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ネットワールド、Solaris/SPARCアプリをLinux/Intelで稼働させる仮想化製品を発表

2006年07月18日 19時29分更新

文● 編集部 西村賢

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(株)ネットワールドは18日、米トランジティブ社(Transitive Corp.)と代理店契約を結び、ハードウェア/OS仮想化ソフトウェア、『QuickTransit』のSolaris/SPARC対応製品の販売を開始すると発表した。Xeonプロセッサー向けの『QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Xeon』とItaniumプロセッサー向けの『QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Itanium』の2製品があり、それぞれ出荷は今年第3四半期と年内を予定している。価格はXeon向けのものが1年間の使用ライセンスと保守サポートで20万円(税別)、2年で38万円。Itanium向け製品の価格は未定。7月末から公開β版のダウンロードを開始する。

動作概念図 デモンストレーション
VMwareで仮想化されたLinux上でもQuickTransitは稼働する計算、グラフィックスアプリケーションも高速に稼働する

バイナリーをダイナミックに変換する仮想化技術

米トランジティブは、英マンチェスター大学で開発された仮想化技術をもとに、2000年に設立された会社だ。シリコンバレーに本社を置く現在でも、開発拠点はマンチェスターに残したまま、QuickTransitシリーズを開発する。

QuickTransitシリーズは、特定のプロセッサーとOS向けに書かれたバイナリーアプリケーションを、再コンパイルやバイナリーに対する変更なしに、他のプロセッサーやOS上で実行する環境を提供する。QuickTransit環境では、読み込まれたバイナリーに含まれる命令は、リアルタイムでターゲットのプロセッサー向けに変換して最適化される。システムコールはターゲットとなるOSにマッピングされる。このため、ネイティブアプリケーションと、異なる環境向けに作られたアプリケーションの違いは、ユーザーからは見えない。

パソコン向け市場では、米アップルコンピュータ社に対して“Rosetta(ロゼッタ)”の名前で、PowerPC向けアプリケーションをIntelプロセッサーで実行する環境を提供。100万人を超えるユーザーに利用されている。また、米SGIのIRIX向けに書かれたグラフィックスアプリケーションや計算アプリケーションをItanium上のLinuxで動かすという実績も持つ。

今回発表された『QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux』は、Solaris/SPARCアプリケーションを、Linux/Intel上で稼働させるためのソリューションだ。

唯一の課題はレガシーからx86への移行手法

QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux発売の背景として、ネットワールド 常務取締役、森田昌一氏はIT機器の“コモディティー化”を指摘。生産量の限られるRISC/UNIXは、x86系プラットフォームに比べて価格性能差で不利になる一方、これまで不安視されてきたx86/Linuxの安定性や拡張性は、VMwareなど仮想化技術により、補われつつあるとした。

TCO削減の観点から、RISC/UNIXからx86への移行がさらに進むと見られるなか、問題となるのはアプリケーションの移植だ。トランジティブのボブ・ワイダーホールド(Bob Wiederhold)CEOは、ニューヨークベースの大手金融機関での実例を紹介。6000台のSolaris/SPARCサーバー、1700の内製アプリケーションと500のISVアプリケーションが稼働するシステムを、x86ベースのLinuxブレードサーバーに2年半で移行する計画が、最初の2年間以降、急激に移植ペースが落ちたために、期待されたほどのコスト削減が実現されなかったという。内製アプリケーションでは、開発チームの解散、ソースコードの消失、既存アプリケーションの保守・移植より新規プロジェクトを優先した、といったことが問題となり、ISVアプリケーションでは、ISV企業自体の消滅やサポート不足などがネックとなる。

ネットワールドによると、国内だけでSolaris/SPARCサーバーは約7万台稼働していると見られる。大手ISVやオープンソース系のアプリケーションは、すでにLinuxに対応しているため、QuickTransitが対象とするのは、自社開発の内製アプリケーションを抱えた大手エンドユーザー企業という。VMwareの代理店として培った仮想化技術の経験を生かし、移行にあたっての評価やコンサルティングを行なっていく。

Intel/Linux移行で、むしろパフォーマンスは改善

仮想化で気になるのは互換性とパフォーマンスだが、「QuickTransit上では、ネイティブの80%の計算処理能力。UIの操作やグラフィックスについては、ほとんどネイティブとの区別がつかない」(ワイダーホールド氏)としている。また、VMware上で稼働するLinux上でQuickTransitを動かし、さらにその上でSolarisアプリケーションを動かすことも可能で、高い互換性を維持している。また、計算パフォーマンスは8割に落ちるものの、ItaniumやXeonプロセッサのコストパフォーマンスが上がっていることから、むしろ移行によって、従来のアプリケーションが高速に動作することが多いという。

森田昌一氏 ボブ・ワイダーホールド氏
ネットワールド 常務取締役 マーケティング本部長 森田昌一氏米トランジティブ 会長、取締役社長兼CEO ボブ・ワイダーホールド氏

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