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“QuietPoint” ATH-ANC7

“QuietPoint” ATH-ANC7

2007年01月24日 23時17分更新

文● 編集部 小林 久

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“QuietPoint” ATH-ANC7

オーディオテクニカ

オープンプライス(予想実売価格:2万5000円前後)

年明けに米国出張に行ってきた。海外取材で一番憂鬱なのは、行き帰りの飛行機だ。ジェットエンジンの強烈な騒音にさらされながら、片道10時間以上も狭い座席に押し込めれるのは正直しんどい。少しでも快適な環境を確保しようと、今回はノイズキャンセリング(NC)ヘッドホンを手にして機内に乗り込んだ。

その効果は絶大で、飛行機に乗る際にはぜひ毎回携行しようと、今さらながら心に誓った瞬間である。

今回の出張には間に合わなかったのだが、気になっていたNCヘッドホンがある。オーディオテクニカ(株)が2006年10月に発表した「ATH-ANC7」である。発売時期や価格の詳細は長らくアナウンスされてこなかったが、今月23日にようやく明らかになった。2月23日に発売される、この注目の新製品のサンプルを入手できたので、紹介しよう。



しっかりとしたつくりを感じさせる本体

ATH-ANC7
“QuietPoint”のブランド名を冠した『ATH-ANC7』。

 “QuietPoint”(クワイエットポイント)のブランド名を冠したATH-ANC7は、オーディオテクニカ初のNCヘッドホンだ。実売価格は2万5000円程度になる見込みで、国産では高級機の部類に入る。一方で、ボーズ(株)の“QuietComfort”(クワイアットコンフォート)といった海外製品に比べるとリーズナブルな価格である。

 形状は密閉式のオーバーイヤータイプ。ノイズを集音するマイクを耳に近い位置に置く“フィードバック方式”のノイズキャンセラーをハウジング内に収めている。単4電池1本で、約40時間の駆動が可能だ。専用設計のANC回路(Active Noise Reduction回路)により、周囲の環境ノイズを85%以上(最大22dB)低減できると、カタログにうたわれている。

 NCスイッチはヘッドホンの左側に装備しており、装着した状態でも手探りでオン/オフできる。電源をオンにすると青色のLEDが点灯し、電池残量が少なくなった場合はこれが点滅して知らせてくれる仕組みだ。NCの電源をオフにした状態でも音は出るが、音量はかなり小さくなり、バランスもやや不自然な印象になる。これは、常時利用するものではなく、あくまでも補助的な手段として、外出先で電池が消耗してしまった場合などに使うようだ。



NCスイッチ
ノイズキャンセルのスイッチは左耳側に装備している。

 ハウジング部分は前後に約90度回転し、付属のキャリングケースに折りたたんで収納できる。イヤーカップとアーム部分に設けられたクッションは低反発タイプの素材を利用しており、耳や頭の形状にピッタリと合う。オーソドックスなデザインだが、アームの長さやイヤーカップの角度を調整するための機構もしっかりとした作りで、質感の高さを感じさせる。



NC性能の高さは、同価格帯で一歩抜けている印象

 装着感に関しては、左右からの圧力が強めに感じるが、上述した低反発素材が耳や頭の形状にうまく合うこともあり、長時間の装着でも疲れにくい。NCヘッドホンの性能は電気的な処理の性能に加え、ヘッドホンそのものの密閉性や遮音性もキーになってくるが、NC機能をオフにした状態でも周囲の雑音はかなりカットしてくれる印象だ。

ハウジング部分(外側) ハウジング部分(内側)
ハウジング部分の内側(写真右)にあるイヤーパッドは低反発素材を使用している。

 編集部は空調やパソコンのファンが常時鳴っており、日中には出入りする人間の数も多いため、比較的騒音源の多い環境である。NCスイッチをオンにすると、こうした環境音がほぼ皆無となり、聞こえくるのは自分がカタカタと叩いているキーボードの音や、隣席の編集部員が電話で話している声がかすかに聞こえるだけという静寂が訪れる。

 ノイズキャンセル性能の高さは、同じフィードバック方式を採用したボーズのQuietComfortシリーズに匹敵するもので、ATH-ANC7はそれよりも3~4割安い価格で、高い性能を提供してくれる。200~300Hz程度の騒音に最も効果を発揮する設計になっているという。ノイズキャンセリング時の“残留ノイズ”(サーというノイズ)も低く抑えられているので、音楽を流さず騒音のみをキャンセルするという使用方法も現実的だ。

電池収納部 ソフトケース
単4乾電池1本で、40時間の使用が可能。パッケージにはソフトケースも付属する。

 同様に通勤電車や地下鉄の中でも利用してみたが、こちらも快適そのものだ。装着すると電車が移動する際に聞こえるゴーっという騒音はきれいに消え、電車の床から伝わる鈍い振動をわずかに感じるのみとなった。



騒音の中でも、音楽ソースのニュアンスがしっかりと伝わる

 本機のドライバーユニットは直径40mmのダイナミック型。音質に関してまず感じたのは、エネルギッシュで歯切れのいい中低域が魅力的であること。高域には透明感があり、高い周波数帯域までよく伸びる印象だ。かといって耳障りな強調感はなく、自然な印象である。

 音質面ではもうひとつ特筆したいのが、音の輪郭にもやつきがなく、楽器ひとつひとつの音色が明確に描き分けられる点。高い解像感とメリハリを感じさせる一方で、エッジーにはならず、ボーカルやストリングスもしなやかだ。よく聴くとリバーブが若干強めにかかっていたり、高域部分にも独特な艶を感じるが、これは“音楽をより聞きやすくするためのチューニング”が行なわれているということだろう。

 オーディオテクニカではこの製品の開発に当たり“アコースティックな音作り”を目指したという。実際に聴いた印象でも、モニターヘッドホンのようにソースの違いをストレートに出すタイプの製品というよりは、音場の広さを確保し、ボーカルのある中域をしっかりと前に浮き立たせる“聴かせ上手なヘッドホン”という感想を持った。

 数日間試用してみて一番印象的だったのは、通勤電車の車内でも、本来なら騒音で埋もれてしまう弱音や残響のニュアンスがハッキリと聞き取れたことだ。これは、ノイズキャンセリング性能の高さもあるが、弱音のニュアンスもしっかりと伝える本機の音作りに起因する面も大きいのだろう。

QuietPointの主なスペック
製品名 QuietPoint ATH-ANC7
ドライバーユニット 直径40mm ダイナミック型 密閉式
インピーダンス 260Ω
再生周波数帯域 10Hz~25kHz
感度 109dB/mW (ノイズキャンセリング使用時)
ノイズキャンセリング性能 最大22dB
バッテリー寿命 約40時間
重量 約200g(電池、コード含まず)

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