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【INTERVIEW】見えない部分に開発者のこだわりがある──『Nikon D80』の開発者に聞く

2006年11月07日 12時44分更新

文● 聞き手 小林 伸、撮影 岡田清孝、構成 編集部

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高感度撮影と光学式手ぶれ補正はいまやコンパクトデジタルカメラでは標準機能だ。ニコンは手ぶれ補正をレンズ内で行なう方式を採用しているが、ボディー内手ぶれ補正の搭載に関してどう考えているのか。また、レンズ内補正にするメリットがあるのかどうかについても聞いてみた。

若林
[若林] 当社としては、一眼レフのシステムにはレンズ側での補正が最適だと考えています。その理由は、レンズの特性に合わせた補正が可能になることと、レンズに内蔵することで、撮った絵だけでなく、ファインダーで見た像の揺れも抑えられる点が挙げられます。ファインダーをのぞいている際に、ブレない像を確認できることに加え、ブレが抑えられた像を確認しながら撮影できる。一眼レフとしては、この形態が最適と考えています。撮像素子を移動させるタイプでは、焦点距離の長いレンズで遠くを見た際に、ブレたファインダー像を確認しながらになってしまいます。このため、撮影結果を見るまでは、どの程度ぶれが抑えられたのかが分かりにくい面があると思います。

それならば、手にする人の多い標準ズームに手ぶれ補正機構が内蔵される可能性はないのだろうか。ニコンのラインナップでは焦点距離18~200mmの高倍率ズームに手ぶれ補正(VR)を内蔵したレンズもあるが、使い勝手に優れている反面、価格もD50やD70sのボディーが買えてしまうほどの値段だ。新たに追加された『AF-S DX ズームニッコール ED 18-135mm F3.5-5.6G(IF)』に手ぶれ補正機構を搭載しなかった理由は小型軽量化を優先したためだそうだが、低価格なズームレンズへの手ぶれ補正搭載に関しても個人的な要望として出しておいた。

[若林] レンズ担当ではないので、お答えできる立場ではないのですが、安価なVRレンズが欲しいという要望があるとは聞いております。当然、当社としても対応が必要だと思います。


VR搭載レンズの例光学式手ぶれ補正(VR機構)を搭載した『AF-S DX VR Zoom Nikkor ED 18-200mm F3.5-5.6G (IF)』(価格11万250円)


“実はやっていた”が満載のニコン一眼レフ

機能面で競合他社と比較した場合デメリットになりそうなのが、撮像素子のほこり取りである。以前から、ニコンの一眼レフは、他社と比べると比較的ごみが写りにくいという話があったが、積極的に落とす仕組みはいまのところ搭載されていない。このあたりの影響はないのだろうか。

[若林] 今まで、積極的にはアピールしてこなかったのですが、撮像素子に付くごみに関しては、従来から相当細かい対応を行なっていますので、この場で説明させていただこうと思います。まず“ごみを出さない”という点に関しては、シャッターやミラーボックスからごみが出ないようにすることを配慮した設計を行なっています。また、シャッターユニットやミラーに関しては、部品のレベルで動作させてエージングを行なった上で、完成後にも慣らし運転を行なってから出荷するようにしています。
[──] エージングというか、ある程度減らしておいたほうがごみが出にくいということでしょうか?
[若林] もともと出にくい仕組みにはしているのですが、やはり動き始めは表面の荒さ、つまり部品にギザギザした部分があるため、ごみが出てしまう可能性がありますね。磨耗の粉が出やすい状態をユニットにした段階でなくす。こういった“なじませる”ための動作を行なったのち、組み立て後にもある程度の回数シャッターを切って、ごみを出し尽くします。
[──] それを清掃して出荷するというわけですか。
[若林] はい。ここまでがごみを出さないという部分ですね。それから付けないという部分に関しては、ローパスフィルターが帯電しないように、回路のグランドにアースして、静電気でごみを吸い付けないようにしています。それから、CCDのローパスフィルターが、前面に露出する形になるのですが、ローパスフィルターの周辺にごみを吸着するような特殊な材料を置き、ごみが周囲から寄ってきたり、いっぺん付いたものが落ちた際には再度付着しないように、くっつけて押さえ込んでしまうようにしています。
[──] これは以前の機種から採用されていた仕組みなのでしょうか?
[若林] ええ。1999年発売の『Nikon D1』から脈々と蓄積してきたノウハウに基づいています。ただ、積極的にアピール、宣伝をしてこなかった点はちょっと反省しています。今後はカタログなどに載せていこうと考えています。
[──] アピールされていなかったのはやって当然だと思っていたためなんでしょうか。
[若林] ある意味ノウハウだと、考えておりました。アピールしないことがゴミ対策を実施していないようにも受け取られて、ちょっと認識がずれていたと反省しています。
[──] もったいないですね。失礼ながら、ニコンさんらしいとも言えますが。
[若林] それから、ごみは前からだけではなく後ろから入る可能性もあるので、後方はごみ入らないように完全にシーリングしてあります。さらに、付いたごみを“写さない”という観点では、ローパスフィルターを、実際の撮像の位置から十分に離しています。このため、もしごみが付いたとしても非常に写りにくい。
[──] ニコンのカメラはごみが写りこみにくいような気がするねと話しながらきたのですが、そのあたりも理由になっているんですね。
[若林] はい。一口に離すと言ってもローパスフィルターそのものを厚くするということと、撮像素子とローパスフィルターの間にごみが入らないようにシールしながら前にずらすという2種類のアプローチがあります。ただし、ローパスフィルターがあまり厚くなりすぎると、今度は画質に影響が出てしまいますので、単に厚くするのではなく前に持ってくるという形で、写り込みを避けています。
[──] なるほど、これで謎が解けました。

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