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施錠忘れも不在時の訪問者もケータイが解決――最新マンションセキュリティー事情

2006年06月23日 19時02分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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居住性や立地条件、環境の良さに加えて最近はセキュリティーの高さをウリにするマンションが増えているが、これからは携帯電話機を中核にしたシステムがマンションの魅力を高める付加価値の一つに挙げられそうだ。

田中伸治氏
今回デモとインタビューを行なった、日本コムシスのITビジネス事業本部 法人営業本部法人第二営業部課長の田中伸治氏

日本コムシス(株)とアイホン(株)が今月14日に発表した協業の内容は、アイホンのカメラ付きインターホンに日本コムシスのIT活用型マンションセキュリティーシステム“LAPHIT(ラフィット)”を組み合わせて、マンションの新築時に提案・販売していくというもの。具体的に携帯電話機でできることは、以下の通り。

宅配通知
帰宅通知
家族が帰宅した際に、カードキーによる集合エントランスや玄関の解錠を登録先にメールで通知
来訪者通知
“外出警戒設定”時に、集合エントランスのインターホンで撮影した来訪者の写真を登録先に画像付きメールで通知
防犯通知/防犯設定
アイホンのカメラ付きインターホンの機能により、外出時の開扉や窓の破損などをメールで通知。また、外出先から防犯設定の確認や変更(開始)が可能
施錠確認
玄関の施錠の確認、および外出先からの施錠(解錠は不可)
灯りやエアコンなどアメニティー(快適環境)システムの遠隔制御

携帯電話機から自宅の状況を確認している画面 パソコンからの制御・確認画面
携帯電話機から自宅の状況を確認している画面現在開発中の、パソコンからの制御・確認画面

これらを実現するためのセキュリティーシステム“LAPHIT(Living Amenity Protected Home Internet Technology)”は、(株)ウインバイスリーが開発しており、今回は東京・日本橋にある同社を尋ねて、実際にデモンストレーションを見せてもらった。

日本コムシスが集合住宅向けセキュリティーシステムの販売を開始したのは2004年9月が最初で、当時からウインバイスリーと協業しており、韓国COMMAX社のインターホンを組み合わせたソリューションを2000戸に導入した実績を持つ。今回、カメラ付きインターホンの大手のアイホンと協業することにより、さらなる普及を目指しており、すでにオリックス・リアルエステート(株)のマンション2棟(東品川、戸越)への導入が決まっており、合計200セット(1万戸)の販売を目指すという。

携帯電話機から室内照明のオン/オフを行なっているデモ携帯電話機から室内照明のオン/オフを行なっているデモ

デモンストレーションでは、カードキーを使った電子錠の玄関、集合エントランスのインターホンと携帯電話機の連携、および現在開発中のパソコン(ウェブブラウザー)からの管理画面などが紹介された。

集合エントランスに訪問者 訪問者があると登録先に自動通知 来訪者の顔が携帯電話機の画面で確認できる
集合エントランスに訪問者。カメラ付きインターホンの映像が室内のインターホンに表示されているところ“外出警戒設定”時には、訪問者があると自動的に登録先メールアドレスに通知されるメールに添付された画像を開くと、来訪者の顔が携帯電話機の画面で確認できる

来訪者通知では、カメラ付きインターホン越しに見られる相手の顔がそのまま添付され、携帯電話機に即時送信される。知人の不意な来訪であれば、すぐに携帯電話で連絡を取り不在を詫びたり次の約束を取り付けることができるし、明らかな不審者であれば必要な手続き(通報など)での証拠として残すことができる。

親子が暮らすマンションでは、例えば子どもに持たせたカードキーで入館/解錠したときだけ、親の携帯電話にメールを通知するといった設定ができる。カードキーは一家族が持つ場合でもすべて固有のIDを持ち、共有部(ゴミ捨て場の解錠/施錠や共用娯楽施設の予約)の利用もカードごとに機能の割当を変更できる。さらに仕事中に何度もメールが来ては困る、という場合には家を守る親のほうにだけ通知するという設定も可能だ。

携帯電話機から施錠するデモ
携帯電話機から施錠するデモ。遠隔からの解錠は危険があるので、行なえない

施錠確認/施錠やアメニティーの遠隔操作は、専用アプリケーションを使ってインターネット経由でいったんIDC(インターネットデータセンター)にアクセスし、マンション共用部のゲートウェイにVPN経由で接続。ゲートウェイから自室のセキュリティーシステムをアクセスするという仕組みになっている。施錠できても解錠できない仕組みにしたのは、万一携帯電話機を紛失したり、離席中に操作されたりしないよう配慮したため。また、開発したウインバイスリーの担当者には意外だったそうだが、独身女性には室内灯の遠隔操作が特に好評なのだという。これは、自分の部屋に入る前から遠隔操作で室内灯を点けることで、ストーカーの被害者が自室を特定されないようにできるため、だという。

また、携帯電話機との連携ではないが、電子掲示板を集合エントランスと組み合わせ、特定のカードキーを持つ相手が帰宅した場合、鍵を開ける前に必ず読ませたい通知事項や居住者全員に向けたアンケートなどを掲示板に表示し、それに的確な回答(既読確認やアンケート入力)をしないとドアが開かない、という仕組みも作れるという。実際、とある学生寮には「家賃滞納」を知らせるシステムを導入したこともあるとのこと(ちょっと厳しい気もするが、効果はありそう)。




携帯電話機の裏側にも貼り付けられる小型のカードキーと、キーホルダー/携帯ストラップ型のカードキー
携帯電話機の裏側にも貼り付けられる小型のカードキーと、キーホルダー/携帯ストラップ型のカードキー(右上の“MYKEY”)。カードキーなので簡単には複製できないという

現在は、RFID対応のカードキーを鍵の開閉に使い、一部機能を携帯電話機でも操作できるようにしているが、非接触ICカード機能を搭載した携帯電話機が増えきている現在、鍵そのものを携帯電話機に組み込むつもりがないか、聞いてみたところ、「携帯電話キャリアー各社と話し合いを持っている」(日本コムシスの田中氏)という前向きな回答があった半面、「すべてソフトにするのは怖い」(ウインバイスリーの営業開発部部長の野呂光男氏)という警戒感も示した。

ハードウェア(カードキー)であれば複製するのは極めて困難だが、ソフトだけだと知識のある人には簡単にコピーを作られてしまう危険があるためだ。現在はより小型なカードキーにして携帯電話機の裏側に貼り付けたり、携帯ストラップのようにぶら下げて鍵と意識させずに持ち歩けるようなカードキーの開発も検討中とのこと。便利さを追求しすぎると、セキュリティーの抜け穴を作る危険がつきまとうというわけだ。

IT&セキュリティーを駆使したこのマンションの第一号は今年8月、東品川に完成する予定だ。



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