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Microsoft Online Services始動

“MSのSaaS”は、ソフトウェア業界の行く末を占う

2009年03月17日 06時00分更新

文● 川添貴生/インサイトイメージ

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管理画面

発表会でデモンストレーションが行われた管理画面。シンプルなインターフェイスにまとめられている

 マイクロソフトが、同社のエンタープライズサーバソフトウェア製品を、オンライン上で提供する「Microsoft Online Services」を発表した。このサービスの第一弾として「Business Productivity Online Suite(BPOS)」が提供される。

 BPOSはメールサーバとグループウェアの両方の機能を持つ「Exchange Online」、ファイル共有や社内ポータルの構築が可能な「SharePoint Online」、IMの送受信や在席情報(プレゼンス)を実現する「Office Communications Online」、そしてWeb会議やアプリケーション共有のための「Office Live Meeting」の4つのサービスを組み合せたもの。

 ユーザーは自社内にサーバを構築することなく、OutlookなどのアプリケーションやWebブラウザを利用し、インターネットを通じてこれらを利用できる。

 また、BPOSの各サービスは個別に利用できるほか、Exchange OnlineとSharePoint Onlineは、通常のStandardとは別にWebブラウザからのアクセスに限定することで低価格で提供される「Deskless Worker Suite」と呼ばれるライセンスメニューも用意される。

 価格は未定だが、米国では4つの機能が含まれたBPOSが15ドル、Exchange Onlineのみが10ドル、SharePoint Onlineが7.25ドル(いずれも1ユーザー/月)などとなっており、日本でもこれに準じた価格構成になる。

コンシューマ向け「LIVE」から
ビジネス向けの「BPOS」へ

横井本部長

マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 横井伸好本部長

 当日開催された発表会で、マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 横井伸好本部長は、パッケージとしてのソフトウェア製品がなくなることはないとしつつ、ユーザーに幅広い選択肢を提供することを目的としていると説明した。

 マイクロソフトは、以前から「Software as a Serviceではなくソフトウェア+サービス」と自社の戦略を説明していた。これはデスクトップアプリケーションとオンラインでのサービスを融合させることにより、両者のメリットを融合するというもの。今回提供されるBPOSは、たとえばExchange OnlineにおけるOutlookとの連携など、同社のオフィススイートとの連携する機能が多く、まさにソフトウェア+サービスであると言える。

 こうしたSaaS型のサービスとしてExchangeやSharePointが提供されたことによって、特に中堅・中小企業におけるこれらアプリケーション導入の敷居は大幅に下がったと言えるだろう。中小企業でのミッションクリティカルなサーバの運用管理は、片手間でできるほど簡単なものではなく、自社での運用は現実的に厳しい。

 過去、ホスティングサービスがこうした事情にピッタリはまった経緯はご存じだろう。たとえば、メールがここまで広まったのも、理由の1つとして、サーバの構築や運用管理をアウトソーシングできるホスティングサービスの存在が大きかったと言える。

 また大~中堅企業にとっても、ITコストの削減が迫られている中、サーバの運用管理コストを削減できるホスティングサービスのメリットは大きい。こうしてホスティングでのソフトウェアの提供が本格化し、ASP(Application Service Provider)からSaaS(Software as a Service)、そしてクラウドへと進化するに至っている。さらにサービスも、メールサーバやWebサーバといった単純なものから、SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)といった営業管理・顧客管理ツール、さらには業務アプリケーションやERP(Enterprise Resource Management)といった大規模システムまで幅が広がりつつある。

LIVEとONLINE

マイクロソフトの各ソフトウェア製品と、「LIVE」と「ONLINE」という2つのオンラインサービスの位置づけ

 マイクロソフトも数年前から「LIVE」ブランドでコンシューマやSOHOをターゲットにホスティング型のサービスを提供している。たとえば昨年リリースされた「Office Live」では、ホームページやメールアカウントの作成、さらにはグループウェアまで無償で提供されるという非常に意欲的な内容で、ホスティングサービスへの本格的な参入を市場に印象づけた。それから1年が経ち、ようやく本格的なビジネスユーザーをターゲットとしたMicrosoft Online Servicesが提供されたということになる。

 Microsoft Online Servicesの最大の特徴は、提供されるサービスの多くがOutlookをはじめとする同社のデスクトップアプリケーションとの連携を前提にしていることだ。Webブラウザベースのアプリケーションが広く受け入れられている今、この特徴が市場に受け入れられるかどうかは今後のソフトウェア業界の行く末を占う意味でも非常に興味深い。Microsoft Online Servicesの今後の展開に要注目だ。

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