[――]
手ぶれ補正ユニットはかなり大型ですが、これを本体に内蔵するうえで、苦労された部分もあったでしょうね。
[細川]
動くこと自体が困るんですね(笑)。当初はできるはずないじゃないかと、そんな気分でした。そもそもピントというのはすごくシビアなもので、これを動かすなんてとんでもないと思ったんですが、入れなければならないと。
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SRユニットの搭載に関して、メカニカル設計の細川氏は淡々と語っていたが、実際にはかなりの苦心があったようだ |
[――]
機構設計とは具体的に何をされる仕事なのでしょうか?
[細川]
部品のレイアウトから、形状決定などメカ部分の設計を行ないます。今回は、手ぶれ補正機構を内蔵するという指定があったため、それに即したモックアップを作り、デザイナーとやり取りしながら仕事を進めていきました。
これが初期のモックアップです(筆者に手渡す)。実際に手にとってもらうと分かるのですが、かなり厚く感じると思います。これがデザインの力でここまで薄く感じるようになるわけですね(笑)。K100Dでは、横幅が多少大きくなるので、バッテリーの配置から変えました。向きを変えたことによって、指がかりが改善され、より持ちやすくなったと思います。こういった基本レイアウトから始めて、部品を本体に詰め込んでいく作業に進んでいくわけです。
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K100Dの分解写真。ボディーに対してSRユニットが占める割合はかなり大きい |
[――]
確かにグリップは握りやすくなりました。
[細川]
開発当初から「今回の製品は重くなる」と言われていたので、デザイナーからホールド感を高めたいという要望が上がってきていました。商品企画サイドからも「男性ユーザーに振っていいよ」と言われたので、少しカメラを大きくして、日本人男性の手で持ちやすくしたんです。*ist DS2やDL2は女性ユーザーにも使ってほしいと欲張った面があったのですが、コンセプトが絞り込まれるとそのぶん扱いやすさも向上させられます。
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*ist DL(左)との比較。グリップ部分に収納する電池の向きが変わっていることが分かる |
[――]
こういったものを設計するうえで、一番気をつかうのはどういった部分になりますか?
[細川]
隣の部品と干渉しないというのが基本ですが、部品として高価になり過ぎないという点も気をつかう部分ですね。ちょっとした形状の違いで、金型の値段が跳ね上がることも少なくありません。また、組み立て易さもポイントです。
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K100Dのメイン基板。撮像素子やDSPなど基本的な部分は*ist DL2やDS2と共通化されている |
[――]
撮像素子を動かす機構を内蔵する上で、工夫された点などはありますか?
[細川]
CCDが動くということは、動いた先のスペースも考えなければいけません。今回シャッターを新設計していますが、CCDが移動する範囲を考慮して、開口部分が大きくなっています。
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右がK100Dのシャッター。CCDが可動するため、シャッターは従来機(左)より大きなものを新設計した |
[――]
シャッターが大きくなるとショックが大きくなりそうですが、実機では「従来機より静かになったな」と感じる面もありました。
[細川]
シャッター羽根が大きくなったことで、それを止めるショックも確かに大きくなっているのですが、実際の一眼レフ機ではシャッターよりミラーのショックのほうが大きいんです。今回はミラーボックスも作り直していて、バウンドのショックなどはかなり軽減できたと思います。
[――]
従来機は確かにミラーショックが大きい印象がありました。K100Dでは、多少大げさな表現ですが、従来「バチャン」と鳴っていたのが、「ボコン」となったというか。かなり改善されていますね。
[細川]
レリーズの感触も変えています。従来機は初心者ユーザーに対しては「メリハリがあったほうがいい」だろうと考えていたのですが、クリック感が強すぎると、「カメラがぶれやすくなるのではないか」という指摘もありました。今回はそれを抑える方向にしてあります。特に半押しのときの感触に違いがあると思います。
[――]
十字キーの押し心地も変わっています。多少硬すぎる印象もあるのですが。
[細川]
今回は不用意に押さないという部分をデザイナーが重視したようですね。
[畳家]
*ist DSを開発した際には、ボタンをなるべく少なくし、分かりやすさを重視していこうというコンセプトでした。しかし、現在ではユーザーも一眼レフの操作に慣れてきたから、きっちりと操作できたほうがいいだろうということで、バランスを取っています。十字キーに関しては一体型で指を滑らせるように使いたいという意見もあるようですが、ターゲットとしているユーザー層からは独立しているほうが使いやすそうだという評価をいただいています。
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十字キーは従来機とは異なり、上下左右が分離されたタイプとなった |
後半へ続く