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光の速度が再びボトルネックとなりはじめたTCP――ブルーコート、独自のWAN高速化技術を説明

2006年07月20日 17時13分更新

文● 編集部 西村賢

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光の速さで大容量の高速通信が可能になった時代だが、光の速度がボトルネックとなりはじめている。グローバル企業や大企業で拠点間を結ぶWAN通信の世界で、LANを前提とした従来の通信プロトコルのオーバーヘッドが問題となっている。

企業では拠点間通信のトラフィックが増大

キャッシュプロキシーアプライアンス製品などネットワークソリューションを提供するブルーコートシステムズ(株)は20日、WAN通信を高速化する独自新技術“MACH 5(マッハ5)”がもたらすメリットについて記者向け説明会を行なった。

河田英典氏
ブルーコートシステムズ 代表取締役 河田英典(かわだひでのり)氏

企業内で使われる業務アプリケーションやメール、データベースといったサービスは、VPNの普及とともに遠隔地からWAN越しにサーバーにアクセスするという利用シーンが増えている。2008年施行が決まった日本版SOX法に備えて、企業はサーバーをデータセンターなどにサーバーを集約するケースも増えている。

こうしたアプリケーションのベースとなるTCP通信や、上位レイヤーのメール、ファイル転送といったアプリケーションレベルの通信は、サーバーとクライアント間での細かなメッセージのやりとりを前提としている。このため拠点間のWAN通信の小さな遅延の蓄積が、エンドユーザーのアプリケーションの使い勝手に大きな影響を与える。個々の遅延は数十ミリ秒でも、現実には何十秒、何分という時間になる。

WANでも、LANと変わらないアプリケーション利用環境を構築したいという企業ニーズに応えるように、昨年末から“WAN高速化”をうたう製品がいくつか登場してきている。搭載する機能や利用目的は多様が、今年1月に日本法人を設立したリバーベッドテクノロジー社や、VPN関連製品を販売するジュニパーネットワークス(株)などが、その1例だ。

ブルーコートシステムズのMACH 5は、もともとキャッシュプロキシーアプライアンス市場で実績をもつ同社の強みを生かしたWAN高速化技術を提供する。

キャッシュ、圧縮、ストリーム制御を軸に高速化

MACH 5は“帯域幅管理”、“プロトコルの最適化”、“オブジェクトキャッシング”、“バイトキャッシング”、“圧縮”の5つの高速化に関する機能を提供する。

帯域幅管理では、アプリケーションやユーザー、セグメント単位で利用な帯域を制限する。業務アプリケーションを一般ウェブ閲覧に優先させるなどすることで、ムダなトラフィックを抑える。

プロトコルの最適化では、TCP自体をはじめ、HTTP、HTTPS、ファイルサービスのCIFSやFTP、メール関連のMAPIなどで発生する遅延をキャッシュ技術で最適化する。ハンドシェイクなど複数回のメッセージのやりとりが必要なものでも、キャッシュプロキシーがサーバーに代わって擬似的に通信をこなし、WAN側にまとめてメッセージを流すことで、メッセージのやりとり回数を減らせる。これだけでも、「10~100倍程度に高速化される」(同社 小林岳夫氏)という。

データのキャッシングについては、ファイル単位で行なうオブジェクトキャッシングと、データのバイナリー列をスキャンして再送などで発生する一致部分をキャッシュで代替するバイトキャッシングの2種類を行なう。オブジェクトキャッシングは、HTTP、ストリーミング、CIFSなど上位プロトコルを考慮したキャッシングが可能だ。オブジェクトキャッシングは、MACH 5を搭載することになる“Blue Coat SGシリーズ”が、セキュリティーやプロキシー機能に重点を置いた上位レイヤーを対象とする製品であったことから可能になったという。また、SSLによる暗号化通信をサポートしているのが同社の強みだという。

このほか、全通信をgzipベースのアルゴリズムで圧縮するなど複合的なアプローチで通信量を削減。MACH 5はトータルで10~50倍の高速化、最大100倍の遅延減少を実現する。たとえば、CIFSを使った約5MBのPDFファイルのコピーでは、プロトコル最適化で約2倍、オブジェクトキャッシングで2回目以降は17倍以上の高速化と、130倍以上の帯域削減を実現するという。「Outlookなどでは、ネットワーク遅延がさほどない、たとえば東京と神奈川間といった距離でも劇的にレスポンスが改善する」(同社代表取締役 河田英典氏)と話す。すでに国内では数社が、MACH 5を搭載したBlue Coat SGシリーズのトライアル導入を進めている。河田氏は今後、WAN高速化の市場は内外ともに大きく伸び、同社の業績のうち約半分が、3年でWEB高速化関連製品になると見る。

図1
圧縮、キャッシュ、最適化などを複合的に行なう
図2 図3
帯域幅管理の概念図プロトコル最適化の概念図
図4 図5
バイトキャッシュの概念図高速化の効果。平均的に10~50倍の高速化が期待できるという

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