“Microsoft Office Live 日本語版”で提供される企業向けポータルサイトのサンプル。最新のSharePoint Servicesを基盤として構築されている | マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 本部長の横井伸好氏 |
マイクロソフト(株)は11日、小規模/個人事業者向けに業務用ポータルや自社ドメイン、電子メールなど包括的なサービスを提供する“Microsoft Office Live 日本語版”(以下Office Live)の試験運用を開始した。同社の業務用ポータル管理機能“Windows SharePoint Services”を基盤に構築されている。専任のIT管理者を置けない企業にも、自社ドメインによるホームページ開設や電子メールから、企業内での情報共有と管理を行なうウェブサービスといった高度な業務環境を提供する。試験運用期間中は無償で提供され、正式サービスへの移行は2007年中盤の予定である。
Office Liveでは、小規模事業者にも最新技術に基づく業務環境を提供する |
Office Liveは主として“従業員10名以下の小規模事業者”を対象として、SharePoint Servicesの高度な業務管理機能を提供するサービスである。名称から誤解されやすいが、WordやExcelといったクライアントアプリケーションの機能を、ウェブサービスとして提供するものではない。小規模事業者では専任のIT管理者を用意できない場合が多いが、こうした事業者にウェブサービスの形で、大企業並みの機能を提供することを目標としている。電子メールをOutlookで受信したり、連絡先情報をOutlookやExcelにエクスポートするなど、Office systemのクライアントアプリケーションとの連携も図られている。対応OSはWindows Vista/XP/2003 Server。対応ウェブブラウザーはInternet Explorer 6.0以降となっている。
同日に同社本社にて開催された報道関係者向けの説明会にて、同社インフォメーションワーカービジネス本部 本部長の横井伸好氏はOffice Liveのコンセプトについて、小規模事業者向けに“少ない投資”で“すぐに使えて”“管理も容易”なオールインワンサービスを提供すると述べた。また同本部Office製品マーケティンググループ マネージャの田中道明氏は、Office Liveのサービス領域を“社外にいかにアピールするか”と“内輪の情報共有”の2点にあると、簡潔に示した。特に自社ドメインによるホームページと電子メールのサービスは、従業員20名以下の企業/個人事業主では十分活用されていないサービスであり、これらのサービスを活用することで、小規模事業者のネット上でのプレゼンスと信用向上を支援するとしている。
Office Liveには3つのサービスラインナップが用意される。いずれのサービスも試験期間中は無償で提供される。正式サービス後は、“Office Live Basic”以外は有償となる。日本での提供価格は未定であるため、下記表には米国での価格を参考価格として提示している。なお価格設定については、各国のニーズに合わせて決定されるとのことで、単純に米国価格を日本円に換算した金額になるとは限らない。
Office Liveの各製品ラインナップと、含まれる機能の概略図 |
Basic | Essential | Premium | |
---|---|---|---|
自社独自ドメイン | 可能 | ||
ホームページ容量 | 500MB | 1GB | 2GB |
メールアカウント | 2GB×25個 | 2GB×50個 | |
専用ワークスペース | なし | 500MB | 1GB |
ワークスペースユーザー数 | なし | 10 | 20 |
サポート | メール | メールおよび電話 | |
価格(米国の場合) | 無償 | 19ドル(約2204円)/月 | 39ドル(約4524円)/月 |
Office Liveの基本となる、ホームページと電子メールに関するサービスは、田中氏の言う“社外にいかにアピールするか”に当たるサービスである。要点は以下のとおり。なお電子メールアカウントの数やホームページ容量については、前述のようにラインナップによって異なる。
- 自社ドメイン
- .com、.net、.orgの汎用ドメインで自社ドメインを取得可能。ドメイン取得や更新の費用はかからない。.jpドメインも有償オプションで可能。
- 電子メール
- 自社ドメインの電子メールアカウントを25個から利用可能。1アカウントあたりのディスク容量は2GB。
- ホームページ
- 自社のウェブサイトを、ウェブブラウザー上で簡単に作成できる。容量は500MBから。
- レポートツール
- 開設したウェブサイトへのアクセス情報に関するレポートを自動作成し、視覚化して表示。
電子メールサービス“Office Liveメール”はウェブブラウザー上での利用のほかに、“Outlook Connector”と称するプログラムをクライアントにダウンロードして、Outlook 2002以降のOutlookで利用することも可能である。Windows Mobile対応の端末でメール機能を利用することも可能だ。またホームページ作成はOffice 2007風の“リボン”ユーザーインターフェース(UI)を取り入れたUIを使い、ウェブブラウザー上で簡単に作成できる。テンプレートや素材画像も用意されているので、凝った素材やデザインを用意できなくても、見栄えの良いホームページを作れるのは便利だ。
ホームページを作るだけでなく、アクセス情報を分析する簡単なレポーティングツールも提供されている |
EssentialやPremiumで提供される“専用ワークスペースとビジネスツール”は、“内輪の情報共有”を実現するツール群となっている。ウェブブラウザーで参照する自社のポータルサイト上で、連絡先や顧客情報を共有したり、スケジュール管理を行なったり、会議室のような設備や機材の予約管理などを行なったりと、業務に必要なさまざまな機能が提供されている。Premiumで提供されるグループウェア機能は、日本独自開発した“Microsoft GroupBoard Workspace”の機能を統合しており、たとえばホワイトボードを使った在席/離席確認や、電話の伝言メモをウェブ上で再現できる。
業務での利用において重要なセキュリティー面については、各ユーザーをWindows Live IDにより管理し、接続も128bit SSLにより保護されるとしている。
繰り返しになるが、試験運用期間中はすべてのサービスが無償で提供されるが、Office Liveのサインアップ時に、ユーザーの実在確認のためにクレジットカード番号の入力が必要となる(課金は行なわれない)。試験運用期間中も、.JPドメインの取得やメールアカウント、ウェブサイト用ストレージの追加は有料となり、これらの課金はサインアップ時に使用したクレジットカード宛に請求される。
Office LiveはSharePoint Serverが提供する高度な業務管理・情報共有の機能を、小規模事業者が低価格で利用できるソリューションとなっている。中小企業のIT活用による生産性向上が進んでいないと言われる日本では、大きなインパクトを与えるサービスとなる可能性があるだろう。