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【詳報】東芝が語ったHD DVDの今とこれから──プレーヤーの出荷目標は「全世界で50~60万台」

2006年11月16日 11時24分更新

文● 編集部 広田稔

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【市場動向】

年末商戦に向けて、ソニー(株)松下電器産業(株)がそれぞれレコーダーを発表したBlu-ray Disc陣営。日本では一般的にプレーヤーよりレコーダーの関心が高いと言われるが、現状、HD DVD陣営側の次世代レコーダーは価格が40万円前後のRD-A1のみだ。

プレーヤー同様、レコーダーにも普及機がほしいところだが、藤井氏によれば「レコーダーは適正な利潤を追求していかなければいけないという中で、簡単な値下げは正直難しい。レコーダーについては来年が主戦場であると考えている」と事情を語っていた。

先の発言に次いで、「RD-A1は“メモリアルプロダクツ”ということで、高画質/高音質を楽しんでいただきたい方に提供した。一部からは39万8000円は非常識だ、消費者の夢を壊すという非難も受けたわけですが、ぜひ諸般の事情をご理解いただきたい。東芝の戦略について“急速に次世代のシフトを図る”とうたうからには、来年は期待していいようなレコーダーが出てくるのではないか」と解説している。


AVの分野におけるHD DVDの販売台数については、「日本市場ではプレーヤーについて1万弱、レコーダーについて5000台弱。北米については数万台」とコメントしている。

この数を多いと見るか、少ないと見るかは各人にもよるだろう。藤井氏としては、「日本で流通しているタイトルが少ない中で、きわめて予想外の売れ行きと言っていい。次世代DVDはコンテンツとハードウェアが一体となって行かないと、なかなか普及しない面がある。今でこそ数十のタイトルが出ているが、当初は3つや4つだった」と考えているようだ。

そんな状況において購入したユーザーに対して、「われわれとしては感謝したい気持ちでいっぱいだ。“アーリーアダプター”の方々の援助を受けて技術開発にも力が入るし、第2世代、第3世代と進むことができる」とも気持ちを打ち明けていた。

発表会の質疑応答で「以前、プレーヤーは2006年度で全世界60~70万台の出荷を目指すと言っていたが、その目標台数は変わらないか?」という質問が飛び出すと、藤井氏は「通常、年末商戦を過ぎた1~3月は売り上げが落ちる時期だが、今回は年末を過ぎてもさらなるプロモーションをかける。十分に50~60万台は達成可能と思っている」と強気に答えた。

HD DVDのパッケージコンテンツは、15日現在、米国では100、日本においては40発売されている。今年の年末までに300タイトルにまで増やす予定

今後の市場動向の予測について藤井氏は、ゲームやPCの市場を含まない、民生用AV機器の分野について「2007年度は500万台超、2008年度は1000万台を超えると見込んでいる」と発言。

PC分野については「予測の幅が大きいが、大手メーカーと話をしていく中で、2008年度には約2000万台が次世代DVDドライブを搭載するのではないかと言われている。2008年度は、民生用よりはPC用のほうが台数を上回ると予測している」と語った。

市場予測
次世代DVDの民生用AV機器における市場予測

【技術面】

次世代光ディスク闘争において注目されている要素の1つに、ディスク容量の上限がある。現時点で発売されているのは、HD DVDが片面2層/30GB、Blu-ray Discが片面2層/50GBだ。

このディスク容量に関して藤井氏は、「ディスクは30GBが限界と言われているけど、それはこれまでの話で、特にコンテンツメーカーの要求があったからやっていただけ。ディスクの多層化をどんどん進めていきたい」と前向きな姿勢を見せた。

藤井氏は多層化に加えて圧縮技術についても、「高精細はエレクトロニクス技術で実現したほうがはるかに簡単というのが東芝の考え方。HD DVDではコーデックもMPEG-4/AVC、VC-1と用意している。例えば、デジタル放送のMPEG-2をレコーダー側でMPEG-4/AVCトランスコードすることで録画時間が飛躍的に長くなる」とコメント。

その上で、「来年は新しいレコーダーを期待しているが、仮に新しいトランスコードの技術を入ると、15GBでも6時間以上に延びると見込んでいる」と第2世代HD DVDレコーダーでの構想を明らかにしている。

次世代映像ソリューション1
「映像の記録は、機能やコストに応じてストレージを使い分けるのが重要」というのが東芝の見方だ

藤井氏は、ハイビジョン映像の録画スタイルについても言及している。東芝では「ディスプレー、プロセッサー、ストレージがこれからのAV機器を支える3大要素」と予測しているようだ。

中でも重要視しているのはHDDで、「今や長時間記録というのはHDDで行なうのが常識。一部の人が発言しているような、ハイビジョン映像の記録は光ディスクが本命で、HDDは補助的に使うものというのはあり得ないと思っている。われわれのマーケット調査でも地上デジタル放送は、まずHDDに記録するというのが明らかになっている」と、次世代光ディスクはあくまでも映像記録の1つの手段であるという見方を強調している。

ネットワーク経由で映像を配信するビデオ・オン・デマンド(VOD)についても、HDDがキーとなるようだ。藤井氏は、「VODのダウンロードもあるかもしれないが、インフラ面が問題で、特に米国ではブロードバンドと言われても実際は通信速度が遅いので、HDムービーをストリーミングのみで再生することは不可能」と前置きし、「将来VODの時代になってもコンテンツを貯められるように、HDD+HD DVDの組み合わせで製品を投入していきたい」と展望を示した。

ストレージ
自社のストレージ関連のデバイスについて、「世界シェアにおいて、HDDが1位、光ディスクドライブが2位、フラッシュメモリーも2位。世界一のストレージ会社だと思っている」と語った場面もあった

なお、発表会では、マイクロソフト(株)の執行役 ホーム&エンターテイメント担当 Xbox 事業本部長の泉水敬(せんすいたかし)氏も登壇。

『Xbox 360』がHD DVDを採用した理由について、HD DVDの高い互換性、HDIが提供する高いインタラクティブ性、低コストにディスクを生産できる、数多くのコンテンツがフォーマットに用意されている──といった要素を挙げている。

今後については、「バンダイビジュアルとメモリーテックと技術協力して、日本のアニメコンテンツのハイビジョン化と普及に取り組んでいきたい」と語っていた。

泉水敬氏 Xbox
マイクロソフト(株)の執行役、泉水敬氏来週22日に発売されるXbox 360用HD DVDプレーヤーもアピールしていた


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