【2007 CES Vol.7】これが最後のゲイツ氏講演!?――ビル・ゲイツ氏が“Connected Experiences”を語ったCES基調講演
2007年01月08日 19時58分更新
パソコン以外のデバイスとの“つながる体験”については、マイクロソフト エンターテイメント&デバイス部門担当プレジデントのロビー・バック(Robert J.Bach)氏が登壇し、同社の各種デバイスやコンテンツ、特にXbox 360向けのサービスやパソコンとの連携について披露した。
エンターテイメント&デバイス部門担当プレジデントのロビー・バック氏。Xbox部門のボスでもある |
ゲームと言えば、家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機で遊ぶものというイメージの強い日本では今ひとつピンとこない面もあるが、シンプルな“カジュアルゲーム”から本格的な対戦ゲームやネットワークRPGまで、Windowsは非常に大きなゲームプラットフォームである。同社ではゲームプラットフォームとしてのWindowsの地位を再び高めるべく、“Games for Windows”と題した取り組みを進めている。Vistaにもゲームデータの集中管理や保護者による管理などの機能が取り入れられており、バック氏はこれらの点でVistaが魅力的なゲームプラットフォームであることをアピールした。
米国では大人気のSF FPS『Halo 3』のイメージ映像。Xbox 360のキラーコンテンツとなること間違いなしのゲームと期待されている。2007年発売予定 |
日本では大苦戦の続くXbox 360であるが、米国では非常に好調で、バック氏は12月時点で1000万台を越える出荷を達成したと述べ、会場から喝采が上がった。さらにXboxプラットフォームのネットワークサービス“Xbox Live”が500万会員を突破したことを取り上げ、「未曾有の規模のソーシャルネットワークとなった」と誇らしげに語った。そのうえで、Xboxでの成功をWindowsにももたらすとして、“Live on Windows”のデモを行なった。
Live on WindowsではXbox Liveと同じインターフェースで、ユーザーアカウント(ゲーマータグ)管理やXbox Liveネットワークへの接続。さらに友人とのオンラインゲームなど、Xbox 360と同種のサービスが受けられるものである。Xbox 360用とWindows用で同じゲームが提供されれば、Xbox 360とWindowsでプラットフォームを超えたオンラインゲームプレイが楽しめる。デモでは簡単なUNOのゲームのプラットフォーム越えプレイが披露されただけだが、Xbox 360とWindowsで共通のゲーム開発基盤を提供する“XNA Framework”が普及していけば、多種多様なゲームが両プラットフォームに提供される可能性も出てくるだろう。
Xbox 360とWindowsを1つのサービスでつなぐ“Live on Windows”のデモ。左がXbox、右がWindowsの画面だが、どちらも同じUIで統一されている | カードゲーム“UNO”をXbox 360とWindowsで対戦している様子。単に異機種間対戦ができるというだけでなく、プラットフォームとして共通性を持たせることで、1つのサービスでユーザーをつなぐのが重要な点 |
またXbox 360向けのネットワークサービスとしては、すでに米国で行なわれている有料のHD映像配信や、“IPTV”と称するマイクロソフトのTV放送配信技術のXbox 360版のデモが披露された。これらは完全にゲームとは独立して存在するサービスであり、Xbox 360が単なるゲーム機からサービス/コンテンツプラットフォームへと役割を拡大している様がいよいよ明確になってきたと言える。こうした点ではPlayStation 3やWiiを、あきらかに引き離しているXbox 360なのだが、日本での惨敗具合がつくづく残念である。
米国向けのXbox Liveでは、HD画質の映画やTV番組の有料配信が行なわれている。コンテンツ配信プラットフォームとしては、Xbox 360は確実に先行している |
近未来のデジタルライフの姿は?
ゲイツ氏は講演の最後に、4~5年先の未来を考えてみたいとして、Connected Experiencesの将来の使われ方をイメージしたデモを披露した。マイクロソフトでは“Microsoft Home of the Future”と称しているビジョンだという。
バス停情報端末。ゲイツ氏が手にしたスマートフォンから位置情報やプロフィールを読み取り、関連情報を表示する |
まず登場したのが、バス停に設置された縦置きディスプレーを利用した情報端末。ゲイツ氏が手にしたスマートフォン内にある位置情報やプロフィールなどを取得。交通情報やお勧めのレストランを表示し、レストランの予約や割引クーポンの適用なども行なえる。
外出中に自宅に宅配便が訪問してくると、その情報が映像付きで送信され、バス停端末上で確認できる。受け取りの際には、デジタル署名を配達員に送信して、確実な受け取りの認証を行なえる。これらは端末の位置情報を活用するソリューションの例だ。
外出中に宅配業者が来た場合、バス停端末を使い映像で確認したうえ、デジタル署名を送って受け取りのサインとする |
会場の笑いを誘ったのは、続いてのキッチンのデモ。キッチンテーブルに投影型ディスプレーで情報を投影し、レシピやお勧めの作り方(パン生地?の上手な広げ方を図で表示)を表示してみせたり、小麦粉がどこにあるかをRFIDで把握したりといった内容だった。他にも壁一面に埋め込まれた平面ディスプレーに、その日の気分や客の嗜好に合わせた映像を表示するといったデモも披露された。
デジタルキッチンでは、テーブル上にレシピや料理のコツなどを投影して、料理を手助けできる |
壁一面がディスプレーとなったベッドルーム。心安らかになれそうな水族館の映像を表示したり…… | 遊びに来たおばあちゃん向けに、おばあちゃん家の犬の様子を映し出したりもできる |
デモを終えたゲイツ氏は、こうしたデモで披露したようなConnected Experiencesの実現には、多くのユーザーからのフィードバックを必要としており、信頼性やセキュリティー、使いやすさなどを向上させる多くの優れた研究開発が必要であると述べた。
VistaやXbox 360という“すでにある製品”の話題が多く、未来へのビジョンという意味では物足りない感もある講演だった。しかしIT業界、特にデジタルライフの世界が急速にコンテンツとサービスが主役にシフトした中で、Vista搭載パソコンやXbox 360を“最も優れたサービス/コンテンツプラットフォーム”としていく(あるいはし続ける)ことで、今後もマイクロソフトは“よりよいユーザー体験の基盤を提供する企業”として繁栄していける。その自信をただのビジョンではなく、実際に存在するもので示した講演だったと言えるかもしれない。