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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第65回

iPhone OS 3.0で見えたモバイル・ハブ戦略

2009年03月21日 13時30分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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iPhone同士や外部デバイス間をつなぐモバイル・ハブへ

 さて、iPhone 3.0 SDKには1000もの新しいAPIが追加されるそうだ。この中には、iPhoneの活用範囲をまた大きく変え始める機能が含まれている。まず日本のコンテンツプロバイダーにとっては朗報かもしれないが、App Storeではこれまでの売り切り型から月額課金やアプリ内での課金に対応するそうだ。

 現在の日本のケータイコンテンツの多くは、月額課金でサービスを使うものがほとんどだ。しかしApp Storeはアプリの売り切り型であったため、バージョンアップの期間を設けて既存のビジネスモデルにフィットさせるアプリが多く見られた。また電子ブックリーダーのようなアプリでは、あらかじめコンテンツをセットした上で、コンテンツ入りのアプリをタイトルやエピソードに分けて販売してきた。

 今回のApp Storeのビジネスモデルの追加は、アプリによる「サービス提供」での収益を可能にした。特に日本では、現在のビジネスモデルをアプリさえ作ればiPhoneにも展開できるようになった点は大きい。

 iPhoneはこれまでBluetoothを内蔵していながら、それこそNokia端末のように電話帳の交換やデータのやりとりには対応してこなかった。iPhone OS 3.0ではBluetoothの機能が拡張され、SDKからBluetoothを使ってピア・トゥ・ピアでiPhone同士を接続する機能が活用できるようになった。

 これは、電話帳の交換といった使い方だけではない。同じゲームアプリを使っている他のiPhoneユーザーを自動的に見つけて、対戦することもできる。いわゆる、PSPやニンテンドーDSiのような機能を活用できる。iPhone同士で集まったときに何ができるか? そんなアイディアもたくさん生まれてくるのではないか。

同時にゲーム対戦ができるようになる。「メタルギアソリッド」や「バイオハザード」などの人気ゲームタイトルのiPhone用アプリが登場していることから、ゲームプラットフォームとしての存在感を増している

 そして最後に触れたいのは、SDKに、DockやBluetoothを通じて、iPhoneと外部デバイスとを連携させられるようになった点だ。iPhone 3.0の発表では、血圧計とiPhoneを接続したり、血糖値の測定器を接続して、自分で健康管理をしたり、ドクターへ情報を送ったりするハブとしてiPhoneを機能させる可能性に触れていた。

 今までAppleは、Macをデジタル・ハブとしてiPodやApple TVのような家庭内の周辺機器へ展開してきた。

 今回のiPhone 3.0によって、iPhoneがいわば「モバイル・ハブ」になるのではないか。つまりiPhoneが使う人やコミュニケーションだけでなく、他のデバイスまでも、いつでもどこでもウェブに対応させられる入り口になっていくのではないか。

 そうなってくると、iPhoneが強かったGPSなどによる位置情報の連携に加えて、よりリアルタイム性を意識したサービスやコミュニケーションへの思考が始まると考える。場所と時間を飛び越えたりつないだりするポイント、これがモバイル・ハブのすごみになっていくのではないだろうか。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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