Macの世界開発者会議“WWDC”にて初めて公開された、次世代Mac OS X“Leopard(レパード)”。そのLeopardで明かされた機能のうち、いちばんの目玉とも言えるのが、手軽に内蔵HDDのバックアップを実現する『Time Machine』だろう。
『Time Machine』 |
米アップルコンピュータ社のウェブサイトでは、現状のTime Machineの動作画面がムービーで確認できるが、この機能の登場で、われわれMacユーザーのパソコン生活はどう変わるのだろうか?
来日した米アップルのプロダクトマーケティングインタラクティブメディア担当シニアディレクターのフランク・カサノバ(Frank Casanova)氏にTime Machineの詳細を取材した。
なお、取材時にカサノバ氏は、今回紹介している機能はあくまでも現段階におけるプレビュー版だと繰り返し発言していた。つまり2007年の春に出荷が予定されている製品版では、仕組みや機能、インターフェースが変わる可能性もあるということだ。
Finderでファイルを取り出したところ |
過去のウィンドウの状態に戻って、欲しかったものと思われるファイルが見つかったら、その場で中身を確認できます。例えばKeynoteのファイルなどでも、Time Machineの画面上で開いて、いろいろなところをクリックして中身を調べられるのです。
あとは画面下の“Restore”ボタンを押せば、ファイルが現在のウィンドウに復帰します。
『アドレスブック』では人名を指定して、消したデータを探せる |
例えば、誤消去したSonya(ソニア)さんを探す場合、アドレスブックの検索欄に“Sonya”と入力して、Time Machineを起動。過去にさかのぼり、ある時点でSonyaさんのデータを見つけてRestoreボタンを押せば、現在のアドレスブックにデータが戻ってくるわけです。
私たちはこのTime MachineのAPIを公開しているので、どのアプリケーションもTime Machine対応にすることが可能です。この点は開発者にとても評価されています。
Time Machineが登場しますと、アーカイブよりももっと手軽にデータを保存して、必要なときにすぐデータを見つけられるようになります。例えばメインのHDDがクラッシュしたときに、Time MachineならDVDにアーカイブした場合よりも速く、最後にバックアップした環境に復帰できるわけです。
バックアップしたファイルを未来永劫、残しておきたい人もいれば、3カ月保持できればいいという人もいます。HDDのスペースをより柔軟性を持って管理できるようにすることが重要だと思います。
カサノバ氏も実践する“ホーム”フォルダー(囲み)を丸ごとコピーするバックアップ方法 |
「何も起こらないように」と願いながら、まったくバックアップしていない人もいますが(笑)。
今回の取材では、動作に必要なMacのクロック周波数、バックアップにかかる時間、バックアップをしないように設定できるのか、日の終わりではなく好きな時間にバックアップポイントを作れないのか、外付けHDDを外してしまった場合にバックアップはどうなるのか――といった詳細は明かされなかった。
Time Machineは確かに便利で、初心者にこそ必要な機能だが、その一方でパソコンの知識が乏しい初心者がLeopardがプリインストールされたMacを導入する場合、追加で外付けHDDを買うという考えは思い浮かばないかもしれない。
Time Machineが、“お蔵入りソフト”の仲間にならないためにも、Leopardの発売に向けて販売店店員を啓蒙したり、オールインワンで始めから2台のHDDを内蔵した入門機をリリースするなどの工夫が必要になってくるだろう。
撮影/林 信行