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米MTI Micro CEO、100%メタノールによる燃料電池“Mobion”について説明

2006年10月02日 19時26分更新

文● 編集部 小西利明

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米MTI MicroFuel Cells社 社長兼CEOのベン・リム氏
米MTI MicroFuel Cells社 社長兼CEOのベン・リム氏

携帯機器向け燃料電池の開発を手がける米MTI MicroFuel Cells社(以下MTI Micro)は2日、来日中の同社社長兼CEOのベン・リム(Peng Lim)氏が会見を行ない、同社の燃料電池ソリューション“Mobion”の利点と戦略についての説明を行なった。

メタノール100%を燃料に使用する燃料電池ソリューション“Mobion”のイメージ写真
メタノール100%を燃料に使用する燃料電池ソリューション“Mobion”のイメージ写真

MTI Microは元々、米Mechanical Technology Incorporated社が共同設立した燃料電池の研究開発を行なう企業米Plug Power社を母体に設立された企業である。Plug Powerは自動車用や家庭向け据置型燃料電池を専門とするのに対して、MTI Microは携帯電話機やノートパソコンなど、携帯機器向けの燃料電池の開発を行なっている。特に携帯電話機向けとしては、韓国サムソン電子社と提携を結び、サムソン製携帯電話機向けの燃料電池はMTI Microの独占供給になるという。ノートパソコンや携帯音楽プレーヤー向けの燃料電池については独占契約はなく、日本企業も含む家電メーカーなどと提携に向けて話し合いを進めているとのことだ。また世界最大の電池メーカーである米デュラセル社とも提携しており、燃料電池の燃料カートリッジの流通に、デュラセルの流通網を活用する計画である。

同社の燃料電池ソリューションMobionは、メタノールを燃料とする直接メタノール改質形燃料電池(DMFC)の一種であるが、水を混合しないメタノール100%を燃料として利用する点が特徴であるという。一般的なDMFCは、燃料にメタノールと水の混合液を使用し、発電の過程で発生する水を再利用のため循環させる機構を備えている。対するMobionではメタノール100%を燃料に使用し、水を再循環させるためのポンプも必要としないため、機器コストと燃料容積当たりの発電効率に優れるという。詳細は企業秘密ということで明かされなかったが、メタノールだけで反応開始して、反応によって生じる水をその後は利用するのだという。効率については、研究レベルでは30Wの実験装置で、燃料1ccあたり1.3Whの発電に成功しているとのことだ。

燃料電池を搭載した携帯電話機やPDAのイメージ写真。左はMobionの燃料電池セル燃料電池を搭載した携帯電話機やPDAのイメージ写真。左はMobionの燃料電池セル

実用化の時期については明言されなかったが、今年第4四半期に第1段階の試作品をサムソンに納入する予定で、2007年には第2段階の試作品を納入するという。実際の製品に搭載されて登場するのは、それより先の2008年くらいになるだろうか。

ところで、携帯機器向け燃料電池と聞けば、多くの方が前述のようなパソコンや家電、携帯電話機などをイメージすると思うが、MTI Microはそうした市場だけでなく、軍用の携帯機器向け燃料電池の研究開発も行なっている。というよりも、同社が第一に手がける市場が軍事分野なのだ。リム氏によれば、軍事分野の燃料電池市場は売上規模自体は小さくても、市場の伸び幅は大きい分野であるという。

米軍が歩兵や特殊部隊員のIT化・ネットワーク化に多額の費用をかけて取り組んでいることは有名だが、歩兵をIT化するためには、当然ながら携行する電子機器用の電源が必要となる。リム氏の説明では、第二次大戦期までの兵士は1W程度の電力しか飛鳥としていなかったが、現在ではそれが30W程度となり、今後はさらに増大するという。米陸軍では“2012年までに72時間のミッションに必要な電力を満たす”ことを目標としているという。リム氏は、既存のリチウムイオン充電池でこの要件(2200Wh)を満たそうとすると、重量24ポンド(約10.8kg)、容積9リットル分のバッテリーが必要となるが、一方で同社の燃料電池ならば重量9ポンド(約4kg)、容積4リットル分で済むという。同社では米空軍の研究機関や米陸軍ともパートナーシップを組み、軍事用燃料電池の研究開発を行なっているとのことだ。

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