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アドビの“Apollo”に先行?――マイクロソフト、リッチなWeb/Windowsアプリをデザインする開発ツール“Microsoft Expression Studio”を発表

2007年01月17日 21時59分更新

文● 編集部 小西利明

WPFベースのウェブ/WindowsアプリケーションのUIをデザインするツール『Microsoft Expression Blend』
WPFベースのウェブ/WindowsアプリケーションのUIをデザインするツール『Microsoft Expression Blend』

マイクロソフト(株)は17日、ウェブクリエイターやアプリケーションデザイナー向けのデザインツールスイート製品“Microsoft Expression Studio”と、Expression Studioを構成するアプリケーション4種類を発表した。第1弾となるウェブサイト構築ツール『Microsoft Expression Web』は、2月16日に発売予定。早期評価版等の無償ダウンロードは本日から開始している。

Expression Studioは、Windows Vistaで実装された新しいグラフィックスサブシステムである“Windows Presentation Foundation”(WPF)の技術をベースとした、ウェブアプリケーションやクライアントアプリケーションのデザインツール群である。WPFは従来のGDI(Graphics Device Interface)ベースのWindowsのグラフィックスサブシステムではなく、グラフィックチップ(GPU)が持つ3Dグラフィックス機能などを活用して、視覚的にリッチなアプリケーションを実現するための基盤となる技術である。Expression StudioではWPFの機能を利用して、3Dグラフィックスや動画などを駆使した視覚的にリッチなコンテンツやアプリケーションのUIを構築する。

Expression Studioは以下の4本のアプリケーションで構成される。

Expression Studioを構成する4種類のツール群 Expression Studioの提供スケジュール
Expression Studioを構成する4種類のツール群Expression Studioの提供スケジュール
Microsoft Expression Web
ウェブサイト構築ツール。業界標準のXHTML、CSSに準拠したウェブサイトをデザイン、管理する。ASP.NETやVisual Studioとの連携も可能。
価格:オープンプライス|参考価格(税別):通常版 3万7800円、アップグレード版1万1800円など|発売日:2月16日
Microsoft Expression Blend
WPFベースのウェブ/クライアントアプリケーションのUIをデザインするツール。デザインしたUIはXAML形式で出力し、Visual Studioで利用可能。
価格:未定(米国版は499ドル)|発売日:2007年第3四半期
Microsoft Expression Design
素材として利用するベクター画像を作成する。単体販売は行なわれず、Expression Studioに含まれる。
価格:単体販売なし
Microsoft Expression Media
素材として利用する画像やビデオデータなどを管理する。100種類以上の形式に対応。また“Experssion Media Encorder”と称するビデオエンコーダーも内蔵。
価格:未定(米国版は299ドル)|発売日:2007年第3四半期

なおExpression Webは60日期間限定の早期評価版が、Expression Blendは日本語ベータ版が、同社ウェブサイトにて17日から提供開始されている。

マイクロソフト デベロッパービジネス本部長の市橋暢哉氏
マイクロソフト デベロッパービジネス本部長の市橋暢哉氏

17日に東京都内にて開かれた記者説明会では、Expression Studio全体のコンセプトの説明に続いて、Expression WebとExpression Blendの機能紹介とデモが行なわれた。コンセプトについての説明を行なった同社業務執行役員 デベロッパービジネス本部長の市橋暢哉氏は、Expression Studioの目標を“Support the Standard(業界標準のサポート)”と“Beyond the Browser(ブラウザーの向こうへ)”であると述べた。特に後者を実現するExpression Blendについては、ウェブブラウザー上以外で動く、インターネット上のデータやウェブサービスと連携したアプリケーション開発を行なうためのツールであるとした。アプリケーションの分かりやすい例としては、Vistaに搭載された“サイドバー”上で動くミニアプリケーション“ガジェット”が挙げられた。



『Microsoft Expression Web』。ウェブデザイナー向けのウェブページ/サイトデザインツール
『Microsoft Expression Web』。ウェブデザイナー向けのウェブページ/サイトデザインツール

Expression Webは、同社が従来企業向けに提供していたウェブサイト構築ツール“FrontPage”を受け継いだツールである(※1)。説明会で強調されたのはウェブデザインツールとしての側面で、ウェブ標準技術のサポートを重視し、XHTML(XHTML 1.0/1.1など)やCSS(CSS 1.0/2.0/2.1)に準拠している点や、複雑になりがちなCSSの設計と管理を容易にする各種のビューやCSSファイルの管理機能などが説明された。

※1 SharePoint Serverと連携した企業ウェブサイト構築は『Microsoft Office SharePoint Designer 2007』に継承された。Expression Webはプロのウェブデザイナーから一般のウェブ作成者を対象としている。

マイクロソフトの言う“ウェブ標準のサポート”という言葉を聞いて、にわかに信じがたいと思う人も少なくないだろう。しかしExpression Webを早期試用したユーザー代表として登壇したゲストの(株)ロクナナ ディレクターの中村亨介氏は、「最初はあまり期待していなかった」と述べたうえで、互換性検証を目的に作成したウェブサイトをExpression Webに読み込ませたところ、正しく解釈できたと好意的に評価した。またエディター部分の編集機能は高く評価。他者の作成したウェブサイトを編集するような場合に、作業効率向上に役立つ編集機能があるとしている。

Expression Webの価格はオープンプライス。同社による参考価格は、通常版が3万7800円(税別、以下同)、アップグレード版(Microsoft Office FrontPageまたはVisual Studioユーザー向け)が1万1800円、他社のウェブデザインツール(Adobe GoLive、IBMホームページビルダー等)からの乗り換え版である“特別限定優待アップグレード版”が1万1800円、アカデミック版が9800円となっている。またボリュームライセンス(Open LicenseおよびOpen Value)での提供も行なわれる。

デザイナーが凝ったグラフィックのデザインを考えても、アプリケーション開発者は標準コントロールに置き換えてしまいがち デザイナーが直接BlendでUIを設計することで、開発者はデザインされたUIを受け取ってアプリケーションを開発できる
デザイナーが凝ったグラフィックのデザインを考えても、アプリケーション開発者は標準コントロールに置き換えてしまいがちデザイナーが直接BlendでUIを設計することで、開発者はデザインされたUIを受け取ってアプリケーションを開発できる
Experssion Blendによるアプリケーションデザイン作業の変化

一方のExpression Blendは、WPFを使ったウェブアプリケーションやデスクトップアプリケーションのUIを、デザイナーがデザインするためのツールである。一般的なWindowsアプリケーションやウェブアプリケーションのような、標準コントロールで構成された地味なUIではなく、リッチな画像の多用やアニメーション、動画、3Dグラフィックスを活用したUIを設計できるとしている。アニメーションの動作については、時間ごとに動作を指定するタイムライン方式で設定する機能も備える。デザインされたUIは、UIを記述するXMLベースの言語“XAML”(ザムル、eXtensible Application Markup Language)形式で出力でき、Visual Studioで読み込んで、プログラマーがアプリケーションを開発するのに利用できる。

ウェザーニューズが開発中のWPF対応ウェブサイト。現在の気象状況や衛星写真を、メルカトル図法の平面地図状や、写真のような立体球状面にマッピング。マウスで球や地図を動かすこともできる
ウェザーニューズが開発中のWPF対応ウェブサイト。現在の気象状況や衛星写真を、メルカトル図法の平面地図状や、写真のような立体球状面にマッピング。マウスで球や地図を動かすこともできる

WPFベースで開発されたアプリケーションの例としては、(株)ウェザーニューズのWPF対応ウェブサイトやガジェット、オープンインターフェース(株)のマルチアングルビデオストリーミングソフトの解説とデモが披露された。Vistaのリリースに合わせて開発中というウェザーニューズのWPF対応サイトでは、地球全体の気象衛星写真を地図上にマッピングして、平面状だけでなく3Dグラフィックスによる球状に表現したり、同様の機能をガジェットで提供する。

一方のマルチアングルビデオストリーミングは、同社が現在展開している映像配信サービス“DOING.TV”の次世代版として開発されているもので、“DOING Multimedia Streaming Player for WPF”と称されている。カーレースの中継を、選手ごと、あるいはカメラごとに切り替えて任意の映像を楽しめるもので、1画面に最大3ストリームの映像を同時に表示し、操作に応じて映像が切り替わる機能を実現している。

WPFのサンプルとしてたびたび登場している、WPF対応のDOING.TVのプレーヤー。映像をクリックするだけで、見たいカメラの映像が中央に移動する
WPFのサンプルとしてたびたび登場している、WPF対応のDOING.TVのプレーヤー。映像をクリックするだけで、見たいカメラの映像が中央に移動する

マイクロソフトの市橋氏は締めくくりに、WPFの主力プラットフォームであるVistaが8割のパソコンに普及すると予測されている2009年には、Expression Studioを日本のデザインツールでナンバー1の地位に育てると力強く述べた。

Vista以外へのWPFの提供は?

WPFはVistaと共に世に出ることになるが、WPF自体はVistaに依存したものではなく、他のWindows OSや別のOS、パソコン以外のデバイスへの展開といった、マルチプラットフォーム化を念頭に置いたものである。そのためWPFは、ウェブアプリケーション環境では大きく先行する、米アドビ システムズ社(以下アドビ)の“Flash”を追撃する“Flashキラー”であると呼ばれることも多い。アドビもまた同様に、マルチプラットフォーム化されたリッチアプリケーションプラットフォーム技術“Apollo”を開発中である。

説明会の質疑応答では、Vista以外のOSやパソコン以外の環境へのWPFの提供についても言及された。まずWindows XPについては、Windows XP SP2/Windows Server 2003 SP1用が公開済みの“.NET Framework 3.0”で対応する。ただし現時点ではXP/Server 2003用の.NET Framework 3.0は、同社ウェブサイトから再頒布コンポーネントを入手してインストールする方法で配布されており、Windows Update等での配布は行なわれていない。VistaやExpression Studioのリリースに合わせて、配布方法の変更を行なう可能性もあるだろう。

またXPに.NET Framework 3.0をインストールしてWPFを実行可能な環境にしたとしても、3Dグラフィックスを利用するWPF対応アプリケーションが、正しく動作するかどうかは別問題であるとされた。これはXPが動作しているパソコンのGPU性能によって、WPFの動作に必要なパフォーマンスを提供できない場合があるためという。

他のOSやデバイス上でWPF対応アプリケーションを動作させる実行環境は、“Windows Presentation Foundation/Everywhere”(WPF/E)と呼ばれている。WPF/EはWindows環境(Windows 2000やInternet Explorer以外のウェブブラウザー)だけでなく、Mac OS Xもサポートすると言うことだが、提供スケジュールの見通しについては語られなかった。また3Dグラフィックス機能などについては、WPFとの互換性は制限されると言及された。

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