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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第21回

美しき超薄型ノートAdamoの○と×

2009年04月08日 16時00分更新

文● 西田 宗千佳

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速度・バッテリー持続時間は合格点
アルミボディーの効果で発熱は低い

 性能に関わる部分はどうだろうか? まず、Vista Experienceインデックスは「3.2」。CPU(超低電圧版のCore 2 Duo SU9300)やチップセットなどの性能を考えれば、妥当といえる値である。

Adamo ADMIREのVista Experienceインデックス

Adamo ADMIREのVista Experienceインデックス。最低項目は例によってグラフィックス。CPU性能はそこそこあるし、SSDのおかげでHDDも速い

 ちなみに、導入されているOSは32bit版ではなく、64bit版のVista Home Premium。今では、64bit版であるデメリットはかなり少なくなっているが、今回テストした「Adamo ADMIRE」はメモリーが2GBなので、メリットがあるわけでもない。同じ64bit OSならば、4GBメモリーモデルの「Adamo DESIRE」の方がお勧めではある。

 フルアルミのボディーのおかげか、放熱性能は非常に良好だ。H.264/フルHDの動画を再生させ、フルパワーでCPUを回した時でも、不快な発熱はほとんど見られなかった。発熱部分も本体底面の奥に集中しており、そこ以外は「若干あたたかくなる程度」に抑えられている。

各部の温度 放射温度計による測定、室温は19℃。高負荷時のデータは、H.264の動画再生時に計測
パームレスト 底面の最大発熱部 排気部 キーボード
アイドル時 約27度 約28度 約26度 約25度
フルパワー時 約29度 約31度 約27度 約26度

 バッテリー駆動時間だが、カタログスペックでは「6セルを内蔵、最大5時間駆動」と表記されている。定例の「BBench」を使って測定してみたが、最長では4時間20分、というところであった。「無線LANを使って通信をしながら」という条件ならば、かなり優秀な値といえるだろう。

バッテリー駆動時間の計測結果

バッテリー駆動時間の計測結果。「BBench」にて計測。設定1:「ハイパフォーマンス」設定、バックライト輝度最高。設定2:「省エネルギー」時設定、バックライト輝度最低

 これはバックライトを最低輝度にし、省電力機能を最大限活用した場合の結果だ。バックライト輝度を上げると、バッテリー駆動時間は2時間強まで低下した。6セルバッテリーのノートとしては、標準的な値である。ただしAdamoの場合、バッテリーは完全に「内蔵」されており、ユーザーは取り外しできない。おそらくは薄型化とデザインの両立のためだろう。普段の利用ではさほど問題とならないが、バッテリーが劣化した場合、修理に送って交換、となるのは面倒である。

マルチタッチ対応タッチパッドの設定画面

マルチタッチ対応タッチパッドの設定画面

 デルのPCらしく、ソフト面は至ってシンプル。タッチパッドは「マルチタッチ」可能なので、そのコントロールのために、設定ソフトが付属するのが目を引く程度だろうか。マルチタッチの機能を使うと、指を開く「ピンチアウト」の動作で、画像やInternet Explorerの文字サイズ拡大ができる。

 ただし、今回試用した試用機はイベント展示で酷使された機材ということもあってか、誤動作が妙に目立った。動作自身もそれほど快適ではなく、OS側のサポートもまだまだ貧弱なので、Vistaの段階では、あまり実用的な機能とはいえない。オフにして使った方がよさそうな印象を受けた。

 さて、結論である。あえて言えば、Adamoは「すごくかっこいいNetbook」なのかも知れない。性能はそこそこ。光学ドライブなしでネット重視、しかもワイヤレスで長時間の利用が可能。これらの要素は、モバイルノートである以上にNetbookの要素といえる。さすがに性能は、Netbookよりもはるかに高い。Netbookを「安い製品」と定義するならまったく外れるが、「ネット利用を前提としたライフスタイルに近いパソコン」とするならば、少々強引だがAdamoは普通のノートよりNetbookに近い、と言えるのではないだろうか。

 このデザインに惚れたなら買い。それこそが、Adamoの最大にして唯一のセールスポイントといえる。

 逆に、「高価なPC」に「高性能」や「快適さ」を求める人には、Adamoは決してお勧めできない。デザインに見るべきところは多く、所有感も高いが、もう少しユーザビリティーを考えてほしかった、というのが本音だ。

 その薄さから、MacBook AirVAIO type Zなどと比較されがちだが、それらとは似て非なる商品である。デルは長くパソコンを作ってきたメーカーだ。だとすれば、「パソコンとしての使い勝手をスポイルすることなく、かっこいいパソコン」を作ることも不可能ではないはずだ。次こそは、そうした製品を望みたい。

オススメする人
・このデザインに惚れ込んだ人
・キーボードのサイズが大きな薄型PCを求める人
Adamo ADMIRE の主なスペック
CPU Core 2 Duo SU9300(1.20GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス Intel GS45 Expressチップセット内蔵
ディスプレー 13.4型ワイド 1366×768ドット
HDD SSD 128GB
光学ドライブ 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 2.1
カードスロット なし
インターフェース USB 2.0×3(うち1はeSATA共用)、DisplayPort、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅331×奥行き242×高さ16.4mm
質量 約1.81kg
バッテリー駆動時間 約5時間(独自計測)
OS Windows Vista Home Premium SP1 64bit版
価格 20万5000円
Adamo DESIRE
CPU Core 2 Duo SU9400(1.40GHz)
メモリー 4GB
価格 27万6000円
それ以外の主な仕様はAdamo ADMIREと同等

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。


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