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フリースケールの8bitマイコンキットで、電子工作の楽しさを再認識

2006年07月03日 22時16分更新

文● 編集部 小林久

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“電子工作キット制作コンテスト”授賞式開催

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(株)が主催する“第1回電子工作キット制作コンテスト”の最終選考会が3日、東京・秋葉原のヒロセビルで開催された。

これはフリースケール製のマイコンを使った電子工作のアイデアを募集するコンテスト。優秀作品は同社が夏休みに予定している“電子工作教室”の題材に用いる、というテーマでアイデアを公募した。

集合者
集合した応募者の人々


8bitマイコン評価キットで、電子工作の楽しさを再認識

今回のコンテストは、フリースケールのマイコンを使用した電子工作であれば、何でも応募できる形になっていたが、直接のきっかけとなったのは、九十九電機(株)がフリースケールと提携し、安価な“8bitマイコン評価キット”を4月から販売した始めたことだろう。

評価キット
ツクモロボット館で販売されているフリースケールの8bitマイコン評価キット

産業用途などを目的としたこの種の製品が、一般の店舗で出回ることは珍しい。九十九電機はラジオ、アマチュア無線、マイコン製品を部品段階から取り扱うなど、電子部品の世界では老舗。同社では、この評価キットにモーターや加速度センサーを組み合わせてロボット制御用パーツとして販売しているが、にわかに盛り上がってきた自作ロボットの市場を追い風に、電子工作の楽しさをもう一度世間に訴えていきたい考えのようだ。

審査員として招かれた九十九電機代表取締役社長の鈴木淳一(すずき じゅんいち)氏は「(九十九電機は)マイコンもアマチュア無線も完成品が出回る前のパーツの段階から扱ってきた」と話した。ツクモロボット館は4年前にオープンしたが、4年ほど前には、300万円の富士通のオートメーション機器を扱っていたほど品物の種類が少ない状況だった。しかし、現在では数万~十数万で本格的な自律歩行の行なえる製品も登場するなど、市場に活気が出ている。

九十九電機の鈴木淳一社長 筑波大学院の山海嘉之教授
九十九電機の鈴木淳一社長筑波大学院の山海嘉之教授

同じく審査員として招かれた、筑波大学院システム情報工学研究科教授の山海嘉之(さんかい よしゆき)氏は、「テクノロジーのブラックボックス化が進んでいるが、(こういう時代こそ)デバイスひとつひとつの働きをきっちりと理解していくのが大切」「パッケージ化の一方で、原理の部分をよく理解して新しい分野を広げていく人々が増えるのを切に希望する」とコメント。併せて、「自分は小学校3年生の後半ぐらいからエレクトロニクスに目覚めて、中学校時代までずっと作り続けてきた。そこで得た知識などは大きかった」と話した。



優秀賞はいろいろな加速度を計測できるメーター

授賞式の風景
フリースケールの高橋社長から盾を手渡される濱原和明氏

今回、最優秀作品として選ばれたのは、濱原和明さんが作成した“どこでも加速度メータ”。進行方向(前後)、左右方向、上下方向の3つの軸の加速度をモニターし、LEDディスプレー上にリアルタイム表示する。計測値は基板上のフラッシュメモリーに記録できる。

どこでも加速度メータどこでも加速度メータを説明する濱原氏。いろいろなものを調べるのに使えるという自分の考えを評価してもらえて嬉しい

受賞理由として、フリースケール代表取締役社長の高橋恒雄(たかはし つねお)氏は「非常に応用範囲が広く、ジェットコースターに載せれば、どこの遊園地が一番すごいかを調べるといった使い方もできそうだ」と話した。審査の際には、山海氏も「宅配便に付けて、配達員が荷物を投げたかどうかのログを取ると面白い」とコメントしていたという。

田中氏が作成した腕立て君田中氏が作成した腕立て君。動きがかなり面白い

社員としてコンテストに参加したため、一般の選考からは対象外となったが、田中範明氏は、加速度センサーで姿勢情報を検出し、バランスを取りながら腕立て伏せするロボット“腕立て君”を作成。社員賞を受賞した。田中氏は「昔は使いにくかったマイコンが、いまは非常に使いやすくなっている。それなのになぜマイコンを使ってもらえないのだろう? そう考えて、社内のマイコン活動を始めた」のだという。

作りやすさも今回のキットの特徴のようだ。受賞者の中には「CodeWarriorが使いやすく、初めてでも10時間で完成させることができた」と受賞者のひとりが話していた。

審査する高橋氏応募者に作品の特徴を聞きながら、審査を行なう高橋社長

フリースケールの高橋社長は、統合型開発環境の『CodeWarrior Development Studio』が付属する点のほかに、フリースケールの販売するセンサーやモータードライバー、無線インターフェースなどと組み合わせて創造力を喚起する、多様なアプリケーションを開発できることなどを挙げていた。

また、「最近中国の人と『マイコンコンテストを中国でやろうか』、『中国と日本で戦わせようか』という話も出ている……」と、コンテストを国際的に展開していくプランも披露。ツクモロボット館で販売されたマイコンキットが「連休前にすべて売り切れてしまうぐらいの盛況ぶりだった」ことにも言及していた。

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