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デベロッパーもイチ押しの目玉機能! とことん知りたい『Time Machine』

2006年08月25日 19時30分更新

文● 編集部 広田稔

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Macの世界開発者会議“WWDC”にて初めて公開された、次世代Mac OS X“Leopard(レパード)”。そのLeopardで明かされた機能のうち、いちばんの目玉とも言えるのが、手軽に内蔵HDDのバックアップを実現する『Time Machine』だろう。

Time Machine
『Time Machine』

米アップルコンピュータ社のウェブサイトでは、現状のTime Machineの動作画面がムービーで確認できるが、この機能の登場で、われわれMacユーザーのパソコン生活はどう変わるのだろうか?

来日した米アップルのプロダクトマーケティングインタラクティブメディア担当シニアディレクターのフランク・カサノバ(Frank Casanova)氏にTime Machineの詳細を取材した。

なお、取材時にカサノバ氏は、今回紹介している機能はあくまでも現段階におけるプレビュー版だと繰り返し発言していた。つまり2007年の春に出荷が予定されている製品版では、仕組みや機能、インターフェースが変わる可能性もあるということだ。


[編集部] なぜMac OS XにTimeMachineが必要になったのでしょうか?
[カサノバ氏] パソコンのデータをバックアップをしている人は非常に限られています。パソコンがますます個人のものとして使われている現在、写真や音楽などをバックアップするためのメカニズムを提供するということは非常に重要だと考えています。

[編集部] Time Machineの仕組みを教えてください。
[カサノバ氏] まず、システムに2台目のHDDを追加します。Mac Proであれば内蔵HDDも可能で、ほかのMacでは外付けHDDを利用します。このHDDをバックアップ用としていったん認識させると、1日の終わりごとに内蔵HDDのうち変更されたところのデータのみ外付けHDDに保存していくようになります。これを毎日繰り返すことで、データのバックアップを実現するのです。


[編集部] バックアップしたデータは、どうやって取り出すのでしょうか?
[カサノバ氏]
Finderでファイルを取り出したところ
欲しいファイルがあったフォルダーを開いて、Time Machineアイコンをクリックすると、Time Machineの動作画面が下から現れて、過去にバックアップしたデータのウィンドウが画面中央にずらっと並びます。

過去のウィンドウの状態に戻って、欲しかったものと思われるファイルが見つかったら、その場で中身を確認できます。例えばKeynoteのファイルなどでも、Time Machineの画面上で開いて、いろいろなところをクリックして中身を調べられるのです。

あとは画面下の“Restore”ボタンを押せば、ファイルが現在のウィンドウに復帰します。



アドレスブック
『アドレスブック』では人名を指定して、消したデータを探せる
Finderだけでなく、アプリケーションでもTime Machineのバックアップは有効です。例えば、『アドレスブック』では個人名を指定して、誤って消してしまったアドレスデータを復帰できます。

例えば、誤消去したSonya(ソニア)さんを探す場合、アドレスブックの検索欄に“Sonya”と入力して、Time Machineを起動。過去にさかのぼり、ある時点でSonyaさんのデータを見つけてRestoreボタンを押せば、現在のアドレスブックにデータが戻ってくるわけです。

私たちはこのTime MachineのAPIを公開しているので、どのアプリケーションもTime Machine対応にすることが可能です。この点は開発者にとても評価されています。


[編集部] CDやDVDにデータを書き込む機能は付けないのでしょうか。
[カサノバ氏] Time Machineは“バックアップ”のための技術であって、“アーカイブ”のものではありません。DVDにデータを書き込んで、棚に並べるといったアーカイブなら現在でもできますよね?

Time Machineが登場しますと、アーカイブよりももっと手軽にデータを保存して、必要なときにすぐデータを見つけられるようになります。例えばメインのHDDがクラッシュしたときに、Time MachineならDVDにアーカイブした場合よりも速く、最後にバックアップした環境に復帰できるわけです。


[編集部] バックアップ先のHDDの容量はどれくらい必要でしょう?
[カサノバ氏] 必要な容量については、まだ具体的にまとめていません。この問題はユーザーの使用環境にも左右されるでしょうし、またユーザーのバックアップポリシーによっても変わってくるでしょう。

バックアップしたファイルを未来永劫、残しておきたい人もいれば、3カ月保持できればいいという人もいます。HDDのスペースをより柔軟性を持って管理できるようにすることが重要だと思います。


[編集部] バックアップ先のデータについては、何かセキュリティーを施していますか?
[カサノバ氏] まだ何も対策していませんが、詳しいことが話せるまでアップルがどういう解決策を出してくるのか楽しみにしていてください。


[編集部] WWDCに参加した開発者は、Time Machineについてどうコメントしていましたか?
[カサノバ氏] イマジネーションをかき立てられると、基調講演で紹介した10の機能のうち最も評判がよかったです。彼らの顧客のデータを保護してくれるため、高い関心を示していました。




カサノバ氏も実践する“ホーム”フォルダー(囲み)を丸ごとコピーするバックアップ方法
[編集部] ところでTime Machineの登場以前、アップルの人々はどうやってMacのデータをバックアップしていたのでしょうか?
[カサノバ氏] 多くの人々は、HDDの“ホーム”フォルダーをそのままHDDなどにバックアップするという方法をとっています。私のやり方もこれと同じです。ある人は.Macで配布している『Backup』を使っていたり、またある人はDVDにコピーをとっています。

「何も起こらないように」と願いながら、まったくバックアップしていない人もいますが(笑)。


今回の取材では、動作に必要なMacのクロック周波数、バックアップにかかる時間、バックアップをしないように設定できるのか、日の終わりではなく好きな時間にバックアップポイントを作れないのか、外付けHDDを外してしまった場合にバックアップはどうなるのか――といった詳細は明かされなかった。

Time Machineは確かに便利で、初心者にこそ必要な機能だが、その一方でパソコンの知識が乏しい初心者がLeopardがプリインストールされたMacを導入する場合、追加で外付けHDDを買うという考えは思い浮かばないかもしれない。

Time Machineが、“お蔵入りソフト”の仲間にならないためにも、Leopardの発売に向けて販売店店員を啓蒙したり、オールインワンで始めから2台のHDDを内蔵した入門機をリリースするなどの工夫が必要になってくるだろう。

撮影/林 信行





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