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SCEIの久夛良木 健氏が久々に登場

テレビの未来はネットワークの向こう側から作られる

2009年03月23日 06時00分更新

文● 岡本善隆/企画報道編集部

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これからはテレビもネットワーク側で
すべてが解決される時代だ

麻倉怜士氏

同じクラシックコンサートでも放送波(BSデジタル)とBDソフトでは、フォーマットの差から大きな感動度の差があるという。フォーマットに縛られたテレビの限界を訴えるのは、麻倉氏も同じだ

 その際のキーとなるのが、ネットワーク上のアプリケーション。テレビ放送やBlu-ray Discのように再生できるコンテンツのフォーマットを、クライアント側の性能を基に規定していたのでは、策定までにあまりに時間がかかりすぎ、技術的な革新に対応できず、またユーザーエクスペリエンスの向上にも限度がある。

 その点、ネットワーク上のアプリケーションであれば、あらゆる最新フォーマットに素早く対応し、それぞれのデバイスにあった形で映像を加工した上で、画面だけを転送することで新しいサービスを実現できる。

 そのような考えが明白に現われたのが、遠藤所長による「では、どのようなテレビが欲しいのか」という質問に対する答え。久夛良木氏は「PCのディスプレー的に最新のHDMIが付いているテレビ(で十分)。もしくはブラウザーとJavaとFlashを含めて、最新のフルセットのネットワーク接続環境を数年間利用できるプラットフォームを搭載してほしい。逆に言うと、それ以外のことは余計なのでやらないでほしい」というもの。それがあればネットワークでなんとでもなると語る。

 また麻倉氏も「今のYouTubeの画質はプアだけれど、当然いずれはリッチ化するはず。テレビが放送受信機という枠にとらわれず、世界の楽しいコンテンツを見る機械という定義になれば、あとはコンピューターとテレビとの差は画面の大小だけではないか」とAV機器とコンピューターの境目はもはや無いという見方をしている。

 なお久夛良木氏は、ネットワーク側のアプリケーションで実現されることとして、デジカメの笑顔検出機能のように映像をソフトウェアで処理して、その映像に関するメタデータを付与したり、元の映像から新しいコンテンツを自動生成するといったことも、ネットワーク上のサーバー群であれば可能になるのではないかと見ているようだ。

 今回のセミナーにおける久夛良木氏の言葉からは、テレビやゲーム機など、フォーマットや製造コストなどに常に縛られてしまう電機メーカーのビジネス(つまりクライアント側)ではなく、ネットワークの向こうで生まれつつある新しいソフトウェアや、クラウドコンピューティングの世界に同士が強い興味を持っている様子が伝わってきた。

意見が合う両氏

コアなオーディオビジュアル好きとして意見が合う両氏。自分たちが求めるコンテンツへのボルテージは上がる一方だった

 さて次ページではネット家電への提言、またみずからネット家電を作るベンチャー企業、Cerevoを起業した人気ブロガーの「和蓮和尚」こと岩佐琢磨氏に今回のセミナーの感想をうかがった。

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