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【INTERVIEW】注目の仮想化ソフト『VMware for Mac OS X』の詳細が明らかに

2006年08月28日 16時48分更新

文● MacPeople編集部 吉田博英

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VMware
ヴイエムウェア(株)のシステムエンジニアリングマネージャ、平谷靖志氏。「ベータ版はかなり高い完成度で公開します」と力強く語ってくれた

米インテル社製CPUを搭載するMacの登場により、Mac向けの仮想化ソフト(エミュレーター)が注目を集めている。すでに米パラレルズ社が、『Parallels Desktop』を出荷、米国のApple Storeでも販売されるなど好調な売れ行きを見せている。

そして8月7日、本命といえる『VMware』のMac OS X版が年内にベータ版としてリリースされることが明らかになった(参考記事)。Windows市場では定評のある仮想化ソフトだけに、Mac OS X版の完成度が気になるところだ。

早速、同製品を国内で販売しているヴイエムウェア(株)にベータ版の詳細や今後の製品ラインアップについて話を聞いた。




Mac版VMwareは、Direct3D対応

[編集部] 年末にリリース予定のベータ版は、具体的にはどの既存製品に相当するものですか?
[ヴイエムウェア] VMwareには、ホストOS上で動作する“ホスティッド”版と、ハードウェア上で直接動作する“ハイパーバイザー”版があります。年内にベータ版のリリースを予定しているMac製品は、ホスティッド版になります。

[編集部] 具体的には?
[ヴイエムウェア] ホスティッド版には、仮想マシンを実行可能な『Player』、仮想マシンの実行と作成が可能な『Server』、ソフトの開発やテストに適した『Workstation』、企業デスクトップのための『ACE』の4種類があります。OS X用のベータ版は、新たな製品となります。

[編集部] 現在のホスティッド製品の特徴を教えてください。
[ヴイエムウェア] 仮想PC上のOSの作業状態を保存する“スナップショット”や、ホストOSとゲストOSとのドラッグ&ドロップでのファイルのやり取りといった機能を備えています。

また、64bitホスト/ゲストOS、Windows Vista、USB機器、ネットワークプリンター、Direct3D(試験的サポート)――などにも対応しています。

[編集部] USBサポートの精度は?
[ヴイエムウェア] USB 1.1対応のデバイスであれば、互換性はかなり高いといえます。有償サポートで受け付けた案件で解決できなかった(動かなかった)デバイスはほとんどありません。

もちろん、USB 1.1は理論値でもデータ転送速度が1.2Mbpsと低速ですので、速度に対して不満を持たれるユーザーはいらっしゃいます。

[編集部] USB 2.0をサポートする計画は?
[ヴイエムウェア] いまのところ対応の表明や時期などは明言できません。というのも、USBという規格は細部までに明確に規定があるわけではないので、デバイスによって動いたり動かないということが頻繁に発生します。そのため、数多くのUSB機器の互換性を確保するのはかなり困難な作業となります。

高速なUSB 2.0をサポートするとなると、互換性と速度を考慮しなければならなくなるので、難易度はより上がるでしょうね。

[編集部] コンシューマーユーザーが気になるのは、最近のゲームなどで必須のDirect3Dです。既存の仮想化製品は対応しておらず、VMwareが初となるので期待しています。
[ヴイエムウェア] Direct3Dについては、仮想マシン内の仮想ビデオチップが演算を行います。すなわちGPUではなくCPUが処理を担当するため、速度的には厳しいですが互換性は高いと思います。

[編集部] GPUに直接命令を実行させることはできないのでしょうか。
[ヴイエムウェア] 技術的には可能かもしれませんが、VMwareで作成した仮想PCはポータビリティー(可搬性)を重視しています。そのため、特定のマシンでしか動かないような仕組みを作るわけにはいかないのです。

[編集部] Direct3Dは試験的サポートいう位置づけですが、これは機能は搭載しているが、動作は保証しないという意味なのでしょうか?
[ヴイエムウェア] 不具合の原因が突き止められたとしても、すぐにパッチやアップデーターを配布しないというサポート形態です。決して、サポートしないわけではありません。よりよい製品を提供するためにも具体的な詳細を含むレポートを弊社に提供していただければと思います。


年末公開のベータ版は高い完成度で登場

[編集部] VMwareといえば、仮想化の世界では歴史のあるメーカーだと思います。今回のMac OS X版の開発表明については、競合他社よりもかなり遅かったわけですが、その理由は?
[ヴイエムウェア] 実はかなり前から開発を進めていました。実際に製品として出荷するかどうかを社内で検討した結果、年末にベータ版リリースという運びになりました。ベータ版とはいえ、社内でのさまざまなテストをクリアした状態で公開しますので期待してください。

[編集部] 正式なリリースはいつごろになるでしょうか?
[ヴイエムウェア] はっきりとは申し上げられませんが、通常製品の場合はベータ版を配布してから、数カ月で製品版をリリースしますね。

[編集部] 今後の製品展開は、ベータ版をリリースしてMac市場動向を見極めてからでしょうか。
[ヴイエムウェア] 社内では今回の発表(ベータ版の公開)によってMac市場に参入することを表明しました。ベータ版の評判いかんに関わらず、VMwareの製品ラインアップをMac版も拡充していく予定です。
VMware画面1 VMware画面2
『VMware for Mac OS』の開発中の画面。ドラッグ&ドロップでのファイルのやり取りなど、Mac OS XとVMware内で稼働するOSとのシームレスな連携が可能になるようだ


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