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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第66回

Gyorolに見る生活リモコンとしてのケータイ

2009年03月28日 15時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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【今週の1枚】ウェブに公開されているGyorol。魚がHITした瞬間、ブルブルッとケータイが震える。パブリックでバーチャルな釣り堀に、ケータイという釣り糸を垂らす感覚は、何度も楽しめてしまう新感覚を体験できる

 以前この連載でも対談をした林信行さんと、名古屋・大阪を巡るApple Storeでのトークセッションを行なった。その中で、「モバイルは生活の中でのリモコンになる」という話題についてより深く考えていた。また先週ご紹介したiPhone 3.0の話題では、「モバイル・ハブ」としての存在感を示す事になりそうだ、と考えた(関連記事)。

 今日ご紹介する「Gyorol」を制作したバスキュールは、エンターテインメントを通じて、生活リモコン、ハブとしてもケータイの存在感を示そうとしている。

Gyorol――地底湖の魚をケータイで釣り上げる

 少し前の話になるが、2009年2月に文化庁メディア芸術祭が、東京・国立新美術館で開かれた。数々のメディアアートが国内外から集まり、非常に刺激的で楽しい場になっていた。その中で、皆がケータイを構えて大きなプロジェクターに向かって遊んでいる現場があった。

 目の前には海の中のワンカットがあり、そこに名前付きの浮きがぷかぷか浮いている。そしてケータイを構えている人たちが、それぞれのタイミングでヒットして、魚を釣り上げたり、逃がしたり。1つの大きな画面と、それぞれのケータイの小さな画面とがつながっている感覚は、まさにデジタル釣り堀の風景であった。

文化庁メディア芸術祭で披露され、奨励賞を獲得した「Gyorol」(朴正義) (C)株式会社バスキュール

 Gyorolを開発したバスキュールのプロデューサー白川英晃氏とディレクター馬場鑑平氏にお話を伺った。

バスキュールのプロデューサー白川英晃氏

「Gyorolは、ウェブに広がる地底湖が画面に表出した、という世界観です。ケータイが釣り竿になる、という点はユーザーにも分かりやすく、釣り堀というモノが現実にあるので、常設展示していてもすぐに参加してもらえるインタラクティブな作品になりました」(白川氏)

 Gyorolでは、釣れた魚が手元のケータイに入り、それを待ち受け画面に設定することができる。地底湖から釣り上げたモノが手元に残る点も、釣り堀に釣り竿を垂らしているコンテクストにピッタリだ。

 こうして、Gyorolは、メディア芸術祭の会場で、非常にたくさんの人が釣り糸を垂らす人気スポットになった。

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