワイヤレスモバイルの導入が進んでおり、その用途の多くはリモートアクセスになる。HSDPAやWiMAXなどのワイヤレスモバイルは定額で広帯域だが、無線であるが故の遅延が大きく、アプリケーションのレスポンスはかなり悪くなってしまう。これに対して、WAN高速化の技術を導入することで実用的なレスポンスを得ることは、ユーザーのストレスを軽減し、業務の効率化に寄与するものと考えられる。

 2つ目は、WAN高速化装置による仮想エッジサービスだ。これまでに見てきた通り、WAN高速化装置の導入により、従来ほとんど各営業所や支社に分散配置されてきたファイルサーバを、データセンターや本社に統合することが可能になる。しかし、すべてのサーバをデータセンターに持って行くのは現実的ではない。プリントサーバやDNS、DHCPサーバなど拠点側に残していた方が効率的なサービスも存在する。こうしたサービスをWAN高速化装置に搭載し、拠点側のサーバをなくすのが、仮想エッジサービスの意義である。

 リバーベッドは「RiOS Services Platform(RPS)というサービスで、Steelhead上でのVMware環境を提供している。ここにプリントサーバ、DNS、DHCP、ユーザー認証などのサービスを提供する仮想サーバを載せることで、拠点側のサーバ機を排除することが可能になる。

 最後はNASへの適用を見ていこう。今までWAN高速化装置で高速化できる範囲は、当然ながら遅延の大きなWANに限られていた。この高速化の恩恵をWANのみならずLAN内のNASにまで与えるのが、「Atlas(コード名)」と呼ばれるリバーベッドの計画だ。

 せっかくWAN高速化装置の重複排除やキャッシングなどで最小化されたデータも、受信側で展開してしまえば、送信側と同じデータが復元され、LANの帯域やNASの容量を圧迫することになる。しかし、WAN高速化装置のキャッシングや重複排除の技術で最小化されたデータをそのまま既存のNAS上にストアさせれば、ストレージの利用容量を減らすことができる。これがAtlasの基本コンセプトである。

重複排除技術の恩恵をNASまで拡張する「Atlas」(リバーベッドの資料より)

 もちろん、最小化されたデータをそのままNASにおいた場合、クライアントPCからのリクエストが来ても、データを復元できない。そこで、データ本体ではなく参照情報を管理するAtlasクラスタを用意する。この参照情報はファイル本体の100分の1のサイズにファイル自体のシグネチャと位置情報を格納した「データマップ」と呼ばれるもの。AtlasクラスタをNASの手前に設置することで、リクエストのあったファイルをデータマップに従ってNASから復元し、ユーザーに転送するわけだ。

 Atlasは2009年以降に製品化される予定。新しいWAN高速化の形として注目したいところだ。

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